三重県では、釣り客を相手に「遊漁船」を始める漁師が増えています。背景には、漁業一本ではやっていけないという海のある変化が。

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波間に浮かぶ2つに割れた船体。今年2月、三重県鳥羽市沖で貨物船が釣り客を乗せていた遊漁船に衝突。2人が死亡、10人が重軽傷を負いました。

(乗客)
「いきなり衝撃が来て、何が起きたか分からなくて…海の底にいた」
「あまり暴れると沈んでいくと思い、救命胴衣を握って救助を待つ状態でした」

なぜ?三重の海で増える“釣り船”遊漁船

漁業が盛んな三重県の海でいま、釣り客相手の「遊漁船」が増えています。その背景には「ある事情」が。

年収1000万円超は昔の話… 漁師の約4割が兼業 三重の海で増える釣り船「遊漁船」 伊勢エビ激減で「漁業だけでは生活厳しい」
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志摩市の漁師、西世古廉さん33歳。5年前から「遊漁船」の営業を行っています。

(喜平丸 西世古廉さん)
「(きょうは)風が強そうですね。本当はマグロ釣りだったが近場で」
Q.近場ではどういう魚を狙う?
「根魚がメインになってきそうだが、青物(青魚)も釣れそう」

高級魚 ホウボウやタイもあがり…釣り客楽しませる遊漁船

遊漁船とは、有料で釣り客を乗せるいわゆる「釣り船」。この日は、県内からたびたび訪れる常連客3人です。

(常連客)
「和気あいあいとしていて楽しい」
「遊漁船の船長は怖い人も多いが、喜平丸さんはフレンドリーにやってくれるので、友達感覚で来られる」

名前や住所などを記入する乗船名簿の作成と保存は、4年前に北海道知床沖で起きた観光船の沈没事故を受けて義務づけられました。

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早朝の午前6時に出港。沖合のポイントまで船を走らせる西世古さん。

(西世古さん)
「いつも行くところよりは浅いところにいる」
Q.それは安全面も考えて?
「この風だと底がとりにくい。

本当は3倍くらい深いところに行きたいんですけど」

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この日は大しけということもあり、なかなか引きがありません。時折、すぐ近くを大型の貨物船が通り過ぎます。

(常連客)
Q.今釣れたのは?
「ホウボウです。高級魚」

大漁とはいきませんでしたが、上品な甘みと歯ごたえが特徴的なホウボウや、タイなどがあがりました。

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「漁業1本では厳しい」 漁船を改造し遊漁船に 

祖父の代から続く漁師一家の西世古さん。5年前、思い切ってトイレの新設など漁船の改造を行い、遊漁船も始めました。

(西世古さん)
「なかなか漁業1本で家族を支えるのは厳しい」

遊漁船を始めた背景には、三重の漁業が置かれている厳しい現状があります。

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数日後、父親の光保さんと漁に出ていた西世古さん。漁はまだ見習いです。

(西世古さん)
「教えてもらうというより、自分でやらないと覚えられない」

この日は刺し網漁。狙うのは伊勢志摩のシンボル“伊勢エビ”です。

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昔は稼げたが…「今は子どもに勧められない職業」

翌日の早朝。網を回収しますが…

(父・光保さん)
「伊勢エビは無理無理。最近この魚の値段がよくなってきた。

オジサンという魚」

伊勢エビはゼロ。その代わり、沖縄など暖かい海にいる“オジサン”という魚が多く網にかかりました。比較的単価も高いため、漁師たちにとってはありがたい存在ですが、伊勢エビの不漁は収入に大きく影響しています。

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(父・光保さん)
「(昔は)年収1000万以上稼ぐ人もいた。それが今は…子どもがやりたいと言っても勧められない職業」

(西世古さん)
「やります」

漁業だけでは生活が成り立たない。そうした中で、「遊漁船」を始める漁師が増えているのです。

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遊漁船との兼業が4割近く… 「生きるためやらざるを得ない」

三重県内の漁業経営体の数をここ5年で比べると、2018年は2186、2023年は1536と大きく減っている一方で、遊漁船の業者数は2018年は475、2023年は567と100以上増えていて、兼業が今や4割に近づいています。

(西世古さん)
「(遊漁船業者が)結構増えた。生活するために、やらざるを得ないじゃないですけど、踏ん張って漁師を続けたい。漁師はずっとやりたかったんで」

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船長1人で運営する課題も

しかし、船が増えればリスクも高まります。海上保安庁の元職員で、今も船の安全啓発を行っている名和さんは、船長1人で運営されることの多い遊漁船特有の課題があるといいます。

(中部小型船安全協会 名和寿さん)
「遊漁船は大半が1人の船長でやっているので、なかなか目が配りにくい。お客さんの命を守らないといけないので、安全対策をやっていただきたい」

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2月の衝突事故もまさに、船長1人で釣り客12人に目を配っていたさなかに置きました。



三重の海が変わっても漁師であり続けるため。変わっていく海で模索しながら、きょうも船を出します。

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