マンション売却のタイミングは、相場や金利といった外部環境、築年数の節目による価格下落、ローン残債との兼ね合い、相続・転勤などのライフイベント、そして所有期間5年の税制ボーダーなど、複数の観点から判断する必要があります。
本記事では、代表的な「売り時」の見極め方に加え、投資用と自己居住用で異なる判断軸、高く売るための実践ポイント(相場把握・再開発情報の収集・清掃と管理の徹底)までを詳しく解説します。
■マンションを売却すべき主なタイミング
(画像:PIXTA)マンションの売却を検討する際には、売却に適したタイミングを見極めることが重要です。具体的には、市況や金利の動向といった外部要因だけでなく、築年数やローン残債の状況、さらにはライフイベントや税制上のメリットなど、複数の観点から判断する必要があります。
マンションを売却するうえで特に意識しておきたい5つの代表的なタイミングについて詳しく解説していきます。
●市況や不動産相場が好調なとき
マンションの売却価格は、市況や不動産相場の影響を強く受けます。
特に景気が上向いているときは、買い手の購入意欲が高まりやすくなります。また、需要が供給を上回る状態であれば、競争原理によって価格が上昇する可能性が高いです。
逆に景気が低迷している時期や金利が上昇傾向にあるときは様子見による買い控えが増え、売却が長期化したり、想定より安い価格での成約になったりするリスクもあります。金利が上昇傾向にある時は、その傾向が長期化する場合に、むしろ買い急ぐということもあるかもしれませんが、一般的に金利上昇は不動産取引を抑制する要因になります。
そのため、市場全体の動きを注視し、相場が強含みのときに売却を進めることで、有利な条件での成約につながりやすくなります。ただし、現状の市況が「好調か」どうかを正確に判断するのは容易ではありません。常に最新の相場動向を複数の情報源から確認し慎重に検討することが重要です。
●築年数が進み資産価値が下がる前
マンションの売却価格は築年数に大きく左右されます。
以下の表は首都圏における中古マンションの築年数ごとの平均売却価格の推移を示したものです。築年数を経るごとに売却価格が着実に下がっていることが分かります。
価格面積㎡単価下落率(対0年比)築0~5年 7,808万円61.93㎡126.08万円0.0%築6~10年7,156万円65.60㎡109.09万円8.4%築11~15年 6,619万円66.62㎡99.35万円15.2%築16~20年5,972万円70.20㎡85.07万円23.5%築21~25年5,320万円71.20㎡74.71万円31.9%築26~30年3,835万円66.45㎡57.71万円50.9%築31~35年2,455万円60.56㎡40.54万円68.6%築36~40年2,742万円57.54㎡41.24万円64.9%築41年~2,351万円56.65㎡47.66万円69.9%※出典:公益財団法人日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2024年)」特に築21~25年(5,320万円)から築26~30年(3,835万円)にかけては約28%もの大幅な下落が生じており、築30年を前に資産価値が急激に落ち込む傾向が見て取れます。
このような市場の動きを踏まえると、売却を検討する際には築年数が一定の節目を迎える前、特に築30年に差しかかる前に動き出すことが、資産価値を維持しながら売却するための現実的な判断といえるでしょう。
●住宅ローン残債と売却価格のバランスが取れるとき
売却を考える際には、売却予定の物件の住宅ローン残債と売却可能な価格のバランスを必ず確認しておく必要があります。売却価格が残債を下回ってしまうと、差額を自己資金で補填する必要があり、いわゆるオーバーローン状態に陥ってしまいます。
特に転勤や住み替えなどで急いで売却する場合、焦って相場より低い価格で売ってしまうと大きな損失を被ることになりかねません。反対に、売却価格がローン残債を上回る状況であれば、返済を完了させたうえで手元資金を残すことができ、次のライフプランに柔軟に対応できるようになります。
そのため、不動産情報サイトなどで周辺の取引価格などを確認しながら、残債と価格のバランスが取れるタイミングを見計らうことが非常に重要です。
●相続や転勤・住み替えなどのライフイベント
マンション売却は、ライフイベントに直結するケースも多くあります。転勤・結婚・子育て・老後の住み替えといったライフステージの変化が売却の契機となる場合です。
