投資用物件に自分で住むのはアリ?注意点とメリット・デメリットを徹底解説
投資用物件に自分で住むのはアリ?注意点とメリット・デメリットを徹底解説

不動産投資ローンを契約中の投資用物件には、原則として、自分で住むことはできません。そもそも、不動産投資ローンは投資を目的としたローンであり、自己居住を目的としていないためです。

ただし、金融機関からの許可を受けた場合や、住宅ローンに借り換えることができた場合には、自分で住むことが可能です。なお、ローンがない場合や入居者がいない場合は、契約が終了しているためどのように使用するかは所有者の自由です。

本コラムでは、投資用物件に自分で住むことができる場合・できない場合の具体例のほか、自分で住むメリット・デメリット、手続き上の注意点を解説します。

特にオーナーチェンジ物件に自分で住むことを検討している方は、こちらのコラムでも詳しく解説しておりますので、ぜひご参照ください。

【関連記事】オーナーチェンジ物件に自分で住むメリット・デメリット【税理士監修】

■投資用物件に自分で住むことはできる?

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(画像:PIXTA)

結論からいうと、不動産投資ローン返済中の投資用物件に自分で住むことは原則不可能です。ローンを完済する、金融機関から承諾を得る、ローンの借り換えをするといったいずれかの条件を整えることが必要となります。ローンを完済した場合には自分で住むことも可能です。しかし、ローンが完済したからといって、必ず住むことができるわけではなく、既に入居者がいる場合には賃貸契約上、入居者を追い出すことは難しいため自分で住むことはできません。

以下からは、投資用物件に自分で住むことができるケース・できないケースを解説します。

●投資用物件に自分が住むことができるケース

投資用物件に自分で住むことができるのは、以下の4つのケースです。

・全額自己資金で購入している
・不動産投資ローンを完済している
・ローン返済中でも金融機関の承諾がある
・不動産投資ローンを住宅ローンに借り換える

物件購入時にローンを組むのではなく、全額自己資金で購入した物件であれば、金融機関とのローン契約による制限がないため、当然、自らの判断で居住することが可能です。また、ローンを完済している場合も同様に契約による制限がないため、自分で住むことができます。

ローンを返済中でも、金融機関の承諾を得られれば自分で住むことができます。ただし、不動産投資ローンは「賃貸収益を得る目的」で貸し出されているため、承諾を得られるケースはほとんどなく、難しいものとなります。

また、不動産投資ローンは「居住を目的」とした住宅ローンと比較して、一般的に金利が高く設定されています。そのため金融機関の承諾が得られたとしても、資金効率は基本的に良くありません。

専有面積が30㎡以上ある区分マンションなど、自己居住用の住宅ローンの対象となる物件であれば、不動産投資ローンから住宅ローンへと借り換えることで、自分で住むことが可能となる場合もあります。しかし、どこの金融機関でも借り換えに応じているわけではないため、将来的に住宅ローンへの借り換えも視野に入れて不動産投資を行う場合には、事前に情報を収集しておくことが重要です。

不動産投資ローンの返済中は契約による制限があるため、原則として自分で住むことはできませんが、具体的に検討している場合には、まずは金融機関に相談するようにしましょう。

また、後ほど詳しく紹介するように、現時点で入居者がいる場合、オーナーであっても一方的に入居者を追い出すことは原則としてできないため、自分で住むことができません。

●投資用物件に自分で住めないケース

以下のような場合は、原則として投資用物件に自分で住むことはできません。

・不動産投資ローンを完済していない
・入居者がいる

多くの不動産投資ローンでは契約上「自己居住を禁止」する条項が設けられています。無断で居住すると、一括返済の請求や金利の引き上げといったペナルティを受けるリスクがあり、基本的に住むことはできません。

また、入居者がいる場合にも自分で住むことはできません。

賃貸借契約はたとえ物件のオーナーであっても一方的に解除することはできないため、基本的には賃貸借契約が終了し、入居者が退去するまで待つ必要があります。

■投資用物件に自分で住むメリット

投資用物件に自分で住むのはアリ?注意点とメリット・デメリットを徹底解説
投資用物件に自分で住むのはアリ?注意点とメリット・デメリットを徹底解説

(画像:PIXTA)

