採用活動では、募集要項に自社が求める人材像を記載することが非常に重要です。しかし「漠然としたイメージはあるけれど、具体的な人材像は固まっていない…」「どこまで詳細に固めないといけないのかわからない」という人事・採用担当者もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、求める人材像を設定する重要性とともに、人材像の決め方や、その条件に合う人材を採用するためのポイントなどをお伝えします。
採用活動を効率的に進めたい人事・採用担当者はぜひご覧ください。
求める人材の設定が重要な理由
自社が求める人材を設定し、募集要項に記載することで、採用活動をより効率よく進められます。ここでは、求める人材の設定が重要である3つの理由をご紹介します。
採用のミスマッチを防止できるから
求める人材の条件は、すなわち「採用基準」となります。あらかじめ定めた条件を基準に採用活動を進めれば、ミスマッチをある程度防げるでしょう。
選考や面接の際に、求める人材の条件と照らし合わせて判断すれば、自社の社風や価値観に合う転職希望者を採用できます。さらに、それは転職希望者にとっても自社が適しているということなので、定着率の向上も見込めます。
採用にかかる費用を抑えられるから
自社の募集要項に、求める人材の条件を記載することで、採用にかかる費用を最適化できる可能性があります。
なぜなら、募集要項を見て「自分はこの条件に当てはまらないな」「この条件が求められる職場は、自分には合わなそう」と感じた転職希望者は応募しないことが考えられるためです。条件に合う転職希望者の応募のみに対応することで、採用活動の時間や費用を必要最小限に抑えられます。
(参照:『採用コストの平均相場は?コスト削減の施策や計算方法を解説』)
自社のブランド力を強化できるから
求人広告に、自社が求める人材の条件を適切に記載してあれば、ブランドイメージの強化も期待できます。
求める人材の条件を記載するということは、「自社がどのような価値観を大切にしているか」を開示するということでもあるためです。自社で大切にしている価値観が転職希望者に伝われば、ポジティブな印象を抱いてもらえるでしょう。
結果、志の高い転職希望者からの応募を集められることにもつながります。
(参照:『採用ブランディングとは?目的や方法、メリット、進める際のポイントなどを紹介 』)
ペルソナとは何が違うのか
自社が思い描く人物という意味では、「ペルソナ」というマーケティング用語もあります。しかし、求める人材像とペルソナは異なります。
求める人材像は、「このようなスキルや経験、ポテンシャルがあって、このようなパーソナリティの転職希望者を採用したい」という、採用活動の上で企業の希望条件を明確にするものです。ペルソナは、そこからさらに踏み込んで、より詳細な条件を定義します。
例えば、年齢や性別、居住地や趣味、ライフスタイルなど、詳細なプロフィールを決定し、対象者の人物像をつくり上げるのです。ペルソナを明確にした上で、「このペルソナに魅力を感じてもらえる求人広告を作成する」と仮定することで、採用活動の軸が明確になります。
なお、ペルソナはあくまでもマーケティングや採用活動の際にイメージする人物像のことです。実際の採用活動では、年齢や性別をはじめとする条件で合否を判断してはならない点にご留意ください。
(参照:『採用ペルソナとは?設定ノウハウや手順・具体例をまとめて紹介【テンプレート付】 』)
求める人材像のつくり方
ここでは、自社が求める人材像を固める上で意識したい4つのポイントをご紹介します。
ポイント①自社が目指している今後の目標を整理する
人材像そのものにフォーカスする前に、まずは自社が目指すビジョンはどのようなものかを整理します。自社の目標を明確にすることで、その実現のために必要な人材の条件が洗い出せるためです。
このとき、理想像を思い描くのではなく、あくまでも現状の労働環境や社風などを鑑みて現実的な目標を決めることが大切です。現状と目標を照らし合わせた上で、目標達成にはどのような人材が必要かを考えます。
ポイント②成果を出している社員の特徴を洗い出す
続いて、成果を上げている社員の特徴を分析しましょう。彼らに共通しているスキルや行動特性を言語化し、自社で新たに求める人材像の条件を絞り込んでいきます。
なお、この工程は採用活動だけでなく、社員の教育にも活用できます。すでに活躍している社員の共通点を参考に、これから伸ばしたい社員が獲得すべきスキルや意識したい行動指針を現場にそのまま落とし込めば良いのです。
(参照:『コンピテンシーモデルとは?目的や活用例・作成方法を解説』)

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ポイント③現場の意見を反映する
人事・採用担当者だけで条件を決めるのではなく、現場の意見に耳を傾けることも大切です。新たな人材を実際に迎え入れることになる、現場の社員に「どのような人材像を求めているか」をヒアリングし、その内容も適宜取り入れてください。
ただし、現場の要望を全て取り入れると条件が非常に限定的なものとなってしまう恐れがあります。人事・採用担当者が定めたビジョンと現場の要望をすり合わせつつ、優先順位を決めましょう。
ポイント④自社の雰囲気を言語化する
雰囲気や社風といった、自社ならではの性質も改めて振り返ります。たとえ求めるスキルのある人材だとしても、自社の性質と本人の性質が合わなければ、転職希望者がネガティブな印象を抱いてしまう可能性があるためです。
普段は「当たり前」だと感じている自社の性質を、改めて客観的な視点で捉えましょう。社風を言語化することで、「このような雰囲気を好む転職希望者が向いている」と、求める人材像をより具体化できます。
(参照:『採用基準とは?具体的な設定手順や自社にマッチした人材の見極め方|テンプレ付』)
