先が読めない不確実な時代、地域間の人口の歪みも進む中で、採用や人材育成の「正解」はますます見えにくくなっています。私たちはどこを目指し、どんな組織をつくっていけばいいのか――そのヒントを探るために、二人のゲストを迎えました。
持続的競争力を追求し、課題解決を積み重ねた結果から生まれたスタイル
星野佳路(以下、星野):僕は生まれた時から温泉旅館で育ったので、何をするにも「後継者である」ということが前提にありました。祖父は僕を名前ではなく「4代目です」と人に紹介していましたから、物心がついた頃から「自分は4代目になるんだ」と信じていましたね。なので、大きな転機というものは実はないんです。4代目になるために学校に行き、勉強をし、家業に戻ってきたという感じです。中心には常に温泉旅館があり、ホテルがあり、観光という大きなテーマがあった。非常に分かりやすいキャリアを辿ってきたと思います。
MEGUMI:でも、それまでの旅館のスタイルから「星野リゾート」というブランドに育て上げられましたよね。そこは大きな変化だったのではないでしょうか。
星野:いま星野リゾートとしては、国内外で74の施設を運営していますが、「何年までに施設数をどのくらい増やし、売り上げをどれだけ伸ばそう」というようなことを計画したことはありません。持続可能な競争力を持つ企業を目指し、目先の目標や課題を必死に解決していったら、結果的にいまのスタイルにたどり着いたという感覚です。もちろん、競争相手のことは常に意識していますし、そこに負けない実力をつけることが持続可能な競争力につながるのですが、施設数、売上高、利益などの数値目標は設定していません。
MEGUMI:意外でした。「この年はこれだけの施設をつくって」と、すごく緻密に計画を立て、常に念頭に置かれているのかと思っていましたから。
待つのではなく、自分の仕事は自分でつくる
MEGUMI:私の場合、コロナ禍が大きな転機となりました。そもそも芸能の仕事は、他者から声が掛からないと稼働できないんですね。どれだけ才能があっても、どれだけ努力をしても、声が掛からない限り稼働できない受け身の世界なので、そのどうにもならない感じを苦しく思っていた時期もあります。
一方、世の中を見渡すと自ら発信している方も多い。ちょうどその頃、NewsPicksで「日本人女性の自己肯定感は世界最下位」というニュースに触れて衝撃を受け、自分の中で色々と考えるようになりました。湧き上がるさまざまな想いや課題をミックスし、映像のプロデュースをしてみよう。待つだけでなく自分で仕事をつくってみよう、と考えるようになりました。2020年から映像プロデュースの仕事を始め、これまでに9本の作品をつくっています。
いまは完全に終了してしまいましたが、子育てであまり外に出られない時期には子ども服をプロデュースしたり、2016年には金沢に「CAFEたもん」をオープンしたりするなど、その時々にやってみたいことのために動いていました。最近は、取り組んできたことの点と点がつながり線になってきたな、という実感があります。これをやるためにこれまでの20年があったのだな、人生の第二章が始まったな、と。
「いくぞー!」と周りを巻き込んで挑戦する
星野:ビジネス理論の中には、たとえ成功が100%約束されていなくても、さまざまな方法をトライする企業の方がリスクを取らず動かない企業よりも伸びている、というものもあります。
MEGUMI:そうなのですね。私は結構、失敗もしていますけれど。
星野:そうですか。その論文も、一定の成功確率があれば新しいことにトライする方が結果的に成長していくと結論づけています。MEGUMIさんのお話を伺っているとそんな感じだったのかもしれないですね。どんどん新しい姿勢を展開していくような…。
MEGUMI:そうかもしれないですね。新しいことを始めようとすると、特に日本人は恐怖を感じる方も多いので、一緒に仕事をする方々をどこまで奮い立たせるか、毎回難しさを感じるところでもあります。「いくぞー!」と拳を突き上げる勢いと感覚で、周囲を巻き込みながらやっているところはありますね(笑)。
星野:僕の場合はどちらかというと、核となるものに意識と資源を集中する「コア・コンピテンシー」の姿勢を大切にしています。自分の強みに集中することが正しいとされた時代にビジネスを学んできたこともあり、その癖がどこかで染み付いているのかもしれません。
ただ、いまビジネス界で注目される理論は変わってきています。「両利きの経営」という論文がありますが、端的に言えば「イノベーションを起こすには色々なことに挑戦していくべきだ」という考えが注目されています。
現場を知るスタッフは、経営陣よりアイデアを持っている
MEGUMI:いくつもの施設を経営していく中で、時代を読み、少しずつアップデートしていくのはなかなか難しいことではないですか。
星野:お客さまと接しているスタッフたちが感じたことを議論のテーブルに載せていく、その仕組みづくりを大切にしています。日々お客さまと接しているスタッフの頭の中にはヒントやアイデアがたくさんあるはずで、僕や経営陣が発想することよりもリアルです。だから接客のそれぞれの場面で、スタッフが得られたヒントをどうやって会社全体の情報にしていくかがとても重要だと思うんです。
MEGUMI:それだけヒアリングを多くされているということですか?
