「マイソク」とは?語源や不動産業界での役割、見るべきポイントを解説
「マイソク」とは?語源や不動産業界での役割、見るべきポイントを解説

マイソクとは、不動産会社が不動産の購入希望者や賃貸物件の入居希望者に向けて、物件の概要や間取り図、広告主の情報などをまとめた資料のことをいいます。

本コラムでは、売買物件用のマイソクに焦点をあて、マイソクの語源や記載内容、マイソクがどのように作成されるかの手順や注目されるポイント、マイソクを見る際の注意点を詳しく解説します。

■マイソクとは?なんの略?意味や語源、目的を解説

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(画像:PIXTA)

はじめに、マイソクの概要や語源、基本的なルールについて解説します。

●マイソクは主に不動産会社が使う営業資料

マイソクとは、物件の購入希望者に向けて、不動産会社が作成する資料のことです。マイソクには物件の写真や基本情報(間取り・所在地・希望販売価格など)が記載されており、物件選びに必要な基本情報が1枚にまとめられています。

「マイソク」とは?語源や不動産業界での役割、見るべきポイントを解説
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※上記はマイソクのサンプルです。

「マイソク」という言葉は、「株式会社毎日速報センター(現:株式会社マイソク)」という会社名が由来といわれています。「毎日速報センター」は、1969年から元付け業者の依頼を受け、物件情報をまとめた図面を印刷し、他の不動産業者に配布する事業をしていたことから、「マイソク」という略称が業界内に広まりました。現在では、不動産業界全体で物件情報チラシを指す一般用語として定着しています。1994年に現在の株式会社マイソクと社名を変更しました。

マイソクには物件の基本情報が集約されており、物件を購入検討する際の第一印象を左右する重要な役割を果たします。不動産売買の際には、複数の物件を見比べる場面も多く、マイソクの内容が分かりやすく魅力的にまとめられているかどうかが物件に対する印象を左右し、問い合わせの数も変わるといわれています。

また、マイソクは店舗内での掲示や、インターネット広告の基礎資料としても活用されています。紙媒体として配布するだけではなく、PDF化してメールやWeb上のやりとりにも使われているため、現代においても不動産会社の営業現場では欠かせない重要な資料のひとつです。

●「不動産の表示に関する公正競争規約」に従って作成される

マイソクの書式には厳密な決まりはなく、記載事項さえ違反していなければデザインやレイアウトは自由に作成することができます。不動産会社によって、異なるデザインや表現で作成されることが一般的です。写真のレイアウトやカラーリング、コピーライティングのスタイルなども会社ごとに特色があります。

しかし、不動産の広告に関しては、公正取引委員会および消費者庁長官が認定した「不動産の表示に関する公正競争規約」というルールに従って作成する必要があります。この規約は、消費者を不当な表示から守ることを目的としており、物件情報に関する虚偽表示や誤解を招くような表現を厳しく制限しています。

例えば、物件の面積や築年数、設備に関する正確な記載、そして取引条件に関する明瞭な表示などが義務づけられています。不動産会社は、顧客に対して常に正確で公正な情報を提供するため、この規約を遵守しながらマイソクを作成することが求められます。

■マイソク(不動産売買用)に記載される主な情報

「マイソク」とは?語源や不動産業界での役割、見るべきポイントを解説
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(画像:PIXTA)

マイソクには、物件に関する多岐にわたる情報がまとめられていますが、売買物件と賃貸物件では記載される内容に若干の違いがあります。売買物件の場合は購入を検討するための詳細情報が中心となり、賃貸物件では入居に関する利便性や初期費用などの情報が重視されます。

以下からは、売買用のマイソクに記載される具体的な内容について解説します。

●物件の写真

物件の写真は、マイソクにおける重要な要素のひとつであり、購入希望者の第一印象を大きく左右します。外観写真のほか、リビング、キッチン、バスルーム、各居室といった専有部の写真、エントランスやロビーなどの共用部の写真が掲載されます。

居住中の物件であれば外観や共用部の写真のみとなることもあります。

物件が実際にどのような状態かを具体的にイメージしやすくするため、できるだけ明るくきれいな写真が使用されることが一般的です。物件の魅力が適切に伝わるかどうかで、問い合わせ件数や成約率も大きく変わるため、不動産会社も撮影には力を入れています。