特に春や秋は引っ越し需要が高まるため、買い手の動きが活発になり売却にも適した時期といえます。売却には通常3~6ヵ月程度かかることを踏まえると、春に成約を目指すのであれば前年の秋から準備を始めるのが理想です。
一方で相続税や急な転勤など、突発的な事情によって売却を急ぐ場合もありますが、その際も可能な限り早めに専門家へ相談し、計画的に進めることが望ましいでしょう。こうしたライフイベントの特性を理解してタイミングを見極めることが、スムーズで無理のない売却につながります。
●所有期間が5年を超えるとき
不動産を売却する際には、税制面の観点も非常に重要です。
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」として課税され、所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%の合計39.63%と非常に高い税率が適用されます。
しかし、所有期間が5年を超えると「長期譲渡所得」となり、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%の合計20.315%まで軽減されます。さらに、自宅として10年以上所有している場合は6,000万円以下の部分について税率が14.21%まで下がるため、大幅な節税が可能です。
このように、所有期間を意識して売却時期を調整することは、税負担を減らし、手元に残る資金を増やすために非常に効果的です。
長期譲渡所得と短期譲渡所得の違いや計算方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
【関連記事】長期譲渡所得と短期譲渡所得とは?5年以内の不動産売却は注意が必要
■投資用マンションと自己居住用マンションで売却すべきタイミングは変わる
マンションの売却タイミングは、投資目的か自己居住目的かによって判断基準が大きく変わります。いずれも資産価値を守り、有利な条件で取引することを目指す点は共通していますが、注目すべき要素や優先順位は異なります。
例えば投資用マンションの場合、利益確保や資金効率を考慮した判断が求められます。
投資用マンションの売却を検討するタイミング
・築年数が進み融資期間が制限される前
・ローンの元金返済額が減価償却費を上回る「デッドクロス」を迎える前
・築年数が進み資産価値や入居需要が大きく下がる前
これらのポイントを押さえて早めに動くことで、損失を回避し、収益性を確保した売却が可能となります。
一方、自己居住用マンションではライフイベントや制度の変化が判断材料となります。
自己居住用マンションの売却を検討するタイミング
・子どもの進学や独立に合わせた住環境の見直し
・転勤や結婚などによる生活拠点の変更
・老後の生活を見据えた住み替え
・住宅ローン減税の終了時期
こうしたタイミングで売却を検討することで、生活の変化に柔軟に対応できます。
重なる部分もありますが、投資用は「収益性」、自己居住用は「ライフプラン」を軸にタイミングを考えることで、無理のない判断につながります。
■マンションを高く売るためのコツ
マンションを高く売却するためには、市況や金利などの外部要因だけでなく、自らの情報収集や日常の管理意識も欠かせません。金利や住宅ローン環境は買い手の需要に直結し、再開発などのエリア要因も価格を左右します。
さらに、不動産情報サイトに掲載されている物件情報などから取引相場を把握して売却のタイミングを見極めること、そして、日頃から清掃やメンテナンスを行い、購入希望者に対して清潔で管理の行き届いた印象を与えられるかどうかが、高値売却につながる大切なポイントです。
以下では、マンションを高く売るための具体的なコツを4つ解説します。
●金利動向と住宅ローン環境に注意する
マンションの購入検討者にとって、住宅ローンの金利は、資金計画を左右する極めて大きな要素です。金利が上昇すると毎月の返済額が増えるため、買い手は予算を下げることで毎月の返済額を抑えようとします。その結果、市場全体として購入需要が減退し、売却価格も伸びづらくなります。
逆に、金利が横ばいで推移しているときや下落基調にあるときには、買い手の借入余力が大きくなるため、購入しやすくなります。
したがって、売却を検討する際には金融政策や市場の動向を意識し、買い手にとって有利なローン環境が整っている時期を狙うことが理想となります。短期的な変動に一喜一憂する必要はありませんが、長期的な金利のトレンドを把握することで、売却の成否に大きな差が生まれます。
●周辺エリアの再開発やインフラ整備のリサーチを継続的に行う
