皆さんは「銀座」という名前を地元で見たことはないでしょうか。実はこの地方にもたくさんの「銀座」があったんです。
ハイブランドの路面店などが軒を連ねる、洗練された唯一無二の町、「東京・銀座」。一方、そんな「銀座」にあやかってか「銀座」の名前がついた商店街は全国になんと300か所以上。

この地方でも名古屋駅の「駅西銀座通商店街」や岐阜県の「多治見銀座商店街」、さらに三重県桑名市の「銀座商店街」など、番組が調べただけでも10か所以上の「銀座」があります。ということで今回は、この地方の「銀座」の魅力を大調査しました。
愛知・一宮市の「GINZA」にコーヒーハウス「ぎんざ」

愛知県一宮市の「木曽川町銀座通り」。堂々とそびえ立つアーチにははっきりと「GINZA」の文字が書かれています。さっそく銀座の街を闊歩するご夫婦に話を聞きました。
(地元の人)
「(Q:ここは銀座なんですか?)銀座やけども、ここの店みんな閉まっちゃって何もないです」

この街で約40年営業する「コーヒーハウスぎんざ」。毎日「ぎんざ」に通っているという、こちらの“銀座レディー”たちに話を聞きました。
(常連客)
「昔は映画館が3つありました」
「どんどん女工さんが流れて、銀座街をぞろぞろ歩いとったんでしょう」
「集団就職で来た人たちがにぎやかに」

戦後、繊維産業が盛んだった木曽川町などの尾州地域には、工場で働こうと全国各地からたくさんの女性が集まりました。それにあわせて周辺には商店なども増え「木曽川町銀座」が誕生。当時、街は東京の「銀座」さながらのにぎわいだったといいます。
しかし時代が変わり、安い外国製の繊維が輸入されるようになると工場は撤退。さらに大型ショッピングセンターの進出や店主の高齢化などにより、銀座通りに約30あった商店はここ20年の間で半分程に減りました。
「GINZA」と歩んだ創業55年の秘伝ダレ

「GINZA」のアーチから5分ほど歩いたところにある「ギョーザ・ラーメン マルタケ」。
(ギョーザ・ラーメン マルタケ 末竹淳一店主67歳)
「この店はね55年目。僕は50年やっているかな」
一番人気のメニューは創業当初から継ぎ足しているチャーシューのタレとごま油で仕上げた、しっとり系のチャーハン。

味もさることながら、その売りは…
(ギョーザ・ラーメン マルタケ 末竹淳一店主)
「これで普通盛り。多いかな?うちの“売り”やもんで。創業以来ずっと」
チャーハンは並盛りで約300グラム(650円)とほぼ大盛りサイズ。さらに大盛りとなると倍の約600グラム(850円)と、創業当時から変わらない量と味で提供しています。
一番うれしい言葉は「味変わらんね、前と」

チャーハンに使うコメの量は1週間に約70キロ。しかし、そこにはコメの価格高騰の影響が。今月からチャーハンの値段を全てのサイズで50円ずつ値上げしました。
(ギョーザ・ラーメン マルタケ 末竹淳一 店主)
「値上げしたくなかったね。飲食店が値上げするのは、すごく勇気がいること」

55年前に両親が「銀座通り」で始めた「マルタケ」を“ずっと変わらずに”のモットーで守り続ける末竹さん。
(ギョーザ・ラーメン マルタケ 末竹淳一店主)
「一番うれしい言葉は『味変わらんね、前と』って。これはすごくうれしい言葉。『味、変わったな』とか、逆に『おいしくなったな』と言われるのも嫌。変えたくない」
将棋の藤井七冠に沸く瀬戸市の「銀座マダム」は…

続いてやってきた「銀座」は愛知県瀬戸市の「銀座通り商店街」。全長170メートルあるアーケードでは、現在39店舗が営業しています。ベンチで談笑中の銀座マダムに話を聞きました。
(地元の人)
「昔は銀座といえば、うわーっと(いう賑わい)だったけど。今は(人が)少ないですね」
そんな中、最近では地元 瀬戸市出身、将棋の藤井聡太七冠が対局するたびに商店街総出で応援し、知られるようにもなりました。

老舗ブティックがあった場所を引き継いで営業する「ギャラリー美美」。どことなくリアルな銀座の香りがする店長さんに「銀座通り商店街」について聞いてみました。
(ギャラリー美美 田中美子店長)
「50年ぐらい前かな。もう人がいっぱいで歩けないぐらい。瀬戸の景気も、こんなもんじゃなかった。
陶磁器で発展 “一番商店街”の誇り…だから「銀座」

陶磁器産業でめまぐるしい発展を遂げた瀬戸市。この商店街は、もともとは「朝日町商店街」という名前でしたが…
(瀬戸銀座通り商店街 河本篤理事長)
「栄えたのは昭和30年代から40年代。うちが一番の商店街だということ、競って『銀座』という名前を付けた。瀬戸の銀座通り商店街という名前になった」

創業100年の老舗のお茶の店を営む、銀座通り商店街理事長の河本篤さん67歳。実は16年間務めた商店街の理事長をまもなく交代するのだといいます。紹介したい店があるということで案内されたのは…
(瀬戸銀座通り商店街 河本篤理事長)
「3年前にオープンした『little flower coffee(リトルフラワーコーヒー)』っていう、ちょっとこの辺にはないオシャレな店」。
瀬戸の街と「銀座通り」に惚れ込んで

7種類のオリジナルブレンドから選べるコーヒーや、店内で焼き上げる無添加のバウムクーヘンが人気で、市外からもお客さんが訪れます。
(常連客)
「コーヒー大好きでおいしいコーヒーが飲めるのもうれしいですし、子どもと来てもフレンドリーに接してくれて、いい時間を過ごすことができます」
「すてきなお店が入ってきてくれたので、瀬戸市民みんな喜んでいます」

店長の本田順也さん(39)は、もともとは関東地方でパティシエやバリスタとして働いていましたが、独立するタイミングで友人に紹介された瀬戸の街と銀座通り商店街に惚れ込み、この店をオープン。今回河本さんから理事長をやらないかと打診を受けて二つ返事でOKしました。
(little flower coffee 本田順也店長)
「地域密着で、しっかりと自分のやりたいことを伝える場所として、ここはすごくいいなと思ったので瀬戸に決めました」
東京の“本家”にはないここだけの「銀座物語」を…

そして今月20日に商店街の総会が開かれ、理事長を16年続けた河本さんから本田さんへ、その役目が引き継がれました。
(little flower coffee 本田順也さん)
「まだ瀬戸に来て4年目とかなんですけど、もっともっと商店街のこと知って、全体が良くなるようなことを少しでもできればいいかなと思いますので、よろしくお願いします」
空き店舗をどう活用するかなど、課題が山積みの商店街。河本さんは、今後は副理事長として本田さんをサポートしていく予定です。

そんな2人にとって瀬戸の銀座とは…
(河本篤さん)
「ここにしかないような、お店であふれてると思うんですよ。瀬戸の銀座通りは、ここにしかない銀座ということで、これからも続いていってくれたらなと」
(little flower coffee 本田順也店長)
「常に賑わうような場所に。
賑わうようあやかって名付けられた「銀座」。そこには東京の本家・銀座にはない、それぞれの銀座の物語がありました。