中途採用の選考では、「オファー面談」と呼ばれる工程を挟むことがあります。オファー面談は、転職希望者と企業の双方で認識をすり合わせるために重要な役割を担います。


しかし、オファー面談を実施したことがない企業も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、オファー面談とは何かを解説するとともに、オファー面談の進め方もお伝えします。採用フローの見直しを考えている人事・採用担当者はご一読ください。

オファー面談とは?目的や質問と確認すべきこと、注意点を解説
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オファー面談とは

「オファー面談」とは、採用条件通知を出した転職希望者に対して実施する面談のことです。基本的には60~90分程度の時間をかけて、人事・採用担当者が中心となり実施します。

なお、オファー面談は必ず実施しなければならないものではありません。詳細な目的は後述しますが、あくまでも転職希望者と企業との認識をすり合わせて、転職希望者の不安を解消するためにプラスアルファで行うものです。

オファー面談の重要性

求人数よりも転職希望者数のほうが多い「売り手市場」の昨今では、オファー面談が重要な鍵を握ります。

売り手市場とはつまり、転職希望者が入社先の企業を選ぶ余地があるということです。このような状況下で、企業がオファー面談を実施すると、入社に際して生じる不安や疑問を払しょくでき、安心感が高まることから自社を選んでもらえる可能性が高まります。

なお基本的には、オファー面談だけに頼ることは避けたいところです。選考の段階から面接などを通じて自社の魅力を伝え、採用決定後の「最後のひと押し」として、オファー面談を行い、入社意思を固めてもらうという考え方が良いでしょう。

オファー面談を実施する目的

オファー面談は、転職希望者と企業の双方にとって意味のある施策です。ここでは、オファー面談を実施する3つの目的を解説します。

転職希望者の不安を解消する

上述の通り、採用条件通知後に改めて会話をすることによる転職希望者の不安の解消が、オファー面談を実施する目的の一つとして挙げられます。

面接の段階である程度、職場に関する情報や条件面について伝えられているとは言え、転職希望者にとっては多少なりとも不安が残るものです。「気になることはあるけれど、採用に影響する可能性を考えて質問できなかった」ということもあるでしょう。
採用条件通知を出した後に実施するオファー面談ならば、そのような不安や疑問に寄り添えます。

また、単に転職希望者の不安を解消するだけでなく、自社の魅力を伝えることによって「この企業に入りたい」という意向醸成にもつながります。

(参考:『採用決定後に口説き始めても遅い!入社承諾前辞退を防ぎ、入社意向を高める「オファー面談」ノウハウ』)

求める人材を確実に採用する

オファー面談は辞退を防ぎ、自社の求める転職希望者を確実に採用するためにも実施されます。

なぜオファー面談が辞退の防止につながるのかというと、オファー面談を実施することで企業が転職希望者の本音と向き合う機会が生まれるためです。企業側から転職希望者一人ひとりに寄り添ったアプローチをすることで「この会社は、自分のことをわかってくれているんだ」という信頼の醸成が期待できます。

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労働条件をすり合わせる

オファー面談には、労働条件をお互いに確認する場という側面もあります。特に業界未経験の転職希望者の場合は、実際にはたらく様子をイメージしにくいこともあるでしょう。

伝えるべき具体的な項目は後述しますが、給与額や繁忙期の対応、有給休暇の取得方法など、ワーク・ライフ・バランスに直結する情報が一般的です。また残業時間や有給休暇の取得率などについては、説得力を持たせるために実際のデータを交えて説明しましょう。

オファー面談はいつ実施する?

オファー面談は採用条件通知後の実施が一般的ですが、採用条件通知前に実施するケースもあります。

採用条件通知前のオファー面談は、転職希望者の入社意思を確認する意味合いで実施されることが多いようです。

転職希望者は「この会社に入るべきか」を、企業は「この転職希望者を採用すべきか」をそれぞれ最終判断する場とも言えます。

対して、採用条件通知後のオファー面談では、企業としては「この転職希望者に入ってほしい」という意思はすでに示した段階となります。そのため先述の通り、転職希望者の不安の払しょくと入社意向の醸成を中心に行うこととなるでしょう。

オファー面談で質問・確認すべきことと、意向醸成のために伝えること

ここでは、オファー面談の場で企業側は何を話すべきかをお伝えします。転職希望者に質問することと、入社の意向を醸成するために企業側から伝えるべきことがそれぞれあります。

