造成工事とは、土地を建築や開発に適した状態に整えるための工事のことをいい、造成工事を施して建築可能な状態に整えた土地のことを造成地といいます。
造成の質は地盤の安定性や災害リスク、将来の修繕費、土地の資産価値に大きく影響します。
本コラムでは、造成工事の基礎知識から、購入前にチェックすべき安全性のポイント、関連する法規制、そして不動産投資における注意点まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。造成地の購入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
■造成工事とは?購入前に知っておくべき基礎知識
(画像:PIXTA)造成工事とは、傾斜地や農地など「そのままでは家を建てられない土地」に対して、切土(きりど)・盛土(もりど)・地盤改良・擁壁工事などを行い、建築や開発に適した状態へと整えるための工事のことです。造成工事を施して建築可能な状態に整えた土地のことを造成地といいます。
●造成工事の種類
造成工事にはさまざまな種類があり、土地の状態や目的に応じて複数の工法が組み合わされます。主な工事内容は以下の通りです。
地盤を整える工事(整地・切土・盛土)・表面の土をならす「整地」・高い土地を削る「切土(きりど)」
・低い土地に土を盛って平らにする「盛土(もりど)」
など、土地の傾斜を調整し建築可能な形状に整える作業障害物を取り除く工事(伐採・伐根・撤去)・木の伐採、根の除去(伐根)
・石・コンクリート・廃材などの除去
・古い建物の基礎や地中埋設物の撤去など、地盤の障害を取り除く作業地盤を強くする工事(地盤改良)・表層改良、柱状改良、深層混合処理など、地盤の強度不足を補うための改良工法
・不同沈下を防ぎ、建物の耐久性を高める土砂崩れを防ぐ工事(擁壁(ようへき)工事・排水工事)・擁壁(鉄筋コンクリート造・重力式・練積みブロックなど)工事で土が崩れないように壁をつくる
・排水管や水抜き孔を設け、雨水が溜まることによる地盤崩壊を防ぐ設備工事
これらの工事は単独で行われることもありますが、実際の造成現場では土地の状態に応じて複数の工法を組み合わせるのが一般的です。どの工事がどの程度必要になるかによって、工事期間や費用、将来の安全性も大きく変わってきます。また、造成工事の種類と役割を理解しておくことは、造成済み土地の評価にも役立ちます。
●造成が必要になる代表的なケース
造成が必要になる典型的なケースとしては、傾斜地やがけ地を宅地として利用する場合の「土地の整備」や「土地の有効活用」が挙げられます。傾斜地やがけ地では、そのまま建物を建てると不同沈下や土砂崩れのリスクが高いため、切土・盛土や擁壁工事などで安定した平坦面を確保する必要があります。
また、もともと農地や田畑であった土地を宅地化する場合の「排水の確保」や「地盤の強化」にも、造成工事が行われます。農地は水はけを重視してつくられていることが多く、宅地として利用するには地盤改良や排水計画の見直しが求められます。農地や市街化調整区域などを宅地として開発する場合には、都市計画上の制限や開発許可も関わるため、造成工事と合わせて法的な確認も重要です。
●造成後の土地が「見た目では判断しにくい」理由
造成済みの土地は、一見すると平らに整地されて、雑草も少なく、「きれいな宅地」に見えるかもしれません。しかし、盛土の土質や締固めの程度、地中に残された障害物の有無、排水設備の設計・施工状況など、重要なポイントは外観だけでは把握できません。
特に、厚い盛土がされた土地では、時間の経過とともに沈下が進行し、建物に傾きやひび割れが生じるリスクがあります。また、排水計画が不十分だと、大雨の際に地盤が緩み、土砂崩れや浸水被害につながるおそれもあります。
このように、造成地は「見た目の印象」と「実際の安全性」が必ずしも一致するわけではないため、購入前には複数の視点から慎重にチェックする必要があります。
■造成工事の品質と安全性を見極めるポイント
造成地の品質は、建物の耐震性・災害リスク・修繕リスクに大きく影響します。さらに、民法717条の工作物責任により、構造上の欠陥によって入居者に損害が生じた場合には、土地・建物所有者として避難費用や仮住まい費用、家財の損害、治療費、慰謝料などの損害賠償責任を負う可能性があります。
そのため、購入前の安全性の確認は欠かせません。ここでは、擁壁・地盤・排水という3つの重要なポイントについて、具体的な見極め方を解説します。
●擁壁の種類・安全性
擁壁は高低差のある土地において土砂の崩落を防ぐために設置する壁状の構造物であり、その種類や工法によって強度が大きく異なります。
鉄筋コンクリート造の擁壁は高い強度を持つため、現在の基準に適しています。重力式擁壁は自重で土圧を支える構造で、一定の安全性がありますが、設計や施工が適切でない場合はリスクがあります。
一方、住宅の塀などで使われているコンクリートブロックを積み上げただけのものや、空石積擁壁(からいしづみようへき:モルタルやコンクリートで石を接着せずに石を積み上げたもの)と呼ばれる古い擁壁は、十分な強度がないケースが多く注意が必要です。
擁壁の劣化は土地の崩落リスクに直結するため、事前に目視で確認できるポイントは必ずチェックするようにしましょう。具体的には、ひび割れの有無、水抜き孔からの水の流れ、擁壁のはらみ(前方への膨らみ)、傾き、目地の開きなどを確認します。
擁壁の安全性を目視で確認する時のポイントは以下の動画で解説しています。
【会員限定動画】実例で解説!「災害リスクが高い」投資物件の見極め方 ベテラン銀行員と擁壁専門家が語る「擁壁」の落とし穴
●地盤の安定性(盛土・切土の違いと沈下リスク)
