わずか3時間で建てられる、軽くて強いインスタントハウス。災害大国ニッポンの被災地を変えようとしています。

開発のキッカケは東日本大震災。あれから15年。さらなる進化の現場に潜入しました。

冬は暖かく 夏は涼しい「インスタントハウス」

数時間で建つ“簡易住宅” インスタントハウスがさらに進化 「...の画像はこちら >>

円柱と円錐を重ねたような形が特徴の「インスタントハウス」。

開発したのは、名古屋工業大学の北川啓介教授。研究室もインスタントハウスです。

(北川教授)
Q.上着いらないですね、暖房入っていますか?
「今は切っています」

数時間で建つ“簡易住宅” インスタントハウスがさらに進化 「ホームベーカリーみたいに箱の中で膨らませる」 軽い・安い・部品が少ない
CBC

被災地に持ち込むものと全く同じつくりの研究室。インスタントハウスは、ポリエステル製のテントシートを空気で膨らませ、発泡ウレタンの断熱材を吹き付けるだけで完成。

厚さ4センチほどに重ねられた断熱材の効果で、冬は暖かく、夏は涼しいのです。今や海外の被災地でも活躍するインスタントハウス。開発は15年前のできごとがきっかけでした。

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「なんで仮設住宅ができるまでに時間がかかるの?」

(北川教授)
「舞台の上まで布団が敷いてあって、横になれる場所があったら、どこも使っている状態。プライバシーもなくなっているし、ちょっと衝撃でした」

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東日本大震災の被災地を訪れ目の当たりにしたのは、とても快適とは言えない、避難所の生活環境でした。

(北川教授)
「小学校3年生と4年生の男の子が『なんで仮設住宅ができるまでに3か月~6か月かかるの?』『大学の先生だったら来週建ててよ』とパッと言ってくれた。

その時は、なんとも言えない気持ちだった。人の命も救えていない建築の在り方に、悔しさを感じた」

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専門家なのに何もできなかったもどかしさは、北川教授の人生をガラリと変えることに。

「ようやく宿題が返せた」 思わず涙が

一般的な住宅の「重い」「高い」「部品が多い」という特徴を逆転させ「軽い」「安い」「部品が少ない」家づくりが始まったのです。

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(北川教授)
Q.これはインスタントハウスの原型ですよね?
「長い風船を使って編んでいくだけで、大きな構造体ができる実験。東日本大震災で子どもたちが声をかけてくれて、すぐ作ったもの」

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シンプルな構造にたどり着くまで、5年間、試行錯誤を重ねました。

これまでの仮設住宅よりも格段に早く、安く施工でき、おととしの能登半島地震の被災地には、約250棟が設置されました。

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(北川教授)
「3歳の女の子が『おうちができた』と、避難所の中で言ってくれた。その時に(東日本大震災の)小学3年生、4年生のことを思い出して、ようやく『宿題が少しでも返せた』と外に出て20分くらい号泣した」

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そして、インスタントハウスはさらなる進化を遂げようとしています。

「ホームベーカリー」みたいに…箱の中で膨らませて作る!?

最新作は、その名も「モバイルインスタントハウス」。

奥行きのある、四角い形をしています。

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(北川教授)
「形を長方形にした。ちょうどトラックの大きさに乗るとなると、運びやすく下ろしても使えるし(荷台に)乗せたまま医務室としても使える」
Q.トラックの荷台の大きさですね?
「ぴったりにしていますね」

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高さも道路交通法に違反しないため、トラックに乗せて移動も可能に。さらに、作り方もこれまでにない方法が。

(北川教授)
Q.これまでのインスタントハウスは、風船で膨らませるような感じだったが?
「今回は、ホームベーカリーみたいに、箱の中で膨らませて作る。

膨らんでパンみたいにできたら、引き出して完成です。大量生産で 出す、出す、送る」

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どうやって作る?木の枠の中でシートを膨らませ…

12日、モバイルインスタントハウスの製造工程が初めて公開されました。この作り方に大きなメリットがあるといいます。

(北川教授)
「自然災害が起きたときに被災地で作るのではなく、日常でこのハウスを使っていただいて、日本中のハウスが全部被災地に届いて簡易住宅として使っていただける」

木の枠の中でシートを膨らませ…そこに断熱材を吹き付けていく。作業時間は約2時間。断熱材が固まれば、完成です。

数時間で建つ“簡易住宅” インスタントハウスがさらに進化 「ホームベーカリーみたいに箱の中で膨らませる」 軽い・安い・部品が少ない
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大人4人でも運べる重さ 「家」を届ける新たな支援

柱はなく、力を全体的に受け流す構造で、耐用年数は10年以上。重さは約120キロ。大人4人でも運べます。

備蓄品や薬を詰め込んで被災地に送り込み、備蓄倉庫や薬局、診療所としての活用も想定しています。

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これらは、能登半島地震の避難所での「気付き」が活かされています。

(北川教授)
「能登半島地震に水や薬などいろいろ届いたが、物資を置いておく場所もないくらい避難所がいっぱいになる。おうち自体を届けられるようにできたらいいなと思い作った」

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南海トラフ巨大地震に備え… 「災害関連死0に抑える仕組みを」

災害が避けられない日本で避難生活を変えようと、進化するインスタントハウスですが、超広域が被災する、南海トラフ巨大地震は最悪の場合、災害関連死が5万人以上にのぼる想定です。

(北川教授)
「(発災時に)即座に届けないと災害関連の症状が出てくる。

そういった症状をゼロに抑える時代が来るはずなので、南海トラフ巨大地震までにゼロに抑える仕組みを作っておこうと」

Q.現在の研究は10段階中で何段階目?
「10段あれば1段目に足を乗せたくらい」

数時間で建つ“簡易住宅” インスタントハウスがさらに進化 「ホームベーカリーみたいに箱の中で膨らませる」 軽い・安い・部品が少ない
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東日本大震災をキッカケに生まれたインスタントハウス。いつくるかも分からない巨大地震に備え、進化が続いています。

CBCテレビ「newsX」2026年3月13日放送より

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