●広告主の情報

マイソクには、物件を広告している不動産会社、すなわち広告主の情報も明記されます。

具体的には、広告主である不動産会社の正式名称、会社の所在地、連絡先となる電話番号が必須項目です。さらに、宅地建物取引業の免許番号、所属している不動産関連団体名、そしてその団体が「不動産の表示に関する公正競争規約」を遵守していることを示す公正取引協議会加盟事業者である旨も記載されます。

これらの情報は、広告の信頼性を担保し、万が一、情報に誤りがあった場合や不明点があった際に、消費者が適切に問い合わせを行うことができるようにするために記載されています。

●取引態様

取引態様は、マイソクに記載される重要な情報のひとつであり、広告主である不動産会社が、その物件の取引においてどのような立場にあるのかを示すものです。主に「売主」「代理」「媒介」のいずれかが記載されます。

売主とは、不動産会社がその物件の所有者であり、購入希望者に対して直接に販売を行う立場です。この場合、販売を行う不動産会社自身が所有者であるため、購入希望者にとって価格交渉がしやすいという側面もあります。

代理は、売主から販売業務の全てを委任されている立場であり、実質的に売主と同様の権限をもちます。

媒介は、売主と買主の間に入り、契約の成立をサポートする立場を指します。

それぞれの取引態様によって、契約の流れや交渉の進め方、費用などが変わってくるため、投資判断の際に必ず確認するようにしましょう。

●物件の基本情報

販売価格、想定賃料、管理費・修繕積立金などの収支関連データに加え、所在地や交通利便性(最寄り駅からの徒歩分数など)、土地の面積や建物の延床面積、そして構造(木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造など)などが記載されます。さらに、築年数や間取り、駐車場や駐輪場の有無、接道状況なども記載内容となります。

これらの情報は、投資物件としての収益性や将来性を判断する上で不可欠な要素です。例えば駅からの距離は賃貸需要に直結しますし、築年数は修繕費用や減価償却費に影響します。これらの基本情報を正確に提供することで、購入希望者は具体的かつ適切な投資計画を立てることができます。

●物件の詳細情報

マイソクには、物件の基本情報に加えて、より専門的かつ詳細な情報も記載されます。

例えば建築確認番号、建ぺい率や容積率といった法規制に関する情報、建物内の住戸数などが含まれます。また、その物件がどのような都市計画区域に位置しているか、用途地域は何か、そして国土法届出の有無なども重要な情報です。

さらに、水道等各種負担金の有無や金額、土地の権利形態(所有権、借地権など)も明記されます。もし借地権である場合は、その旨と借地期間、保証金や借地料に関する情報も記載されます。

連棟式建物である場合はその旨も示されます。

これらの詳細情報は、物件の法的な制限やコストに関わる重要な要素であり、不動産投資を行ううえで必ず確認すべき項目です。

●取引条件等

マイソクには、物件の取引に関連する具体的な条件も記載されています。

取引態様(売主・代理・媒介)は前述の通りですが、それに加えて「引渡可能年月」を記載します。引渡可能年月とは、物件をいつ引き渡されるのかというスケジュールになります。これは、購入後いつから物件を利用できるのかを示すものです。

また、その情報がいつ公開されたのかを示す「情報公開日」、そして最新の情報に更新された日を示す「情報更新日」、さらに次回の情報更新予定日である「次回情報更新日」も記載されます。

不動産の市況は刻々と変化するため、最新情報に基づいた意思決定が行えるよう、これらの情報にも必ず注意するようにしましょう。

●物件のアピールポイント

マイソクには、その物件ならではの特徴も記載されています。

例えば、「リフォーム済み」であれば購入後の修繕費用を抑えられる可能性が高く、入居者にも好印象を与えやすいでしょう。「駅近」であれば高い賃貸需要が見込め、空室リスクを低減できます。その他にも、「角部屋」「南向き」「日当たり良好」「眺望が良い」「セキュリティ充実」「ペット可」など、物件の持つユニークな特徴や魅力的なポイントが記載されます。

不動産投資においては、このようなポイントが賃貸づけのしやすさや資産価値の上昇につながることもあるため、投資判断の補助材料として有効に活用しましょう。

■マイソクが作成される手順とポイント

マイソクは一般的に不動産会社によって作成されるため、個人投資家が直接的にマイソク製作に関与することは基本的にありません。しかし、マイソクの質は不動産の売却活動や賃貸募集の成果に直結するため、その作成プロセスを理解しておくことは非常に有益です。

