積算価格とは?実勢価格との違い、計算方法や注意点を解説
積算価格とは?実勢価格との違い、計算方法や注意点を解説

積算価格とは、土地と建物の価値をそれぞれ算出し、その合計額を物件の評価とするもので、主に金融機関の融資審査や不動産売買で活用されています。

本コラムでは、積算価格の意味や算出方法、実勢価格との違い、さらには実際の計算例を交えて、不動産投資初心者にも分かりやすく解説します。

■積算価格とは?

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まずは積算価格の概要や実勢価格との違いについて解説します。いずれも不動産売買の際によく用いられる指標となるため、しっかりと基礎的な知識を確認しましょう。

●積算価格は土地と建物をそれぞれ異なる方法で計算し合算した評価額のこと

積算価格とは、不動産の土地と建物の価値をそれぞれ異なる方法で算出し、それらを合計して導き出される価格のことを指します。簡単にいえば、物件の価値を土地と建物に分けて評価し、それらを足し合わせた評価額のことです。

積算価格は、金融機関が不動産購入希望者の融資審査を行う際の担保評価算出に用いられます。債務者(借主)のローン返済が滞った場合に、金融機関は担保物件を処分し、融資金を回収します。回収できる資金の目安を図るために、審査時に積算価格を用いて算出します。

ただし、積算価格はあくまで「評価額」であり、実際に市場で売買される価格とは異なります。投資判断の際にも積算価格は参考にはなるものの、実勢価格や収益性とあわせて総合的に判断するようにしましょう。

●積算価格と実勢価格の違い

積算価格とよく比較されるのが「実勢価格」です。実勢価格とは、その不動産が実際に市場で売買されている価格を指し、時価に近い価格とも言えます。この実勢価格は、売り手と買い手の交渉、周辺の取引事例、景気動向、需給バランスなど、様々な市場の動きによって左右されるため、同じ物件でも時期によって価格が変動します。

一方、積算価格はあくまで建物の再調達価格や土地価格から算出した評価額のため、市場の動向を反映しづらく安定しています。そのため、実際の売買価格と乖離することも少なくありません。例えば購入需要の強いエリアでは、実勢価格が積算価格を大きく上回ることがあります。

不動産売買する際には両者の違いを理解し、どの価格を基準に判断すべきかを見極めることが重要です。

■積算価格の計算方法

積算価格とは?実勢価格との違い、計算方法や注意点を解説
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土地および建物の積算価格を計算する方法や、具体的な計算例を紹介します。積算価格を計算するにあたっては、公示価格や減価償却など、周辺の知識も必要となるため、必要に応じて他の記事も参照しながら確認していきましょう。

●土地の価格の計算方法

土地の価格を評価する際には、「路線価」「公示価格」「固定資産税評価額」という3つの基準が用いられます。それぞれの計算方法は以下の通りです。

路線価(路線価評価額)=路線価(単価)×土地面積(㎡)
公示価格=公示価格×土地面積(㎡)
固定資産税評価額=公示価格×約70%(あくまでも目安)

路線価は国税庁(税務署)が1月1日時点を基準日として毎年4月頃に発表されます。道路ごとに定められた1㎡あたりの価格で、評価対象の土地が面している道路の単価に土地の面積を掛けて算出します。実務上では、積算価格の計算に最もよく使われる評価方法ですが、路線価は実際の土地取引価格よりも低く設定されることがあります。

一方、公示価格は国土交通省が1月1日時点を基準日として、毎年3月頃に発表されます。

標準的な土地の取引価格を示す指標であり、市場における土地の時価の参考となります。公示価格の計算方法や、公示価格から実勢価格を計算する方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

【関連記事】公示価格とは?不動産投資で知っておきたい実勢価格の算定方法と注意点

そして、固定資産税評価額は各市区町村の自治体が発表します。税額を算出するために使う評価額で、あくまで目安に過ぎませんが、公示価格の約70%となります。このため、固定資産税評価額から逆算して公示価格を推定することも可能です。

ただし、これらの価格はあくまで基準値であり、土地の形状や接道状態、立地条件などによって価格が補正されることがあります。例えば土地が不整形地の場合や接道義務を満たさない場合は、評価が下がる傾向にあります。また、周辺の実際の取引事例や駅からの距離といった利便性も、評価に影響を与える重要な要素です。

●建物の価格の計算方法

建物の積算価格は、次の計算式で求められます。

建物の積算評価(積算価格)=建物の再調達価格(=延べ床面積×建物の建築単価(円/㎡))×残存耐用年数の割合(=残存耐用年数÷法定耐用年数)

「再調達価格」とは、現在同等の建物を建築する場合に必要となる費用のことで、建築単価は建物の構造(鉄筋コンクリート造、木造など)によって異なります。再調達価格は建物の構造ごとに定められた建築単価に延べ床面積を掛けて算出します。

一方、「残存耐用年数の割合」とは、建物があとどれくらい使用可能かを示す目安になります。

その計算の基礎となる「残存耐用年数」は、次のような簡便法で求めるのが一般的です。

残存耐用年数=(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×20%)

例えば、法定耐用年数が47年、築年数が15年の場合、残存耐用年数は「(47-15)+(15 ×0.2)=35年」となります。

なお、法定耐用年数を超えた建物であっても価値がゼロになるわけではなく、下記のように大規模修繕やリノベーションなどが評価の際に考慮されたり、市場の変化によって変動したりする場合もあります。

