「セカンド田中、捕った!1塁送球!あーっ!サノーがまさかの落球!」
3月29日、マツダスタジアムの広島・中日3回戦は栗林良吏と髙橋宏斗の投手戦だった。
試合が動いたのは6回裏。
送球はややライト側に逸れていたが、悪送球とは言えず、失策はサノーに付いた。その間に2塁走者が生還。これが決勝点となった。
3日後、私はナゴヤ球場で取材していた。すると、「お久しぶりです。いつも見ていますよ、夕方のニュース」と聞き覚えのある声がした。荒木雅博球団本部長補佐だった。アライバコンビで中日黄金期を築いたゴールデングラブ賞6回のセカンドの名手。あのミスを聞く相手として最高の人物だ。
荒木氏は「内野手にとって一番厳しいのはゴロを捕って投げる瞬間、ファーストがまだベースに付いていないことなんです。捕ってリズムよく投げれば、送球は安定しますが、ワンテンポ遅れることで、乱れやすくなるんです」と指摘した。
つまり、内野ゴロの際、ファーストに求められるのは素早くベースに入ること。一見、簡単そうに思える動きだが、奥が深い。
ミス防ぐため 当時の中日には“約束事”が…
「特に1・2塁間のゴロは難しいです。ファーストも本能的に打球を追うので、一瞬、体重が右足に乗る。そこから、体を切り返すので、どうしてもベースに入るのが遅れます。しかも、サノーのような体が大きいタイプは1・2塁間のゴロの後にベースに入る時、かかと重心になりがちで、セカンドから見ると、少しキャッチャー方向に体が流れる。だから、送球がライト側に逸れた場合、うまく反応できないことがあるんです。僕はそれをタイロン(ウッズ)でよく経験しました」と解説してくれた。
ミスを防ぐため、当時の中日には約束事があったと言う。「タイロンをファーストベース近くに守らせました。『タイロンは打球を追わなくていい。
約束事は守られている?田中を直撃すると…
今の中日はどうなのか。気になった私はバンテリンドームへ移動し、田中を直撃した。まず、荒木氏の話をせず、純粋にあのプレーを振り返ってもらった。
「あっち(ライト側)に投げた僕が悪いです。サノ―は少しベースに入るのが遅くて、ちょっとキャッチャー寄りに体重が乗るんです。だから、反応しきれなかったんだと思います」
あまりにも荒木氏の言葉と一致していて驚いた。その後、荒木氏の経験を伝え、今の中日はどうしているのか、聞いた。田中は「ちゃんとサノーをベース寄りに守らせています」と即答。「キャンプ中はもっとベースから離れていたので、首脳陣が指示しました」と打ち明けた。今も約束事は存在したのだ。
「ただ、サノーは状況によって少し深めに守るんです。その分、ちょっとベースに入るのが遅れる時があって、この前がそうでした」。守備にも意欲を見せ、好守を見せるサノーに「1・2塁間は追わなくても良い」とまで指示することは得策とは思えない。田中は「僕が修正するようにしています。ノックからライト側に送球が逸れないよう意識しています」と語った。
その後の田中の守備は?セカンドゴロに注目すると…
この話を聞いてから数試合、全てではないが、1・2塁間のゴロを捕った後の田中の送球に注目しているが、正面か逸れてもキャッチャー側だ。
確かにミスは痛い。しかし、その原因をプロに聞き、改善策を当事者に聞くと、また野球の見方が変わる。平凡なセカンドゴロも送球の方向まで興味深く見られるようになった。
今シーズン、またピンチで1・2塁間をゴロが襲うかもしれない。「田中、捕った!1塁送球!サノーが掴んでアウト!ドラゴンズ、ピンチを切り抜けました!田中とサノーがハイタッチ!」。今度はそんな実況を聞きたいものだ。
【CBCテレビ アナウンサー 若狭敬一】

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