星野:僕は「フラットな組織文化」と表現していますが、スタッフたちが自由に発言できる環境を何よりも大切にしています。必要な提案やフィードバックであれば、組織図に関係なく誰もが発信できる文化です。
例えば、新型コロナウイルスのパンデミックでは一時的にビュッフェ形式の食事提供をやめていました。それはトップダウンでの緊急指示だったのですが、しばらくすると、お客さまからの予約を直接、受けているスタッフからビュッフェ再開の提案がありました。「ビュッフェが中止になってがっかりした」というお客さまの声が多いと気づいたからです。
僕は91年に旅館を引き継ぎましたが、採用広告を出しても誰も来てくれず、新卒のイベントに行っても無名の地方の温泉旅館に就職してくれる人はいませんでした。「日々の運営に必要な人員を確保すること」に専念した最初の10年間は苦労の連続。
1984年に留学した時に、ビジネススクールには研究者たちがいて、新しい理論が常に沢山生まれていることを学びました。私は31歳で経営を引き継いだので、経営した経験もなかったですから、自分の判断が正しいとはとても思えない。何か頼るものが必要と考えた時に、著名な教授や研究者たちが発表するビジネス理論が役に立ちました。元マサチューセッツ大学教授で経営コンサルタントのケン・ブランチャードさんが人材育成についてまとめた「エンパワメント理論」を読んだ瞬間に、「うちの会社はこれをやろう」と決意したんです。
理論か直感か?リーダーが意識すべきこととは
星野:実は、星野リゾートの「フラットな組織文化」は「エンパワメント理論」そのものなんです。一人ひとりの自由な発想をいかに引き出すか。そのためには、言いたいことを言いたい人に言える組織文化をつくらなければいけない。言いたいことを言えないと、人はだんだんとアイデア自体を思いつかなくなってしまうんですね。
ブランチャード教授のエンパワメント理論をそのまま全て実践してみたら、あまりに結果が良かったので、そのまま維持しています。
MEGUMI:私の場合、芸能、文化、飲食とさまざまなことをやっていることもあり、最終的には「直感が当たっていた」と感じることが少なくないです。星野さんのビジネス理論とは真逆ですね。でも、「これがいい」と思った直感を信じ、その理由をスタッフに言葉でシェアする、その過程を含めて自分の中の「いけるぞ」という感覚を大切にしているところもあります。
星野:もちろん、直感でうまくいっている経営者もいます。その場合は、周囲に理論に基づき、ノウハウを整えてくれたりする人がいると、より安定するかもしれません。
MEGUMI:それは大事ですね。それから「ちゃんと人に会いに行く」ようにしています。どこでもオンラインでつながることのできる時代ですが、何時間もかけて相手に会いに行くこともあります。そうすると“現実の変化”が確かに感じられるんです。私のいまの仕事のフェーズでは、直接会いに行き、面と向かって話をすることも、まだまだ必要なことなのではないかと思っています。
星野:僕も40代くらいまではそうでした。
MEGUMI:そうなんですね!私は謎の会食とか、行っています(笑)。まだ自分の人生のステージはそういう段階なんですね。
スペシャル対談 第2弾の公開は、2026年3月16日(月)です。どうぞお楽しみに!
[doda人事ジャーナル編集部]

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