人事業務へのAI活用がまだまだ進んでおらず、「必要性が見えない」「活用方法がわからない」という声も少なくありません。一方、採用難が深刻化する中で人事・採用担当者の業務負荷は高まり続けています。
人事とテクノロジー両面に知見を持つパーソルワークスイッチコンサルティングの粥川泰地氏は、「AIが自律的に判断・行動し、転職希望者との面談日程の調整や問い合わせ対応など、人事業務の幅広い領域を代替できる時代が到来している」と話します。そもそも「AIエージェント」とは何か。どのように導入・活用すれば成果につながるのか。同社の取り組み事例を交えて聞きました。
AIが「自律的に転職希望者との面談日程を組む」こともできる時代に
──基本的な部分から教えてください。そもそも「AI エージェント」とは、どんな存在なのでしょうか。粥川氏:特定の目標を達成するために「自らで考え、判断し、行動する」能力を持つAIだと言えます。
AIの進化は三段階で整理できます。第一段階が「ジェネレーティブAI」(生成AI)、第二段階が「エージェンティックAI」(AIエージェント)、そして第三段階が「フィジカルAI」と呼ばれるものです。
生成AIはすでに多くの人が使っているように、人の指示に基づいて、文章や画像など何かを生成する能力を持つものです。
ここに手足がついたイメージがエージェンティックAI、いわゆる「AIエージェント」です。情報を調べるだけでなく、その情報をもとにAI自ら何らかのアクションを起こせる状態です。AIエージェントはまだ人による指示を必要とする面もありますが、自律的な要素も持ち合わせるようになってきました。
さらに進化したフィジカルAIは、ロボットがエージェンティックAIの知能を持ち、物理的な行動や操作を含めて自律的に動けるようになる状態。かつてSF作品で描かれていたような存在が現実になろうとしているわけです。
粥川氏:大きな違いは、「自律性」があるかどうかです。生成AIは、人の指示に基づいて画像や文章を生成する技術です。一方AIエージェントは、目的や課題に対して、人が詳細な指示を与えなくても、自ら考え、判断し、行動ができます。
たとえば「おすすめの京都旅行プランを教えて」と聞いた場合、生成AIは人気の観光スポットを教えてくれたり、2泊3日の旅行プランを立ててくれたりします。AIエージェントはここからさらに、ユーザーに成り代わり、新幹線やホテルの予約作業までも自動で行ってくれるようなイメージです。
採用業務で考えると、転職希望者との面談日程を自動で組むようなことなども任せられるようになるでしょう。
──採用周辺の業務でAIエージェントをどのように活用できるのか、より具体的に知りたいです。粥川氏:目的に応じて異なりますが、たとえば「採用の質を向上させたい」という目的で考えた場合は、21の採用周辺業務をAIエージェントが代替できると考えています。
採用業務を分解すると、計画・要件整理・母集団形成・選考・受け入れというフェーズに分けることができます。各フェーズで、現在人が担っている業務の一部を、AIエージェントが代替できる可能性があるのではないかと思っています。
業務の中でAIを活用するとなると、書類選考など「物量を処理する業務」において、自動化の延長で考えている企業が多いのかもしれません。しかしAIエージェントの本質を踏まえれば、これまで属人化していた業務や、ベテランの知見を持ってしか対応できなかったような業務も代替できる可能性が開けるのです。
業務の工数を削減することはもちろん、より質の高い採用を実現したり、1人あたりの採用費用を抑えたり、入社承諾率を高めたりと、採用のあらゆる課題に応じて活用できるはずです。加えて、生産性向上にも大きく寄与すると考えています。1人で複数のAIエージェントを動かすことにより、これまでは1人分の仕事しかできなかったところが、10人分の仕事ができる世界になるかもしれません。
入社受諾者フォローの対応時間を5割削減し、ベテランの知見を若手が活用できる体制へ
粥川氏:採用・労務の各業務でAIエージェントを導入した企業事例があります。それぞれについて詳しくご紹介します。
事例①:採用業務 へのAI エージェント導入
■背景・課題
同社では年間500人規模の新卒採用を行っており、この目標をクリアするために人事・採用担当者も20名超の大所帯となっています。
特に課題視していたのは「入社受諾者フォロー」です。人事・採用担当のベテラン社員と若手社員を比較すると、入社受諾者フォローのパフォーマンス、つまり最終面接合格を出してから承諾をもらうまでの成果に大きな差がありました。ルールに置き換えにくい業務で、経験に基づく判断が多いことから、ベテラン社員が持つ意向醸成のナレッジが属人化し、若手社員に伝わっていなかったのです。
■打ち手
そこで私たちは「入社承諾エージェント」を開発しました。ATS(採用管理システム)に蓄積された入社受諾者データや面接の情報を読み込んだ上で、「応募者ごとに、いつ・どんなアプローチを取れば意向が上がりやすいか」を教えてくれるAIエージェントです。
たとえば新卒採用のケースでは、三次面接まで行い、最終面接合格を出しています。最終面接合格の直後は学生もモチベーションが高い状態ですが、他社とも接する機会があり、意向度が徐々に落ちていってしまいます。ベテランの人事・採用担当者はこうした場合、OB訪問によって仕事の解像度を高めたり、人事が制度説明会を開いて会社の理解度を高めたり、リクルーターが付いてフォローしたりといった施策をタイミングよく行っていました。