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採用理由

採用条件通知後にオファー面談を実施する場合は、まず「なぜ採用条件通知を出したのか」を、入社後に期待している点とともに伝えると良いでしょう。

複数社の選考を並行して受けている転職希望者の場合は特に、「自分に期待してくれている」「自分のことをより理解してくれている」と思える企業を選ぶことが考えられます。入社の意向を醸成するために、採用理由、評価のポイントを共有することが大切です。

また、入社後に期待している点を伝えることで、どのような姿勢で業務に向き合うべきかを入社前の段階で伝えられるため、入社後の活躍が期待できます。

選考の状況

売り手市場の現状では、より希望に沿った転職先を選ぶために、複数の企業の選考を同時に受けている転職希望者も珍しくはありません。そのため、「他社も受けている場合、選考はどの段階まで進んでいるか」をオファー面談の場で確認しましょう。

もし他社の選考も受けているのであれば、自社に入る意向を醸成するためのアプローチが必要となります。また、入社受諾の期限についてもこの場で設定します。
なお、たとえ他社と自社との間で転職希望者が迷っているのだとしても、あくまでも本人の意思を尊重することが大切です。

「弊社としてはぜひ入社していただきたいと思っていますが、悔いのない判断をしてください」という配慮の言葉を伝えましょう。

入社日

入社を受諾した場合の入社日についても、オファー面談の場で大まかな方向感を確認することをおすすめします。

在職中の転職希望者の場合は、入社を受諾したら現職に退職する旨を伝えなければなりません。企業によっては退職の意向を伝えてから1カ月以上経たなければ退職できない場合もあるため、自社の希望する入社日を伝えた上で相談に応じると良いでしょう。

入社後の配属先

転職希望者が入社後に配属される部署や、担当する業務に関しても伝えます。募集要項や面接などである程度伝えていたとしても、認識に齟齬(そご)がないか改めて確認しておくと安心です。

「この会社に入ってから、具体的にどんな仕事をするのか」は転職希望者にとって非常に重要な情報であるため、丁寧に説明することが大切です。
なお、配属先や詳細な業務内容がまだ決まっていない場合は、それらが確定する時期と現時点での候補を伝えます。

転勤の有無

就業場所とともに、転勤の有無も伝えます。特に転勤がある場合、認識の相違があると、転職希望者の人生設計に大きく影響してしまう恐れがあります。

入社後に「聞いていた話と違う」といったトラブルとならないためにも、転勤をはじめとする居住地に影響する事項は念入りに認識をすり合わせてください。転勤に伴う家賃や引っ越し代の補助なども、ここで言及すると良いでしょう。

また、テレワークを導入している場合は、こちらも居住地に影響する可能性があるので、出社頻度やテレワークの適用ルールについても伝えることをおすすめします。

就業時間

就業時間もまた、転職希望者の日々の生活に影響し、ワーク・ライフ・バランスと直結する可能性があるため、認識をすり合わせておきたいところです。

なお就業時間については、規定上の始業・終業時間だけでなく、残業時間や繁忙期・閑散期などに関する情報も伝えましょう。平均残業時間やみなし残業時間を超えたときの対応、また業務の関係で残業が増える傾向にある曜日も伝えると、転職希望者は入社後のはたらき方をイメージできます。

またフレックスタイム制や時差出勤制度など、就業時間に関係する制度があれば、同じくこのタイミングで共有します。

給与・評価制度

給与額や評価制度も、転職希望者が詳しく知りたい情報の一つです。

募集要項に記載していたとしても、「実際の給与はいくらになるのか」「どのような基準で、どの程度昇給する可能性があるのか」も改めて伝えることが大切です。特に、評価制度や昇給について詳しく伝えることで、転職希望者は長期的にはたらくイメージを持てます。

制度上の決まりや仕組みを説明することはもちろん、「入社3年目で年収500万円に達したケースがある」「基本的には2年以内に昇給している」といったように、実際にはたらいている先輩社員の例を紹介すると、転職希望者にとってわかりやすいでしょう。

また、先述の就業時間に関する説明と同時に、残業代の計算方法を説明しておくことも欠かせません。

社内制度・福利厚生

給与と関連し、社内制度や福利厚生もまた転職希望者にとって重要な情報であるため、オファー面談の場で伝えることをおすすめします。

社内制度や福利厚生の内容によっては、入社後のキャリア形成やはたらきやすさを大きく左右する可能性があります。「このような制度がある」という説明だけでなく、制度の利用実績や条件もあわせて説明しましょう。

