記録的豪雨をもたらす線状降水帯。わずか10%と言われる予測的中率を上げるため、新たな取り組みがスタートしました。
「線状降水帯」を調査する専門家グループ
7月10日、関東各地で大気の状態が不安定になり、岐阜を含む9つの都県、55か所で「記録的短時間大雨情報」が出ました。
大雨の原因は梅雨前線に向かって、南から暖かく湿った空気が流れ込んだためです。その湿った空気の元になった場所は?
▼7月10日午後4時半ごろ
太平洋上で飛行機から撮影した空には、縦に伸び発達した積乱雲がありました。撮影したのは名古屋大学などで気象学を研究する坪木和久教授です。


(観測チーム 2021年)
「(台風の)中心!中心!」

坪木教授らのグループはこれまで、台風に向かって飛行機を飛ばし、ドロップゾンデと呼ばれる観測機器を投下。
「3、2、1、…投下」。直接、観測することで正確な予測に役立てる研究を行ってきました。

今回、調べるのは台風ではなく「線状降水帯」です。
(名古屋大学・横浜国立大学 坪木和久教授)
「線状降水帯の水蒸気。これは海洋上から入ってきますので、その海洋上での水蒸気を直接観測することが今回の目的」
去年の的中率“約10%” 予測精度向上へ
線状降水帯の予測は的中率の低さが課題です。7月10日、関東で線状降水帯予測情報が出ましたが、結局線状降水帯は発生せず。去年の的中率は約10%の低さです。
そこで予測精度を上げようと、ことしから気象庁気象研究所と名古屋大学などが共同で観測を行うことになりました。

その一回目がきのう。観測器を積んだ飛行機は、県営名古屋空港を出発。線状降水帯の発生予測が出されていた関東の沖や、東海地方の南の太平洋上を通り、東シナ海へ。

約60キロごとに31個のドロップゾンデを投下。気圧や気温、風だけでなく、水蒸気の量なども直接観測しました。


(坪木教授)
「海面に近い所の水蒸気量を精度よく測定できたというのは、一つの成果だと思う。関東地方の南から南東の風が吹いていて、その下層(海面に近い所)にある大量の水蒸気が流れ込んだ可能性」


坪木教授らは今後も観測データの少ない海の上での観測を行い、線状降水帯の予測精度向上に繋げたいと話しています。