7月13日から幕を開ける大相撲名古屋場所。新会場、IGアリーナのこけら落としとして注目を集め、すでに15日間のチケットは完売。
ことし5月、横綱昇進が決まった大の里関。横綱として初めての取組がここ名古屋で見られるからです。先週、IGアリーナを視察した際には…
(大の里 25歳)
「会場が変わることはほとんどないことですし、この会場で相撲を取れることを楽しみたい」

ファンもまた名古屋場所を待ちわびています。愛知県一宮市に住む山本杏実さん(26)。2年前、地元の三重県鈴鹿市で翔猿関の朝稽古を見て、相撲にのめり込みました。
(山本杏実さん)
「体と体がぶつかる音だったり、近くで感じてカッコいいと思って」
家では翔猿関のアクスタが食事を見守ってくれたり…お気に入りの“お相撲さんヘアゴム”は、会社にもつけていっていたといいます。


名古屋場所は今回が初めてだという山本さん。
(山本さん)
「取組の迫力だったり、あとはグッズ買ったりガチャガチャしたりというのも楽しみ」
ファンたちを沸かせるために力士たちは6月から名古屋入りし、稽古を重ねています。そして相撲部屋に欠かせないのが「ちゃんこ鍋」。料理を担当する力士のことを「ちゃんこ番」と呼びます。今回は相撲界の知られざる「ちゃんこ番」に密着しました。

ちゃんこ番歴は…25年
名古屋市西区の安性寺。音羽山部屋の宿舎です。真剣なまなざしで朝稽古を見つめるのは、第71代横綱・鶴竜(39)。音羽山部屋の親方として一昨年独立しました。

朝稽古が佳境を迎える中…
慣れた手つきで調理をするのは、ちゃんこ番の鋼さん(43)。愛知県刈谷市出身の力士でちゃんこ番を務めてなんと25年。

(鋼さん)
「きょうはシンプルに塩鍋と無難にあっさり食べれる料理と。特に名古屋場所は暑いので。体が何もしなくても汗をかいて体力使っちゃうんで。食べられる子の方が強くなれますね」
この実感は元々、弟弟子だった親方を食事で支えた経験談によるものでした。
(鋼さん)
「親方(横綱)の体づくりを自分が実践したようなものなので。やっぱりこれは間違ってなかったというのがあるので」

そして鋼さん特製、塩ちゃんこ鍋も完成。朝稽古を終えた弟弟子たちの疲れた体に栄養を送ります。
(弟弟子)
「めちゃくちゃ体にしみて、おいしかったです」
「体の気遣いと愛情が詰まっています」

かつて弟弟子が横綱になるサポートを続けた鋼さん。今では親方と弟子。立場は変わりましたが、変わらないものがあります。
「親方がカバーできないところは自分がサポート」
(鋼さん)
「『前田さん(本名)は、いつも通りでいいですよ』と(音羽山親方が)言ってくれたんで。普通の人たちとの絆とは、言い方悪いですけどわけが違いますからね」
親方になってもかつての兄弟子を慕い敬語を使う。常に敬う姿勢を忘れないのが音羽山部屋の根幹です。

(鋼さん)
「(ちゃんこ番は)表に出る仕事ではないですけど、ここ(ちゃんこ番)がないとお相撲さんの土台づくりにならないんで。親方がカバーできないところは自分がサポートするという形」
音羽山親方が相撲の技術を、鋼さんは食事で体作りを。元兄弟子と弟弟子はこれからも二人三脚で歩み続けます。