不安要因

ここまででお伝えしてきた項目を転職希望者に伝えた上で、ほかに不安なことはないかを改めて確認することも非常に重要です。不安要因に対して適切にアプローチすると、自社に入社してもらう意向を醸成できます。

このとき、転職希望者にプレッシャーを与えないために、会話の流れで「ちなみに、弊社を検討する上でネックになっているところはありませんか?」と聞くことをおすすめします。ここまでのやりとりで信頼関係が構築できており、なおかつ聞き方に問題がなければ、転職希望者はある程度素直に話してくれるでしょう。

なお、質問に対して回答する際は、事実とデータに基づいて明確な内容を返してください。「自社に入社してほしい」と思うあまり、都合の悪い内容をはぐらかしたり、焦って感情的に返したりしてしまっては逆効果です。


もし、想定外の質問が来た場合は「一度持ち帰らせてください」と伝え、当日中に電話で回答すると、誠実さが伝わります。

意思決定スタイル

これまでに実施した面接の内容を振り返りつつ、オファー面談の感触から、転職希望者の意思決定スタイルを判断し、それに対し適切なアプローチを行いましょう。

転職希望者の意思決定スタイルは、主に以下の4つに分けられます。

意思決定スタイルと、それぞれに適切なアプローチ

転職希望者一人ひとりと向き合い、「この人はどのスタイルに当てはまるのか」を考えながら、臨機応変な対応がとれると理想的です。

オファー面談を実施する流れ

オファー面談を円滑に進めるには、上記でお伝えした確認・質問事項だけでなく、実施に至るまでのプロセスも大切です。ここでは、オファー面談を実施するまでの流れをご紹介します。

ステップ①採用条件通知書を作成する

転職希望者の採用が決まったら「採用条件通知書」を作成し、メールあるいは郵送で送付します。採用条件通知書に記載する項目は、以下をご参考ください。

採用条件通知書に記載する項目
●労働条件
●休日
●給与・賞与
●福利厚生
●その他、事前に伝えておきたい内容

オファー面談の場では、この採用条件通知書に記載した内容を基に会話を進めることとなります。企業側からの回答に矛盾が生じることのないよう、採用条件通知書を送付する前に、内容に問題がないかきちんと確認しましょう。

ステップ②面談日を決定する

採用条件通知書を送付後、オファー面談の日程を調整します。

ポイントは、可能な限りスピーディーに進めることです。レスポンスの速さを意識することはもちろん、オファー面談の日程も、自社都合で遅くなることのないよう、極力調整しましょう。

レスポンスが遅いと、転職希望者に「この企業は採用活動を後回しにしているのかな…」と不信感を抱かせてしまいます。

また、採用条件通知書の送付からオファー面談までの期間が空くと、転職希望者が心変わりして、他社を選ぶ可能性もあります。

ステップ③面談を実施する

当日を迎えたら、いよいよオファー面談を実施します。前章でお伝えした項目を伝えつつ、転職希望者に疑問点がないか確認しましょう。

なお、オファー面談では企業側から説明するだけでなく、転職希望者から条件の交渉がある場合もあります。その旨もあらかじめ想定した上で、譲歩できる範囲を決めておくと安心です。

オファー面談を成功させるポイント

オファー面談では、転職希望者と企業の双方からコミュニケーションを成立させることが大切です。「理解のある会社だ」と信頼してもらうために、転職希望者に寄り添う姿勢を見せましょう。

具体的には、自社からの一方的な説明で終わらせずに、転職希望者の意見や主張、疑問に耳を傾けることを意識してみてください。また、否定的な言葉を使ったり、あいまいな回答で濁したりすることは当然ながら避けたいところです。

オファー面談は、採用面接とは趣旨が異なります。転職希望者に「この会社に入社しても大丈夫だ」と思ってもらうという目的を達成できるよう、コミュニケーションの取り方を意識してください。

オファー面談は、転職希望者の入社意思を固めるために重要な工程

今回は、採用条件通知書の送付後に実施する「オファー面談」について解説しました。実施のメリットや、実際に取り組む際の雰囲気はイメージできたでしょうか。

オファー面談は必須ではないものの、転職希望者の入社意思を固めて入社承諾後辞退を防ぐために重要な施策です。これまで実施したことのない人事・採用担当者は、本記事の内容を参考にぜひご検討ください。

(参考:『採用決定後に口説き始めても遅い!入社承諾前辞退を防ぎ、入社意向を高める「オファー面談」ノウハウ』)

(制作協力/株式会社eclore、編集/d’s JOURNAL編集部)

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