太平洋戦争では命を使い捨てにさせる特攻が行われました。

その中でも無謀だった海底に潜んで自爆する「伏龍(ふくりゅう)」、爆弾を積んだボートで体当たりをする「震洋(しんよう)」。



その両方を体験した102歳の男性が伝えたいこととは。

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80年たっても忘れない「息の仕方」があるという。

愛知県大府市の加藤重雄さん102歳。太平洋戦争末期、一人で2つの特攻作戦に参加した。

(加藤重雄さん)
「毎日海の中を行ったり来たり、物を持って歩いたり海の底をね。“伏龍”部隊って言ったかな」

呼吸を間違えると「死ぬ」 海底に潜み自爆… 102歳の元特攻兵が語る真実【戦後80年】
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物量の差で米軍に圧倒される中、体当たりする「特攻」に踏み切った軍部。航空機の神風、小型潜水艇の回天などが投入されたが「伏龍」は、中でもひときは無謀だった。

約80キロの潜水装備を身に着けて、水中を歩きながら敵の艦船に近づき、15キロの爆薬を取り付けた棒で下から突いて自爆する。作戦とも呼べない、自殺行為。

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目的は一切知らされない…

加藤さんが故郷の岩手から横須賀に召集されたのは、21歳の時。訓練と言われ、模型の爆弾を持って1日7時間、海の底を歩かされたが、目的は一切知らされない。

(加藤さん)
「目的は絶対に明かさない。それを言ってしまったらやる人がいなくなる。

『行きます』なんて人は一人もいない」

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訓練でも死亡事故が相次いだ伏龍。水中に吐く息の泡を出さないよう、劇薬の苛性ソーダで二酸化炭素を取り除く「清浄缶」という装備が原因だった。

(加藤さん)
「鼻から吸って口から吐く呼吸の繰り返し」
Q.呼吸を間違えると?
「死ぬ。死んでしまう、バタバタ倒れる」

そもそも酸欠になりやすい上、誤って口から息を吸って苛性ソーダを吸い込むことで、多くの死者が出た。

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喉から肺まで呼吸器系は焼けただれてしまう

苛性ソーダに海水に見立てた食塩水を加える実験を行った。すると…

(岐阜大学 工学部 化学・生命工学科 加藤邦彦助教)
「速やかに溶けています」

強いアルカリ性の水溶液ができ、同時に発熱する。

(加藤助教)
「手で持てないくらいは温度が上がっています。すぐに70℃を超えるくらいまで上がりました」

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清浄缶で口から息を吸うと、この液体を吸いこんでしまうのだ。

(加藤助教)
「喉から肺まで呼吸器系は焼けただれてしまう。胃にも穴が開いてしまう状況。発声もできないと思う」

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別の特攻で出撃命令…

3か月の訓練で20人ほどいた部隊のほとんどが死亡し、残ったのは加藤さん含め二人だけ。伏龍は結局、実戦投入されなかったが、加藤さんは別の特攻で出撃命令をうけた。

ベニヤ板で作ったモーターボートに250キロの爆弾を積んで、敵艦に体当たりする「震洋」。米軍から「自殺ボート」と呼ばれ、乗組員2500人以上が戦死した。

当時の写真に写る5人の男性は、加藤さんの同じ部隊の仲間。絶望的な状況の中、加藤さんはただ1人、出撃を志願したという。

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(加藤さん)
Q.死ぬのは怖くなかった?
「怖くない、全然怖くない。この中で一番年頭だから。あとはみんな1、2歳若い。5人のうち1人も(志願者が)いないことは許されない。特攻隊だから」

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80年経ったいま、伝えたいこと

終戦4日前の1945年8月11日。千葉県沖で出撃を待っていたが米軍の艦船が来なかったため作戦は中止。そして終戦を迎えた。

(加藤さん)
「また生き延びたと思った。本当にうれしい気持ちだった」

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あの時、進んで死のうと考えていた加藤さんが、80年経ったいま、伝えたいこととは…

(加藤さん)
「愚かな時代。物事を正しく考えて正しく歩むこと」

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