求める人材を採用できないときに考えられること
上記のポイントを押さえて、求める人材像を明確にしたとしても、その条件に合う人材がなかなか採用できない場合もあります。そのようなときは、以下で取り上げる理由が考えられます。
求める人材の条件を絞り込みすぎている
求める人材の設定は必要とは言え、詳細に絞り込みすぎてしまうと間口が狭くなり、採用活動が思うように進みません。応募の段階で転職希望者が「自分は当てはまらないな」と感じ、応募数そのものが集まらないことも起こり得ます。
あまりに応募が集まらない場合は、求める人材の条件を整理し、優先順位の高いものだけを掲載しても良いでしょう。あるいは、入社後の教育で獲得できるスキルに関しては、あえて掲載しないといった選択肢もあります。
自社に応募してくる人材とのずれが大きい
採用活動が思うように進まない原因として、自社が求める条件と、応募してくる転職希望者の条件がかけ離れていることも考えられます。これは、自社が求める人材像の条件を、適切に言語化できていないからかもしれません。
たとえ社内で求める人材像が共有できていたとしても、それが募集要項の上で適切に表現できていなければ、転職希望者には伝わらないでしょう。結果、条件とずれている転職希望者からの応募が集まってしまうのです。
自社が求める人材像については、漠然としたイメージを共有する状態で終わらせず、的確に言語化することを心がけましょう。
一義的な言葉で表現できていない可能性がある
上述の「条件が募集要項の上で適切に表現できていない」ということと関連し、一義的な言葉で条件を表現できていない場合も、求める人材からの採用が集まらないことがあります。
例えば、「リーダーシップのある方を求めています」という記載は一義的とはいえません。リーダーシップという言葉は、人によって「メンバーの能力を活かしてチームのバランスを取ることが得意」「自分が率先して動いて、さまざまな実務を能動的にこなす」など定義が異なる可能性があります。
このように、複数の定義が当てはまる言葉が使われていると、自社が思い描く内容と、転職希望者が「自分が当てはまるかも」と思っている内容に乖離が生じるかもしれません。
このようなミスマッチを防ぐため、募集要項には抽象的な言葉を使わずに、一義的な表現を意識してください。
求める人材を採用するためにできること
先ほど紹介した「求める人材像を採用できない理由」を踏まえ、ここでは採用活動を成功に導くためのコツをお伝えします。
人材像を具体的に設定する
求める人材像の条件は、具体的であればあるほど、転職希望者と企業の間で認識のずれが起こりにくく、採用活動をスムーズに進められる可能性が高まります。
ただし、これはあくまでも「漠然としていた情報を具体的に定める」ということであり、条件を絞り込むこととは同義ではありません。先述したように、条件を絞り込みすぎてしまうと、採用の間口が狭まります。
あくまでも、認識のずれを防ぐことを目的に、漠然とした表現を具体的に言語化することを意識しましょう。
求める人材に合わせて採用戦略を立てる
求める人材像の条件は、募集要項や求人広告に掲載するだけでなく、採用戦略のさまざまな場面で活用できます。自社から積極的にアプローチしていけば、効率的な採用が可能になります。
例えば、採用サイトや採用パンフレット、SNSで求める人材像を発信すると良いでしょう。自社に適した手法を考え、採用戦略を立てていくことをおすすめします。
(参照:『採用戦略を立てる5つのフロー|企業事例やフレームワークも解説』)
転職希望者に伝わりやすい言葉で記載する
募集要項は、誰が読んでもすぐに内容を理解できるような言葉で記載することが大切です。
内容がわかりにくいと、自社が求めている条件が転職希望者に伝わらず、条件と合わない転職希望者からの応募が集まってしまう可能性があります。また、「そもそも読んでもらえず、応募もしてもらえない」といったこともあるかもしれません。
このような事態を避けるため、以下のコツを意識してください。
わかりやすい募集要項を書くためのコツ
●専門用語は極力避ける
●中学生が読んでも理解できる言葉を選ぶ
●あいまいな表現を避ける
●数字や具体的な例を用いる
具体的でわかりやすい文章で求める人材像を記載すれば、転職希望者が「自分が当てはまるかどうか」を客観的に判断できます。
(参照:『求人票の書き方と応募されるための7つのコツ【無料テンプレート付き】』、『【添削例あり】応募獲得に差が出る「良い求人票の書き方」~営業職編~』)
求める人材像は定期的に更新する
募集要項に一度掲載した「求める人材像」は、定期的に見直して、適宜更新してください。
企業の成長や市場の変化により、同じ部門・職種の募集でも、求める条件が変化していくことは十分に考えられます。また募集要項の記載内容を変更したら、人事・採用担当者間でもその認識を共有し、採用活動の基準も併せてアップデートしていく必要があります。
社内で求める人材像を共有する
求める人材像に限った話ではありませんが、人事・採用担当者と現場の連携は、採用活動をスムーズに進めるために不可欠です。
採用の基準や採用活動の状況などの情報を、社内で適宜共有しましょう。また、面接官を担当する現場の社員にはガイダンスを実施し、全社的に面接の目線をそろえることも大切です。
(参照:『パーソルキャリアも苦戦!?「本部人事×現場」連携。採用成功への取り組み事例』)
求める人材像を明確にして、採用活動を効率的に進めよう
今回は、募集要項に記載する「求める人材像」の考え方や記載のポイントをお伝えしました。
求める人材像を明確にすると、転職希望者が自分と照らし合わせて考えられるだけでなく、企業にとっても採用活動の基準になるというメリットがあります。条件を具体的に記載し、わかりやすくまとめることで、ミスマッチを防ぎ採用活動を効率的に進められるでしょう。
(制作協力/株式会社eclore、編集/d’s JOURNAL編集部)