ここでは、マイソクが作成される手順や、作成時に重視されるポイントについて解説します。

●テンプレートを活用する

マイソクを作成する際には、既存のテンプレートを活用することが一般的です。

多くの不動産会社では、国土交通大臣が指定した公益法人である「不動産流通機構(レインズ)」などから標準的なマイソクのテンプレートを入手し、会社ごとにカスタマイズを加えています。

●物件の外観・内装の写真を撮る

前述した通り、マイソクに掲載する写真は、物件の第一印象を左右する非常に大切な要素です。特に投資用不動産の売買においては、「この物件であれば借り手がつきそうだ」と購入検討者に感じさせることが購入の決め手になることもあるため、外観や内装を魅力的に見せる工夫が欠かせません。

また、広さや開放感が伝わるように、広角レンズの使用やライティングも工夫されます。時間帯や天候によっても物件の印象は大きく変わるため、最も魅力的に見えるタイミングで撮影されることが一般的です。

プロのカメラマンを起用する業者もおり、写真の質によってさらに物件の価値が高く見えるように工夫されています。

●物件の情報を記載する

マイソクに記載する物件情報は、誤りのないよう細心の注意を払って入力することが求められます。

具体的には、所在地、地番、登記簿上の面積、建物構造、築年数、間取り、設備、交通アクセスなど、多岐にわたる情報を正確に記載しなければなりません。これらの情報は、登記簿謄本や建築確認申請図面、測量図などの公的な資料を参考にしながら、慎重に入力されます。

万が一、事実と異なる情報が記載されていた場合、消費者からの信頼を失うだけでなく、「不動産の表示に関する公正競争規約」に違反し、法的な問題に発展する可能性もあります。

投資物件の場合、利回りや賃料収入などの数字も重要な判断材料となるため、根拠に基づいた正確な数値を明記することが求められます。

●物件の取引条件・アピールポイントを目立つように配置する

マイソクは、単なる情報提供のツールではなく、物件の魅力を最大限に引き出し、購入意欲を高めるための営業資料です。そのため、物件の取引条件やアピールポイントは、特に目立つように配置する工夫が求められます。

例えば、「価格改定」「利回り〇%以上」「駅徒歩〇分」「リノベーション済み」といった、購入検討者の目を引くような条件や利点は、マイソクの冒頭や上部、あるいは太字で強調するなど、視覚的に訴えかける工夫がなされます。

第一印象で強みが伝わるようにすることで、物件に対する関心を高め、問い合わせや内見につながりやすくなります。情報の配置やデザインにも配慮しながら、物件の持つ魅力を最大限に引き出すことが、効果的なマイソク作成のポイントといえるでしょう。

■マイソクを見る際の注意点

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(画像:PIXTA)

投資物件を検討する際に欠かせない資料のひとつとしてマイソクがありますが、物件を魅力的に見せるために強調表現が用いられている場合もあるため、いくつかの注意点をおさえて確認することが重要です。

後々のトラブルを回避し、より安全で確実な不動産投資を実現するためにも、以下のポイントに注意するようにしましょう。

●虚偽・誇大な内容となっていないか確認する

マイソクを確認する際には、掲載されている情報が実際の物件の状況と一致しているかを他の資料と照らし合わせて、注意深く見極めることが重要です。

例えば、写真と実物が大きく異なっていたり、駅徒歩10分のところを「駅徒歩5分」と記載されていたり、誇大な表現や虚偽の内容が含まれているケースもあります。

こうした誤情報に基づいて契約を進めてしまうと、購入後にトラブルとなる可能性があるため注意が必要です。不当表示については「景品表示法」や「宅地建物取引業法」によって明確に禁止されており、違反した場合は業者側に法的責任が課せられます。

不動産投資にあたっては、マイソクの内容を鵜呑みにせず、物件の現地確認や複数の資料との照合を行い、正確な判断を心がけることが大切です。

●取引態様をチェックする

取引態様は、前述のように、その物件に関して不動産会社がどのような関わり方をしているのかを表す重要事項のひとつで、「売主」「代理」「媒介」のいずれかが明示されます。

取引態様によって、その後の交渉の進め方や、発生する手数料などが変わってくるため、マイソクを受け取ったら必ず取引態様を確認し、不明な点があれば担当者に質問して、正確な情報を確認するようにしましょう。

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