日本は戦後80年。しかし世界ではいくつもの戦争が続いています。
吉田沙保里さんはじめ多くのメダリストを輩出したレスリングの名門、愛知県大府市の至学館大学。
ことし7月、道場にはウクライナ代表の女子選手たちの姿が。パリ五輪で50キロ級に出場したオクサナ・リバチ選手(28)。至学館大学には、そのライバルである吉元玲美那選手(25)の姿も。


ロシアによるウクライナ侵攻が始まって3年。
戦争が長引く中、選手たちは安全な練習環境を求め、世界各国を転々としています。
「父は戦場で爆弾に当たって大きなけがをした」
(リリア・マランチュク選手)
「戦争により毎日のように爆発が起きている。トレーニングをしている時でも、サイレンがなるたびにシェルターに行かなければいけないので、安定した練習を行うことはできない」
こう話すのは、去年のU23ヨーロッパ選手権で優勝したリリア・マランチュク選手(23)。

(リリア選手)
「父はウクライナの戦場で爆弾に当たって、大きなけがをしてドイツに運ばれた。父は3日間昏睡状態で、私は試合があったが混乱していて何が起きたか理解できなかった」
レスリングはウクライナにとって、国の誇りを象徴する特別なスポーツ。戦時下でも競技を続けることは、平和を望むメッセージとしても重要視され、それを欧米各国や日本がサポートしています。
至学館大学は、日本レスリング協会の副会長でもある谷岡郁子学長の意向でウクライナ選手を受け入れ、おととしに続き2度目です。

(至学館大学 谷岡郁子学長)
「戦争の影響で心がロボットのようになっていて、心から笑ったり泣いたりできない状態が、至学館大学に来て『心から笑うこともできた』と言ってくれた」

今回の合宿中には、日本の学生たちと一緒にこんな体験も。
(大石邦彦アンカーマン)
「抹茶の試飲体験が行われています。ウクライナの皆さんは抹茶をたてることができるのか。おっ上手ですね。お口に合うようです」

ランニング中、常に鳴り響くサイレン
さらに2023年には。
(大石)
「ウクライナの選手のみなさんが至学館大学の学生を前に、戦地がどんな状況なのかを語っています」
選手たちは練習の合間に、授業で日本の学生に戦争の現実を伝えていました。
(イリーナ・コリアデンコ選手)
「私の住む町はロシアに占領される可能性がある状況だったので、2週間地下室に閉じこもり身動きが取れなかった」

2022年10月に家のまわりをランニングしていた時の動画を見せた、イリーナ選手。常にサイレンが鳴り響く状況でした。
戦争をリアルに感じた…

ことしの授業を受けていた学生は。
(大学1年生)
「毎日いつも通り練習していたのが、できなくなったみたいな。私もサッカーしているので、そういうのは絶対つらいだろうなと感じた」
(大学1年生)
「映像を見て怖くなった」
Q.今年は戦後80年。80年前の話よりリアルに感じた?
「めちゃくちゃ感じた」


戦争が身近になかった日本人に向け、ウクライナの選手が伝えたいことは…
(リリア選手)
「戦争の恐怖を皆さんに味わってほしくありません」
(ウクライナ代表チーム ユリーコーチ)
「日本人が戦争のことを忘れている。忘れかけているというのはいいことではないか。

