
家賃滞納リスクは賃貸経営を行ううえで特に警戒するリスクの一つですが、家賃保証会社を利用することで、リスクを抑えることが可能です。
本コラムでは、家賃保証会社を利用するメリットやデメリット、実際に家賃滞納が発生した際の流れのほか、家賃保証会社の費用や注意点を詳しく解説します。
■家賃保証会社とは?
(画像:PIXTA)家賃保証会社とは、賃貸物件の入居者が家賃を滞納した際に、入居者に代わってオーナーに家賃を支払う会社のことをいいます。
家賃保証には大きく分けて2種類あり、1つは滞納分を立て替えてもらう「一般保証型」、もう1つは日頃から入居者が家賃保証会社に対して家賃を支払い、滞納発生時もそのまま家賃保証会社がオーナーに賃料相当分を支払う「支払委託型」です。
一般保証型滞納発生時にオーナーが家賃保証会社に立て替えを依頼する支払委託型日頃から家賃保証会社を介して家賃の支払いが行われるオーナーは家賃保証会社を利用することで、入居者に連帯保証人がつく場合と比べて、迅速かつ確実に滞納家賃を回収できます。そのため、未入金による資金繰りのブレを抑えられ、キャッシュフローの安定化につながります。
そして、家賃保証会社は入居者に代わりオーナーに対して滞納家賃を立て替えた後、立て替えた分の求償を入居者に対して行います。
滞納家賃が発生すると、単に家賃収入が途絶えるだけではなく、強制退去手続きなど法的な紛争にも発展することがあるため、こうしたリスクを軽減できる家賃保証会社は賃貸経営の強い味方といえるでしょう。
■家賃保証会社を利用するメリット

家賃保証会社を利用することで、家賃滞納リスクを軽減できるのはもちろんのこと、他の賃貸経営にまつわる悩みや負担を軽くすることも可能です。ここでは、家賃保証会社を利用することのメリットを3つ紹介します。
●家賃滞納リスクを軽減できる
家賃保証会社により滞納家賃の立て替えを受けられることで、家賃収入を予定通り確保できるためキャッシュフローが安定します。家賃保証会社を利用しない場合の年間未回収額についてシミュレーションしてみると、次の通りになります。
想定条件1棟アパート(全10戸)所有、空室無し。
・家賃8万円(1戸あたり)×10戸=月額収入80万円(年間960万円)
・滞納確率:5%/月(全10戸のうち3戸で、2ヵ月連続の滞納が年1回発生する想定)年間未回収額の算定イメージ
960万円×5%=48万円
このように、家賃滞納が発生することで当初想定していたキャッシュフローが悪化し、融資を受けて物件を購入している場合には家賃収入での返済ができなくなったり、修繕費などの支払いが困難になったりする可能性があります。
これに対し、家賃保証会社が立替払いを行う場合、想定していた賃料収入が確保されるため、安定的な賃貸経営を実現することが可能です。
●入居者の幅を広げられる
オーナーからすると、家賃保証会社が間に入ることで、連帯保証人の確保が難しい高齢者、フリーランス、個人事業主、転職直後の人、留学生や在留外国人などの従来は受け入れが慎重になる層に対しても検討しやすくなり、空室期間の短縮につながる可能性があります。
その一方で、後述の通り、保証料の負担を嫌悪する入居希望者も一定数いるため、入居者ターゲットや周辺競合物件の募集状況、保証料水準などを総合的に勘案し、どこの家賃保証会社を利用するかについて検討する必要があります。
●入居審査の一部を任せられる
家賃の滞納を発生させないためにも、入居時に行われる入居審査は非常に重要です。入居希望者が家賃保証会社と保証委託契約を結ぶ過程では、本人確認のほかにも支払い能力に関する確認や反社会的勢力の該当有無、過去の滞納履歴の照会など、専門的な調査が実施されます。これらの入居審査を家賃保証会社が担うことで、オーナーは物件運営業務に集中でき、審査の属人化や見落としリスクを抑えられます。
特に信販系家賃保証会社と呼ばれる、家賃保証業務のほかにもクレジットカードの発行を行っている会社の場合には、個人信用情報機関への照会が可能なため入居希望者が過去にクレジットカードの滞納がないか確認することもできます。
■家賃保証会社を利用するデメリット
家賃保証会社を利用することで、オーナーには家賃滞納リスクを軽減できるなどのメリットがある一方で、募集や成約の場面で一定のデメリットが生じることがあります。ここでは、家賃保証会社を利用するデメリットを2つ紹介します。
●一部の入居希望者から敬遠される場合がある
家賃保証会社を利用する場合には、1~2年程度の保証期間で家賃の0.5~1ヵ月分程度の保証料を、入居者が家賃保証会社に対して支払うことが一般的です。連帯保証人を立てることができる入居希望者にとってはこの負担は不要なコストと感じる場合もあり、同等条件で家賃保証会社不要の他物件と比較すると不利になる可能性があります。
対策としては、敷金や礼金、前家賃の負担を軽くするなどの方法が挙げられます。
●入居審査に通らない場合がある
家賃保証会社による審査は、各社が定めた基準によって多面的に行われます。会社によっては審査目線が厳格なため、入居希望者が審査に通らずなかなか入居者が決まらないこともあります。その結果、入居確定までの時間がかかり、募集効率の低下や空室期間の長期化につながることもあります。
こうした状況を避けるには、特定の家賃保証会社に依存せずに、複数社を利用できるようにしておくことが有効です。これにより、入居希望者の属性や就労形態、収入構成に合わせて家賃保証会社を選ぶことができます。
もっとも、厳しい審査基準を用いる家賃保証会社を利用することで、家賃滞納リスクをより下げられるという点からみると、募集効率低下等のリスクは総合的に考えると必要なコストともいえるでしょう。
■家賃滞納時の対応の流れ

