今アメリカやヨーロッパで問題となっている合成麻薬「フェンタニル」。
モルヒネの100倍とも言われる強力な麻薬で薬物汚染が広がっているんですが、なぜか名古屋が関係していると言われているんです。

持ち運ぶだけでもジュラルミンのケースで厳重に管理される物質、合成麻薬「フェンタニル」。
(大石邦彦アンカーマン)
「これは一体どんな患者に使うんですか?」
(名古屋市立大学病院 日比陽子 薬剤部長)
「手術の後で痛みが強いのを和らげるために薄めてゆっくりと投与します」
医療では鎮痛剤として、よく使われているフェンタニルですが致死量はたったの2ミリグラムと鉛筆の先端に載る微量で死にいたる「劇薬」。
今、世界で中毒や過剰摂取による死亡が深刻な社会問題となっています。


病院では厳重な管理が法律で義務付けられているフェンタニル。
(日比薬剤部長)
「こちらが麻薬管理室です」
その扉の前には常時監視するカメラも設置。その部屋の中に入ると…
(大石)「大きな金庫がありますが、この中にフェンタニルが?」
(日比薬剤部長)「そうです。厳重に管理ということで(金庫は)持ち出せない大きさになっている。床にくぎ付けになって動かせないようになっています」
(大石)「本当に微動だにしないですね」
フェンタニルの作用はモルヒネの約100倍


暗証番号を入力し、重厚な扉を開けると…
(日比薬剤部長)
「こちらに医療用麻薬が管理されています。フェンタニルは注射薬です。0.5ミリグラムと0.1ミリグラムの2種類があります」
フェンタニルは医療用麻薬の中でも特に作用が強く、モルヒネの約100倍とも言われています。
(日比薬剤部長)
「痛みがある患者さんが痛みを取るのに、適切な量を使っている限り依存にはならない。アメリカで問題になっているのは錠剤タイプ。


そして海外での乱用問題を受け、こんな懸念も…
(名古屋市立大学病院 日比陽子 薬剤部長)
「不安に思っている患者もいると思う。薬剤師として非常に気がかりでして。患者が痛みをとっていただくために、安心して使えるように願っています」
アメリカ・ペンシルベニア州の都市フィラデルフィア。フェンタニルの中毒者が特に多く、その路上は前かがみになって左右に揺れる人や、動かなくなった人であふれています。
その様子から、ここは「ゾンビタウン」とも呼ばれています。
全米に広がるフェンタニル汚染


また、反対側の西海岸、オレゴン州では去年、フェンタニルのまん延による非常事態が宣言されました。いまやフェンタニル汚染は全米に広がっています。
(フェンタニル中毒の女性)
「毎日使うよ。10ドル(約1500円)くらい。(Q.どうやって入手?)フェンタニルを持っている人なんて、どこにでもいる。誰にでも簡単に手に入るのが最悪だよ」
女性はフェンタニルを使用しないと、禁断症状で吐いてしまうほど依存しているといいます。
(フェンタニル中毒の女性)
「これ以上やりたくない、大嫌いだ。


こうした事態を受け、日本でも厚労省が都道府県などに対しフェンタニルの原料を扱う事業者への指導を通知。
愛知県は今月、26の事業所に立ち入り調査を行いました。
(愛知県 大村秀章知事)
「26全ての事業所で、違法な麻薬等の取り扱いが疑われる取引や海外の取引はありませんでした」
しかし、中国の犯罪組織がフェンタニルの原料をアメリカに不正輸出する拠点を名古屋に作っていたという一部報道があり、フェンタニル問題と日本との関わりに注目が。
関係先としてあがる名古屋市内の中国系企業は…


アメリカの駐日大使もSNSで、こう指摘しています。
(アメリカ ジョージ・グラス駐日大使の書き込み内容)
「中国からのフェンタニルやその前駆体化学物質の密輸には中国共産党が関与しており、我々はパートナーである日本と協力することで、こうした化学物質の日本経由での積み替えや流通を防ぎ、両国の地域社会と家族を守ることができます」
合成麻薬フェンタニルと名古屋に果たして関係があるのか。フェンタニルは原材料も厳しい規制対象になっていて、名古屋税関によると輸入品は中身を確認するため密輸のリスクは低いということですが…
(大石アンカーマン)
「港に船が立ち寄る程度、中継地点として利用される際は中身のチェックまでは行わないということです」


さらに、関係先として上がっている名古屋市内の中国系企業は、法人登記によると去年7月に解散手続きを完了し現在は閉鎖されています。一体ここで何が行われていたのか。
翻訳、通訳業など16ある事業目的の中には「化学品に関する輸出入」という記載も。
(近所の人)
Q.どういう人が出入りしていた?
「付き合いはないけれど中国人かなと、この辺りの人は思っていた。4人くらいは見かけた。女性も1人いて中年くらいの人がゴミ出していた。(男性は)若い人もいたし中年くらいの人もいた」
日本でフェンタニルまん延の危険は…


日本にもフェンタニルまん延の危機が迫っているのか、専門家は…
(朝日大学 法学部・大野正博教授)
「現時点で(まん延の危険は)低いと思う。日本では海外からフェンタニルや原材料が入ってきても、税関だけでなく、海外に比べて医療従事者や薬剤師のチェックが非常に厳しいので、おそらく直ちに拡大する危険性は低いと思っている。
医療には不可欠の麻薬「フェンタニル」。日本でも乱用の汚染が広がるのか。水際で食い止める取り組みが続いています。