マンションの資産価値は、物件単体の条件だけでなく周辺環境の変化によっても左右されます。特に新駅の開業や鉄道路線の延伸、大型商業施設の進出、再開発による街並みの刷新などは、将来の利便性や人気を高めるプラス要因となります。
こうした計画は発表から完成までに数年を要することが多いため、日頃から自治体の都市計画や開発ニュースにアンテナを張っておくことが大切です。再開発が進むエリアでは、需要が先行して高まるケースも珍しくなく、売却価格の上昇につながる可能性があります。
●相場を調べて納得感を得る
マンションを高値で売却するためには、まず市場価格を自分自身で正しく把握することが重要です。相場を知らないまま仲介業者に査定を依頼すると、提示された価格が適切かどうか判断できず、売却活動を業者任せにしてしまうリスクがあります。
実際には、同じエリアや築年数でも条件によって価格は大きく異なるため、複数の情報源を活用して相場を調べることが重要です。
近隣の取引事例や不動産情報サイトのデータを確認すれば、大まかな価格帯が把握できます。そのうえで査定額と比較すれば、査定額の妥当性を冷静に見極められ、価格設定に納得感を得ることができます。
仲介業者に過度に頼らず自分自身でしっかりと情報収集を行い、納得しながら意思決定していくことが大切です。
●清掃・管理を日頃から意識する
マンションの取引にとって、購入希望者が重視する要素の一つが第一印象です。
専有部分に清潔感があり、丁寧に管理していれば、買い手の第一印象は安心感を抱きやすく、購入意欲にもつながります。そのため日常的にこまめな清掃を行い、内覧時に好印象を与えられる状態を保つことが大切です。
また、共用部分の管理状況も見られるポイントであり、エントランスや廊下が整然としているかどうかはマンション全体の印象を大きく左右します。そこで、区分所有者として管理組合の活動には積極的に関わるようにしましょう。
こうした日頃の積み重ねが、結果として高値売却にもつながります。
■マンション売却での注意点
マンションを売却する際に注意すべきポイントは状況によって異なるため、以下の点に注意しながら戦略を立てるようにしましょう。
●投資用ワンルームマンションは融資条件に注意
投資用ワンルームマンションの売却では、購入者が利用する融資条件に特に注意が必要です。多くの金融機関では最長35年を融資期間としていますが、築年数が20年を超えると融資可能期間は短縮される場合も増えてきます。
購入者にとっては返済期間が短くなれば毎月の返済負担が大きくなり、家賃収入との差額が縮小することでキャッシュフローが悪化しやすくなります。その結果、利回りを重視する投資家から見れば投資妙味が薄れ、価格を下げないと購入対象とならないことも少なくありません。
築年数の経過が価格に与える影響は大きいため、融資条件の変化を意識して売却を検討することも大切です。
●自己居住用マンションは仲介会社選びが重要
自己居住用マンションの場合、築年数がある程度経過していても35年ローンが組めるケースは比較的多いため、投資用に比べて融資条件の影響は限定的です。その一方で、仲介会社の営業力や提案力が売却価格を大きく左右することがあります。
物件の強みを的確に分析し、魅力を引き出す写真を撮影し、不動産ポータルサイトに分かりやすく掲載してくれる会社であれば、多くの購入希望者を惹きつけられます。また、分析力がある仲介会社であれば内見時に物件の特徴を丁寧に説明できるため、購入希望者にポジティブな印象を与えやすく、高値成約につながる可能性が高くなるでしょう。
このように自己居住用マンションを売却する際には、相性だけでなく戦略面でも信頼できる仲介会社を選ぶことが重要です。
●投資用でも居住用として売却できるケースがある
投資用として購入したマンションであっても、条件を満たせば自己居住用として売却できる場合があります。特に専有面積が30㎡以上であれば住宅ローンを利用する購入希望者の対象となるため、投資家だけでなく実需層も視野に入れることが可能です。
同じ物件でも「投資用」と「居住用」では相場が異なるため、空室になった際に自己居住用として売却することで、投資用として売るよりも高く成約できるケースがあります。
売却戦略を柔軟に考えることで、物件のポテンシャルを最大限に活かし、より有利な価格での取引を実現できる可能性が高くなります。
こちらの記事では、不動産の売却時における注意点についてタイミングごとに詳しく解説しているため、ぜひご覧ください。
【関連記事】不動産売却時に知っておくべき注意点一覧!ステップごとに解説
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