ことしも心配される“猛暑”。去年と同様に「コメ不足」や「価格高騰」が起きないか心配されています。
(大石邦彦アンカーマン)
「こちら岐阜市の田んぼに来ています」
岐阜市のコメ農家・杉江大輔さん。異例の早い梅雨明けで一気に暑くなった中、田植えしたばかりの苗にはすでに影響が。
(合渡営農夢クラブ 杉江大輔さん)
「葉先が枯れている状況。これは高温障害で、水を今入れているけれど、かなり暑くて葉先が枯れている。いまだかつて見たことがない。ことしは特に異常」

(杉江さん)
Q:植えたばかりでこの状態だと、今後どうなる?
「本来だとここから株が増えてくる。株の広がりが少ない分、とれ高にもかなり影響してくる。穂のつきが少なくなったり、最終的に減収になる可能性がある」
厳しい陽差しで苗にダメージが。そして田んぼに張った水も…
田んぼの水がぬるま湯…稲や苗に与えるダメージは
(杉江さん)「水触ってもらうと分かるんですが…ぬるいんですよ」
(大石)「ほんとだ。ぬるま湯です。これってもう20℃超えていますよね」
(杉江さん)「超えていますね」

田んぼの水温が上がることで、稲にダメージが。
(大石)「水面が濁っていますね」
(杉江さん)「暖かいと藻が張って、酸欠状態で稲が枯れちゃう、腐っちゃう」

一気に暑くなったことで、様々な影響が出ているコメ。
(愛知県農業総合試験場 杉浦和彦 主任研究員)
「植えたての苗の所に藻がたくさん張ると、藻が流される時に苗も倒されることがある。穂が出てから20日間の気温が高いと(コメが)白くなりやすい。平均気温で26℃を超えると、白くなり始めると言われている」

史上最も暑かった去年の夏は、歴史的なコメ不足と価格高騰につながっています。ことしもそうなるのか、コメ農家の杉江さんも心配しています。
(杉江さん)
「ことしもこの調子でいくと、減収の可能性は否めないと思う。作って売らないことには収益にならないので、この先継続できるか不安要素はある」

そして影響が心配される農作物は、こちらも。
去年は高温障害で “梨”1トンを廃棄
(大石)
「見てください。かわいい梨ですよ。ピンポン玉よりもちょっと大きいくらいのサイズですかね」

愛知県安城市で梨づくりを手掛ける猪飼幸宏さん。収穫までまだ2カ月ほどありますが、頭を抱えています。
(甘水園 猪飼幸宏さん)
「このままだと(梨を)作れなくなると思う」
猪飼さんの脳裏には、去年と同じ光景が浮かびます。

■2024年10月
(猪飼さん)「穴を掘って(梨を)廃棄していますね」
(大石)「もう山積みになっていますけども」
(猪飼さん)「下に1メートルくらいは掘っています」
(大石)「えっ、そんなに掘っているんですか」
(猪飼さん)「これ一部なので…ほかにもまだ何カ所かありますので。

史上最も暑かった去年、猪飼さんの農園「甘水園」では、高温障害で1トンもの梨が廃棄処分に。
猪飼さんに梨を切ってもらったところ…

(大石)
「ほんとだ、すこし黒ずんでいますね。(食べてみると)あ~、まずシャキシャキ感がないのと、ちょっと洋酒っぽい梨ですね。やや腐敗が進んでいる。これが高温障害か…」

ことしはどうなる? 対策1つめは“早めの収穫”
損害額約300万円という大打撃に。それが、ことしも起きるのでは…という心配が。
(猪飼さん)
Q:例年よりも早い梅雨明けになっているが、心配は?
「梨は開花の時期が4月上旬。桜の1週間くらい後なんですが、そこから実になって収穫までの時間が長い品種。特に秋くらいにとれる品種が高温障害が出やすい」

農園「甘水園」の梨は大きくて甘いと人気で、7月初めの予約日には100台以上の車が列を作り既に完売していますが…
人気の品種「あきづき」と「新高」は、ともに収穫が秋頃。暑さの影響が特に心配ですが…。

(猪飼さん)
「対策は考えているんですが、これといった対策はない」
そこで考えた苦肉の策は。
(大石)「これは?」
(猪飼幸宏さん)「“エスレル”という薬ですね。成長促進剤です。
(大石)「暑さにさらされる期間を短くするということですね」

あきづきは早く成長させて収穫する作戦。また、新高は…
気候変動で…農業も大きな見直し
(猪飼さん)
「ここに芽が接いであって、ここから違う品種が伸びていく感じ。接いだのが“愛甘水”」

(大石)「この木は新高で、(接いだ部分の)ここから愛甘水」
(猪飼さん)「これ(接いだ愛甘水の枝)が太くなっていくと、ここから切ってしまえばいい。すると全て愛甘水の木になる」

品種そのものを変えてしまうことで収穫量の安定を目指しますが。
(猪飼さん)
「接いだ愛甘水の枝の太さが、新高の枝の太さの3分の1くらいになると切り替えていくので、4年はかかる」
Q:それまではロスがでる?
「そうですね。新高を作り続けていることになる」

(猪飼さん)
「昔は梨って秋だったじゃないですか。今もう夏なので。そのうち作れなくなると思う。息子はいますけど、さすがに息子に『梨作ってくれ』とはちょっと言えない」
気候変動で日本の季節そのものが変わりつつある中、農業も大きな見直しを迫られています。
(猪飼さん)
「昔は梨って秋だったじゃないですか。今はもう夏なので、そのうち作れなくなると思う。