投資用物件に自分で住むことで、一般的な住宅購入とは異なるメリットを受けられることがあります。以下からは、代表的なメリットを2つ紹介します。

●割安で物件を購入できる可能性がある

投資用物件に自分で住むことのメリットのひとつに、割安で物件を購入できる可能性がある点が挙げられます。

一般的に、自己居住用として販売されている物件は、築年数や面積、建物構造、交通利便性、建物仕様、近隣住環境などが価格に反映されやすく、特に首都圏などでは取引相場が高くなる傾向があります。しかし、投資用物件は、収益性や利回りといった経済的な視点から評価されるため、取引価格が高くなり過ぎてしまうと投資妙味が薄れることから、同じエリアや同じマンションであっても自己居住用として販売されている物件と比較して、割安な価格で市場に出回ることが珍しくありません。

もちろん、全ての投資用物件が自己居住用物件よりも安いというわけではありませんが、物件の特性や市場の状況をしっかりと見極めることで、掘り出し物を見つけられる可能性は十分にあります。そのため、もし将来的に投資用として購入した物件に、入居者が退去した後に自分で住むことを考えているのであれば、結果として割安な価格で自分の住まいを確保できる可能性も十分に考えられます。

●住む部屋を探す手間が省ける

投資用物件に自分で住むことを選択するもうひとつのメリットは、住む部屋を探す手間が省けるという点です。

自己居住用物件を探す際には、希望のエリアや間取り、家賃、設備など、多くの条件を考慮しながら物件情報を収集し、内見を重ねる必要があります。これは時間と労力を要する作業であり、特に多忙な方にとっては大きな負担となります。

しかし、自分で所有している投資用物件に住むのであれば、新たに自己居住用物件を探す必要がなく、また、契約手続きなども不要です。

自分の資産を有効活用できるだけでなく、煩雑な手続きや新たな費用も抑えることができます。

さらに、賃貸物件の場合では貸主の意向や契約内容によって、自由にリフォームや模様替えができない場合がありますが、自分で所有する物件であれば、自由にカスタマイズが可能です。自分のライフスタイルや好みに合わせて空間をアレンジできるため、より快適な居住空間を実現できるでしょう。

■投資用物件に自分で住むデメリット・注意点

投資用物件に自分で住むことには、いくつかのメリットがある一方で、デメリットや注意点も存在します。

●不動産投資ローンの契約上、自ら住むことは原則NG

投資用物件に自分で住むことを検討する際に、最も重要な注意点となるのが、不動産投資ローンの契約上の制約です。

多くの場合、不動産投資ローンを利用して購入した物件に自己居住することは、原則として契約違反となります。これは、不動産投資ローンが「物件を賃貸に供し、その賃料収入をもってローンを返済する」という前提で融資されているためです。この契約を無視して、自己居住とする場合、契約違反としてローンの残債を一括返済するよう求められるリスクもあります。

自分で住みたいと考える場合には、まずは事前に金融機関へ相談し、承諾を得る必要があります。しかし不動産投資ローンは「投資を目的としたローン」であり「自己居住を目的としたローン」ではありません。その性質上、金融機関から承諾が下りるケースはほとんどありません。もし、将来的に自分で住むことを視野に入れているのであれば、自己資金での購入や、ローン完済後に居住するといった計画を立てるようにしましょう。

●入居者がいる場合、自分で住むことはできない

すでに賃貸中の投資用物件に関しては、たとえ物件の所有者であっても一方的に賃貸借契約を解除し、自分で住むことはできません。

通常、賃貸借契約には2年間などの契約期間が定められているものの、一般的に用いられる普通借家契約の場合、契約の更新に際して賃借人から契約期間延長の申し出があった場合には、原則として賃貸人はこれを拒否できません。そのため、現在入居者がいる投資用物件については、いつかその入居者が退去すれば自分で住むことは可能であるものの、その時期がいつになるかは分からない、ということになります。

●住宅ローン控除を受けられない

投資用物件に自分で住む場合、住宅ローン控除を受けられないという点も重要なデメリットです。住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを利用してマイホームを取得する際に、所得税や住民税から一定額が控除される制度であり、住宅購入者にとって大きな節税効果をもたらします。

