物事の核心に迫る「大石が聞く」。今回は日本の農業の中心組織、農協=JAについてです。

コメ問題解決の妨げと指摘されることもある農協、しかしながら実態はどうなのか。現場を取材しました。

コメ高騰“日本農業の要”巨大組織JAは農家を支えるのか?縛る...の画像はこちら >>

(小泉進次郞 農水大臣:先月21日)
「今この局面で大事なことは、組織・団体に忖度(そんたく)しない判断をすることだと思います」

コメ問題で大臣が忖度したくない組織・団体。それが農家のほとんどが加盟するJA=農協です。

(農家 稲垣巨樹さん)
「必要なパートナーですし、JAなくしては農業経営は成り立っていかない」

コメ高騰“日本農業の要”巨大組織JAは農家を支えるのか?縛るのか?「忖度しない」小泉大臣も注視【大石邦彦が聞く】
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こう話すのは約30ヘクタールの農地で米をつくる愛知県安城市の大規模農家、稲垣さん。JAは全国の農家や関係者でつくる協同組合で、その中には農作物の集荷販売など生産を支える全農、メガバンクに匹敵する金融機関・農林中央金庫、大手損保と生保を合わせた規模の保険事業・JA共済があり、その全体をJA全中が束ねる日本最大の民間組織です。
コメの買い取り価格を決める他、生産目標を示して事実上の減反も後押しするなど、農家への大きな影響力を問題視する見方もありますが、それでも…

(稲垣さん)
「自分で1年かけてコメを売ろうと思うと資金繰りが大変になってしまうので、JAに出荷した方がスマートに経営ができている」

資金繰りや経営上の困り事で農家をサポート

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農家にとって助かるのは何より“資金繰り”。とれた米をJAに引き渡す時点で前払い金を受け取れたり、農業用の様々な資材を買う際に代金は後払いに。

(稲垣さん)
「農業資材で土壌改良材を買った。1月10日に納品されているんですが引き落としが10月。コメがとれた時に引き落としてくれる。10か月待ってくれている」

高額な農業機械を買う際にも、JAバンクで3年は無利子となる融資を受けられます。直接メーカーから買った方が多少安くはなりますが…

(稲垣さん)
「安いに越したことはないですけど、この機械を買うためにJAから融資を受けているし、返済計画を考えるにもJAでサポートしてくれる」

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同じ安城市内の別の農家も。



(大石)
「どれくらい(コメを)JAに出荷している?」
(農家 稲垣勝一さん)
「2割とか」
(大石)
「ならJAを辞めてもいいじゃないですか?」
(稲垣さん)
「そうはならない。経営上の困り事。情報とかは農協があった方が入ってきやすい」

中学校では食育の授業に協力

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また、学校でも。この日、地元の中学校では普段から水を蓄えて水害を防ぐという田んぼの役割を学ぶ食育の授業が。食べているのは、もちろん地元産のコメ。この授業もJAの協力で行われています。

(大石)
「学んで感じたことは?」
(生徒)
「ご飯を食べる時に、これは何のコメか考えるようになった」

農業だけでなく地域に深く根ざしているJA。

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一方、違う考えの農家も…

(大石)
「(着ている)Tシャツに『大嶽米』と書かれていますが、なぜ大嶽米?」
(岐阜・大垣市の農家 大嶽喜久さん)
「“自分色”を出すために、俺のつくったコメだぞということで」

自分の名前をコメのブランド名にしている岐阜県大垣市の「大嶽ファーム」。6年前に電力会社を定年退職後、専業農家になりました。

こだわりの農法で育てたコメをJAを通さずに販売

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(大嶽さん)
「私のコメは化学肥料を入れて大きく育てるのではなく、鶏糞と菜種油かすを肥料として使っている」

化学肥料は使わず農薬も極力減らした、こだわりの米作り。田んぼは5ヘクタールと小規模ですが、JAは一切通さずに販売しています。

(大石)
「おいしいコメをつくっていくのに農協は必要ない?」
(大嶽さん)
「私は農協は使っていません、出荷には。農協へ出すと(他の農家のコメと)全部まとめてしまう。そうすると自分のコメかどうか分からない。

愛情込めたコメは自分の手で最後まで精米までして自分で見て、それを食べてもらって。おいしかったっていう、お客さんの声を聞きながらできる」

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直販の「大嶽米」は1キロ500円程度。今なら破格の安さですが、JAによる農家からの買い取り価格は、以前は1キロ200円から300円程度と大幅に低い金額でした。

(大嶽さん)
「自分で付加価値を付けたコメだったら、それなりの値段もらったりとかやろうとすると、農協に出さない方が良い」

「コメ作りに関してはプラス、ないと困る」

コメ高騰“日本農業の要”巨大組織JAは農家を支えるのか?縛るのか?「忖度しない」小泉大臣も注視【大石邦彦が聞く】
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しかし、こう話す大嶽さんも実は農協の組合員。JAは農家の自由な生産の妨げで不要なのかと聞くと…

(大嶽さん)
「コメ作りに関してはプラス、ないと困ります。(農業機械を保管する)建物を去年建てたんですけど。即金ではなくJAから融資を受けて」
(大石)
「JAを上手く使いこなしている?」
(大嶽さん)
「JAは農家が共同で、みんなで助け合う。本来は、そういう組織ですよね。その良いところを今利用させてもらっている」

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組織の巨大さが問題視され、大臣も忖度しないと話すJA。しかし、農家の生活そのものを抑えているこの組織との連携抜きでは、米作りの改革が成り立たないことも、また現実です。

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