入社承諾エージェントは、入社受諾者データや過去の面接などから情報を集め、最終面接合格後も意向が落ちないように、「どんな状態の学生に、いつ・どのようなフォローを行うべきか」をアドバイスしてくれます。ベテランのナレッジを1年目の若手担当者も活用し、ベテランと同じような判断ができるようになりました。
■効果・変化
ベテラン社員の判断やナレッジを、人事・採用担当者全員が享受可能になりました。
事例②:労務業務への AI エージェント導入
■背景・課題
同社では、従業員から人事部門に対する問い合わせが年間900件規模に上っており、労務担当者の業務負荷が高まっていました。
労務担当者への問い合わせには、「勤怠システムにログインできない」「通勤交通費の申請方法がわからない」といったものがあります。従来はFAQサイトに情報を掲載したり、チャットbotを導入したりして対応していましたが、どうしても人へのエスカレーションが発生する状況だったのです。そこで、「これらの問い合わせ対応をすべてAIエージェントが担えるようにする」という実証実験をスタートさせることとなりました。
■打ち手
従来の900件の問い合わせ履歴を分析すると、その8割近くはAIエージェントで対応できることがわかりました。現在はAIエージェントに社内規定を読み込ませ、問い合わせ内容に応じて「このように申請/対応してください」といった形で従業員へ自動返信するシステムを開発・実装中です。
これまでのFAQツールでは質疑応答内容などのコンテンツを大量に作成する必要がありましたが、AIエージェントを運用する場合にはこうした業務も不要となります。大幅に業務負荷を軽減できるはずです。
■効果・変化
実証をスタートさせた段階なので成果を測れるのはこれからとなりますが、現時点で問い合わせの7~8割に対しては、人と同じ粒度の回答がAIエージェントでも出力できています。将来的にAIエージェントをさらに活用していけば、従業員側で行っている申請自体もAIが代行できるようになるかもしれません。
「パッケージ」ではなく「課題別」に活用できるのがAIエージェントの魅力
──AIエージェントには、人事関連業務の課題に応じて、さまざまな活用の方向性があるのですね。粥川氏:はい。採用業務だけを例に取っても、上記の事例で紹介した以外に、転職希望者へのフォローアップメール作成や面接スケジューリング、問い合わせ対応、面接準備、求人票作成など、さまざまな用途で活用できます。
当社でも顧客企業のニーズに応じてAIエージェントを活用していますが、用途別にパッケージ化しているわけではありません。人事・採用業務の課題に応じて、AIエージェントでどのように解決できるかを提案しています。この柔軟性こそがAIエージェントの魅力と言えるのではないでしょうか。
粥川氏:前述の通り、AIエージェントは人に成り代わって動くこともできますが、実際に何かを実行させる場合には、人のチェックをしっかり入れるプロセスを挟むことが重要です。不安があれば「ログインして実行する作業は人が担う」など、業務プロセスとして明確にしておくべきかもしれません。
大企業ではガバナンスが厳しく、社内のセキュアな環境の中でのみAIを活用できるようにしているところも多いです。ただ中堅・中小企業ではこうした環境が整っていないケースが少なくありません。だからこそ、運用ルールは明確に定めるべきだと考えています。
──AIエージェントの活用にあたっては、導入や保守などの面でシステム部門も関与していくべきでしょうか。粥川氏:運用そのものは人事部門だけでもできますが、初期の構築の段階では、専門家の力が必要になるでしょう。
社内の採用業務をAI化しようとすると、まずは過去のデータをAIに学ばせる必要があります。そのAIが持っている事前学習情報以外に、何を学ばせるか設計しなければいけません。また、AIが読み込やすいように情報を加工するための専門知識も必要です。
AIエージェント活用に向けて外部サービスを導入する際には、こうしたサポートが受けられるかどうかを確認していただければと思います。
パーソルワークスイッチコンサルティングが提供するAIエージェントサービスでは、開発期間として3~6カ月を目安とし、導入準備から運用後の伴走までサポートしています。これくらいの準備期間があれば、何らかの業務をAIエージェントが代替して自動的に進められる状態へ持っていけるはずです。
「困っていることはたくさんあるけど、AIがどのように役立つかわからない」という状態の企業も多いでしょう。まずはその悩みを私たちのような専門家にご相談いただくことで、AIを使いこなすための道筋が見えてくるのではないでしょうか。
※パーソルグループでは、転職希望者・応募者本人の評価・合否(選考機会を含む)に直接影響を及ぼす業務において、慎重な審査や厳格なリスク対応を必須とした上で、AI活用を行っています。
【取材後記】
粥川さんの言葉の端々から、単なる自動化や特定業務の改善ではなく、「人事課題に応じてAI活用の最適解を生むこと」に重きを置いている姿勢が伝わってきました。入社受諾者フォローの知見共有や労務問い合わせ対応など、属人化が避けられない領域にこそAIエージェントは力を発揮するという示唆は、多くの企業にとってヒントになるはずです。人の判断を補完し、再現性のある強い組織をつくる。AIはその実現手段であり、主役はあくまでも人であると感じさせられる取材でした。
企画・編集/酒井百世(d’s JOURNAL編集部)、南野義哉(プレスラボ)、取材・文/多田慎介、撮影/塩川雄也

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