しかし、この制度はあくまで「自己居住用物件」の取得を対象としており、投資用物件の購入に利用したローンは適用外となります。たとえ、投資用として購入した物件に自分で後から住んだとしても、その物件が不動産投資ローンで購入されている限り、住宅ローン控除の対象とはなりません。もし、住宅ローン控除の適用を期待して物件を購入するのであれば、当初から自己居住用の住宅ローンを利用して購入する必要があります。

●節税効果も得られない

投資用物件に自分で住む場合、不動産投資で得られる代表的なメリットである節税効果も得られません。不動産投資による節税効果の代表例は、他の所得との損益通算により所得税や住民税を軽減できる点です。不動産の減価償却費やローンの金利、管理費、修繕費などの必要経費が家賃収入を上回ることで赤字となり、課税所得を圧縮できます。

しかし、自分で物件に居住する場合、事業としては認められないためにこれらの経費を計上することができず、他の所得との損益通算による節税効果は得られなくなります。

■投資用物件に自分で住む際の手続きとポイント

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(画像:PIXTA)

投資用物件に自分で住む場合には、いくつか重要な手続きとポイントがあります。これらを怠ると後々トラブルに発展する可能性もあるため、丁寧に進めるようにしましょう。

●売却も視野に入れて検討する

投資用物件に自分で住むかどうかを検討する際には、売却も視野に入れて検討することをおすすめします。自分で住むという選択肢だけではなく、その時点での市場における取引相場価格や、投資用として保有し続けた場合の将来的なキャッシュフロー、そして自分で居住する場合の家計収支などを総合的に比較検討しましょう。

例えば、物件をそのまま投資用として運用し続けたほうが将来的に大きな収益を生み出す可能性もあるかもしれません。あるいは、売却して得た資金で別の自己居住用物件を購入した方が、自身のライフスタイルや経済状況にとってより良い選択となる可能性もあります。

不動産市場は常に変動しており、購入時とは状況が大きく変わっていることも珍しくありません。自分で住むことを決断する前に、一度不動産会社に査定を依頼し、現在の市場価値を把握するのもおすすめです。

●入居者の有無を確認する

投資用物件に自分で住むことを検討する際、まずは入居者がいるかどうかや、退去の予定があるかを必ず確認しましょう。すでに入居者がいる場合には、入居者を追い出して自己居住を行うことはできないため、賃貸契約書の内容を確認しましょう。

具体的には、契約期間の満了を待つ、あるいは入居者との間で合意の上で立ち退き交渉を行うといった方法が考えられます。しかし、入居者側も正式な手続きを踏んで入居しているため、部屋の使用に問題があるなど、なにか特別な問題がない限り、急な立ち退きに応じるケースはほとんどありません。

●金融機関に相談する

投資用物件に自分で住むことを検討している場合、融資を受けている金融機関への事前相談は必須です。これは、前述の通り投資用ローン契約上、自己居住が原則NGとされているためです。

金融機関に相談する際には、正直に状況を伝え、自己居住が可能かどうかを確認します。許可が下りるケースは稀ですが、金融機関によっては個別の事情を考慮してくれる可能性もあります。

また、もし物件が専有面積30㎡以上の区分マンションなど、自己居住用の住宅ローンの融資対象となる物件である場合、投資用ローンから住宅ローンへの借り換えも視野に入れて検討することをおすすめします。住宅ローンに借り換えができれば、一般的に投資用ローンよりも低金利でローンを組めるため、月々の返済額を抑えられ、家計の負担を軽減できる可能性があります。

借り換えには審査や手数料が必要ですが、自己居住の実現と経済的なメリットの両面から、総合的に判断しましょう。

●収支計画を立てる

投資用物件に自分で住むことを決断する前に、必ず詳細な収支計画を立てる必要があります。入居者がいない物件に自分で居住することによって空室対策になると誤解されることもありますが、自己居住によって家賃収入が得られなくなるため、決して空室対策にはなっていません。現在の収入と支出を見直し、家賃収入がなくなった状況でも、ローン返済や管理費、固定資産税などの費用を無理なく支払い続けられるかを確認しましょう。

また、ローンの借り換えを検討する場合は、その際に発生する諸費用(保証料、事務手数料、登記費用、司法書士費用など)についても、金融機関や司法書士に相談し、事前にどれくらいの金額が必要になるかを正確に見積もっておく必要があります。これらの費用は数十万円に及ぶこともあるので、事前に把握しておく必要があります。

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