滞納が発生した場合には、段階を踏んだ対応が必要になります。まずはオーナーや管理会社による初期的な督促から始まり、その後は家賃保証会社による立替払いと再度の督促へと移行します。それでも解決しない場合には、最終的に法的措置に至ることがあります。
ここでは、実際に滞納が生じた際に家賃保証会社がどのような対応を行うのかを、具体的に解説します。
●電話・メールなどの初期督促
入居者が家賃を滞納した際には、まず家賃保証会社から電話やメールで初期督促を行います。
過去の裁判例によると、一度の家賃滞納を理由に賃貸借契約を解除し、建物の明渡請求をすることはできません。基本的には、滞納がおおむね3ヵ月以上に及んだ際に、オーナーと入居者との間の信頼関係が破壊されたものとして、契約解除・建物明渡請求が認められることとされています。
並行して、オーナーは家賃保証会社に対して滞納の事実を報告します。なお、支払委託型の場合、家賃保証会社はすでに滞納の事実を把握しているため、オーナーから連絡する必要はありません。
●家賃保証会社による立替払い・再督促
家賃保証会社が家賃の滞納を確認すると、オーナーに対して滞納分の立替払いが行われます。契約内容にもよりますが、滞納からおおむね1週間から10日ほどで、家賃保証会社が賃料を立て替える運用が一般的です。
その後、家賃保証会社は立て替えた分の滞納家賃を入居者から回収をする必要があるため、入居者に対して引き続き督促を続けます。立替払いが行われたことによって、滞納者(入居者)の家賃支払いが免除されるわけではありません。
●強制執行・建物明渡訴訟などの法的措置
それでも滞納が長期化し、3ヵ月以上に及ぶ場合には、家賃保証会社が入居者に対して財産の差し押さえなど強制執行の手続きを行うことがあります。さらに、オーナー自身も賃貸借契約を解除し、建物明渡請求を行う必要があります。
ここで重要なのは、建物明渡請求は物件の所有権に基づく請求なので、家賃保証会社では行えないということです。
そのほかにオーナーがすべき対応については下記の記事で詳しく紹介しているため、ぜひこちらも確認ください。
【関連記事】家賃滞納が発生した時にオーナーがすべきこと|強制退去のポイントを徹底網羅
■家賃保証会社の費用
家賃保証会社を利用する際には手数料が必要となりますが、入居時および賃貸借契約の更新時に入居者が支払うことが一般的です。入居時の初回保証料は総家賃の0.5~1ヵ月分程度、更新保証料は1~2万円程度が相場になります。
ただし、費用体系や料金水準は家賃保証会社によって異なります。例えば、家賃に連動するプランや定額型のプランなどのバリエーションがあります。そのため、オーナーは資金計画と照らし合わせながら、複数の家賃保証会社を比較検討することが重要です。
費用面だけでなく、滞納発生時の対応スピードや保証範囲の広さも含めて判断することで、より安定した賃貸経営を目指しましょう。
■家賃保証会社を利用する際の注意点

家賃保証会社の利用は、キャッシュフローの安定化のための重要な手段ですが、契約内容や会社の信頼性を確認せずに利用すると、思わぬトラブルにつながることもあります。そのため、保証料の安さだけで判断せずに、保証の実効性や会社の健全性を総合的に見極めるようにしましょう。
●保証内容・免責範囲を確認する
家賃保証会社を選ぶ際には、保証の対象範囲や免責事項を必ず確認することが重要です。
例えば、滞納発生日から一定期間は保証が開始されない「免責期間」が設けられている場合があります。
これらを事前に理解しておかないと、実際に滞納が発生した際に「想定していたほど保証されない」という事態にもなりかねません。契約前に保証内容を丁寧に比較検討し、自身のリスク許容度と照らし合わせて選ぶようにしましょう。
●家賃保証会社の口コミ・実績を確認する
費用や契約内容だけでなく、家賃保証会社の信頼性も慎重に確認する必要があります。特に注目すべきは、滞納時に実際に立替払いがどの程度迅速に行われているか、入居審査のスピードや会社自体の財務健全性です。
財務基盤が弱い家賃保証会社を選んでしまうと、いざという時に支払いが滞るリスクもあります。また、過去の利用者による口コミや不動産会社からの評判も参考にしましょう。利用者の声を確認することで、契約書からは見えにくい実務対応の質が把握できます。
長期的な賃貸経営にあたっては、信頼できる実績を持つ家賃保証会社を選ぶことが重要です。
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