・修繕履歴・リノベーション:物件の魅力が高まり、評価額も高まる
・機能的陳腐化:間取りや設備が時代遅れとなり、評価額が下がる
・経済的要因:周辺環境や用途地域の変更など、市場動向によって変化する

そのため建物についても、計算式によって暫定的な価格が算出されたあと、これらの要因によって価格が補正されることもあります。

●積算価格の計算例

実際に一棟アパートを想定した積算価格の計算例を紹介します。

区分化されたワンルームマンションの場合、土地の持分は非常に小さくなりますが、積算価格の算出においては、その小さな土地持分も建物とともに評価対象となります。同様に、一棟アパートや一棟マンションのように敷地全体を所有している場合も、土地と建物の両方が評価対象になります。

区分化されたワンルームマンションや一棟アパートおよび一棟マンションでは土地持分の大きさが大きく異なるため、積算価格に占める建物評価額と土地評価額の割合に違いが出ます。

今回は、一棟マンションの事例として、鉄筋コンクリート造(RC造)・築15年・法定耐用年数47年という条件で、実際に計算してみましょう。

<条件>
・物件の建物構造:鉄筋コンクリート造(RC造)
・築年数:15年(法定耐用年数 47年)
・土地面積:200㎡
・物件の延べ床面積:400㎡(土地)
・路線価:50万円/㎡(路線価を基準として用いて算出する)

土地の価格=路線価×土地面積
土地の価格=50万円× 200㎡=10,000万円(1億円)(建物)
・建物の新築時の建築単価:20.59万円/㎡(鉄筋コンクリート造 平成22年単価(※))

まず、建物の再調達価格(新築時の建築費用)を求めます。
建物の再調達価格=延べ床面積×建物の建築単価
建物の再調達価格=400㎡×20.59万円/㎡=8,236万円

中古物件の場合、次に経過年数を考慮した残存耐用年数を計算します。
残存耐用年数=(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×20%)
残存耐用年数=(47-15)+(15×20%)=35年


残存耐用年数の割合=残存耐用年数÷法定耐用年数
残存耐用年数の割合=35年÷47年≈0.74

そのため、建物の価格は次のように計算されます。

建物の価格=建物の再調達価格×残存耐用年数の割合
建物の価格=8,236万円×0.74≈6,095万円(積算価格)
土地の価格と建物の価格を合算して、積算価格を求めます。

積算価格 = 土地の価格+建物の価格
積算価格 = 1億円+6,095万円=1億6,095万円

最終的な積算価格は土地と建物を合わせた「1億円(土地)+6,095万円(建物)」で、合計1億6,095万円となります。

また、土地の状況が「2つの道路の角地」や「2つの道路に挟まれている」といった場合に、土地価格に加算補正を加える場合もあります。逆に、旗竿地や不整形地などいびつな形状の土地だと減額補正する場合もあります。

※出典:国税庁「建物の標準的な建築価額表」

■積算価格の注意点

積算価格とは?実勢価格との違い、計算方法や注意点を解説
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最後に、積算価格に関する注意点を解説します。積算価格は実務上もよく用いられる計算方法でありながら、扱い方によっては大きく金額等が変動することもあるため、他の計算方法と組み合わせながら物件の価値を算出することが重要です。

●積算価格は市場環境や建物の経年により変動する

積算価格は、市場環境や建物の経年によって変動します。

例えば、地価が上昇傾向にあるエリアでは、路線価や公示価格も上昇する可能性がありますが、建物の価値は築年数の経過とともに減少していくため、両者のバランスによって積算価格も変わってきます。土地と建物の合計額だけではなく、その内訳も確認することでより納得感のある不動産売買につなげることができます。

また、金融機関が積算価格を担保評価の一つとして扱うことはありますが、融資金額が必ずしも積算価格に準じて決まるわけではありません。あくまでも融資を行う上での一つの指標であり、金融機関によっては収益性や実勢価格を重視するケースも多いため、積算価格を過信しない姿勢が重要です。

●積算価格は物件の周辺状況でも変動する

積算価格の評価は、単に面積や構造による機械的な計算だけで決まるのではなく、物件の個別的な状況によっても変動します。

例えば土地の形状が不整形だったり、接道義務を満たしていなかったりするような場合には、路線価ベースの価格であっても評価が下がることがあります。また、前面道路の幅が狭い、周囲に騒音のある施設がある、治安や景観に問題があるといった要素も、マイナス評価の対象となり得ます。

こうした立地や周辺環境による補正は、積算価格をより現実的な価値に近づけるために必要不可欠なものですが、見積時には見落とされがちなため注意が必要です。

●積算価格だけでは全体の市場価値を正確に把握できない

積算価格は、不動産の評価を行う上で一定の基準となる金額を示しますが、これだけでは物件の市場価値や収益性を正確に反映することはできません。

特に、築年数が経過している物件や、駅から遠い、あるいは商業利用に不向きといった特殊な立地の物件では、実際の取引価格が積算価格よりも大きく下落することがあります。逆に、再開発の予定があるエリアや人気の高い立地では、積算価格よりも大幅に高い価格で取引されることもあります。

不動産売買においては、積算価格を一つの参考指標として活用しつつも、実勢価格や収益性、将来性といった他の視点もあわせて検討するようにしましょう。

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