盛土部分は沈下が起きやすいため、十分な注意が必要です。宅地を造成する場合、盛土と切土を組み合わせる手法が一般的ですが、このような造成地のうち大規模なものについては、各地方公共団体のウェブサイトやハザードマップポータルサイトなどで確認することができます。
そのうえで、地盤の安定性について何らかの懸念がある土地の購入を検討する場合には、どういった処理がなされたかを事前に不動産会社に聞くこともできますが、懸念が残る場合には購入しない選択をする方が良いでしょう。
●排水設備の適切性(雨水枡・側溝・擁壁の水抜き孔)
排水不良は大雨による浸水被害によって地盤崩壊の原因になるため、排水計画の適切性は重要なチェック項目です。
自治体の窓口で閲覧できる排水計画図で、調整池や浸透桝、側溝などといった設備の設置状況が確認できますが、専門家でなければ読み解くのは難しいかもしれません。
また、周辺の土地との高低差を確認することで、水が溜まりやすい場所であるかどうかといったことも確認できます。
■造成に関する法的規制|盛土規制法と都市計画法
まずは該当の土地の状態を確認し、必要な工事を計画する「土地の調査」が発生します。工事の内容やスケジュールを決定するため「計画の策定」を行います。一定の区域や規模の土地を造成する際には、事前に行政による許可が必要となることがあります。実際に工事を実施し、工事が基準を満たしているか確認を行い、「完了調査」を実施します。
造成工事が法律に基づいて適切に許可を得ているか、完了検査を受けているかを確認することは、将来的なリスクを回避するために不可欠です。
ここでは、造成に関する法的規制の概要について解説します。
●盛土規制法(旧:宅地造成等規制法)とは
盛土規制法(正式名称:宅地造成及び特定盛土等規制法)は、崖崩れや土砂災害を防ぐために、盛土・切土などの造成工事を全国的に厳しく規制する法律で、旧・宅地造成等規制法を2023年に抜本改正したものです。
この法律では「宅地造成等工事規制区域」と「特定盛土等規制区域」という2つの規制区域を定め、一定規模以上の盛土・切土や擁壁の設置・除却には許可や届出、検査、定期報告などが義務づけられています。
また、無許可工事や是正命令違反には「懲役3年以下・罰金1,000万円以下(法人は最大3億円)」といった厳しい罰則が科されるほか、土地所有者や造成主、施工者など原因行為者の責任も明確化されました。
このことから、造成済みの土地を購入する際には、盛土規制法(2023年の改正前に造成された土地については宅地造成規制法)に基づいて適切な許可や検査が行われていたかを確認することが重要です。
●宅地造成規制法(旧法)
宅地造成規制法は、土地の造成工事における事故を防ぐための規制を定めた法律です。2023年に盛土規制法へと抜本改正される前の法律であり、宅地造成工事規制区域内での造成工事を規制していました。
規制の対象となる工事は「高さ2メートル以上の崖の切土」「高さ1メートル以上の崖の盛土」「切土と盛土の高さが合計2メートル以上になる工事」「造成面積が500平方メートルを超える場合」で、これらに該当すると、事前に都道府県知事の許可を得る必要があり、工事完了後にも完了検査を受けることが義務づけられていました。
現在は盛土規制法に引き継がれ、規制区域や対象がさらに拡大されています。過去に造成された土地を購入する際には、当時の宅地造成規制法に基づいて適切な許可や検査が行われていたかを確認することが重要です。
●都市計画法の開発許可(一定規模以上の造成は対象)
都市計画法では、都市を計画的に発展させるために、土地の使用目的に応じて活用方法が定められています。そのため、都市計画法により、一定規模以上の造成工事は「開発行為」として扱われ、都道府県知事または市町村長の許可が必要となります。開発許可を受けた造成地では、道路・排水・上下水道などのインフラ整備計画が法的に求められ、基準を満たさない場合は許可が下りません。
具体的な規模要件は市街化区域、市街化調整区域、非線引き区域などによって異なりますが、たとえば市街化区域では1,000平方メートル以上、市街化調整区域では原則としてすべての開発行為が許可対象となります。
■不動産投資で造成地を購入する際の注意点
造成地を不動産投資の対象として購入する際には、安全性や法的適合性だけでなく、収益性や出口戦略も含めた総合的な判断が求められます。ここでは、購入前に押さえておくべき注意点を解説します。
●工事内容・法的手続き・維持管理の妥当性を総合的に確認する
造成地の良し悪しは、一つの要素だけで判断できるものではありません。
例えば、擁壁が適切に施工されていても排水設備に問題があれば、長期的には地盤崩壊のリスクが高まります。また、工事が適切に行われていても、法的な許可を得ていない場合には将来的な売却時にトラブルとなる可能性や売却できないといった事態になることもあります。
購入前には、売主や不動産会社に今までの工事内容を確認し、許可書類や完了検査済証の写しを入手して内容を確認しましょう。可能であれば、建築士や地盤調査会社などの専門家に同行してもらい、客観的な評価を受けることをおすすめします。
●見た目のきれいさだけで判断しない
造成地は表面が整地されているため、一般的に見た目には非常にきれいで問題のない土地に見えます。しかし、前述の通り、地盤の内部状態や盛土の品質、排水設備の適切性などは外観だけでは判断できません。
特に盛土部分は、締め固めが不十分な場合、購入後数年経ってから沈下が顕在化するケースもあります。また、擁壁の内部構造や鉄筋の配置、排水孔の設置状況なども目視では確認が困難です。
そのため、見た目の印象に惑わされず、書類による確認や専門家に相談することが重要です。現地視察の際には、雨天時や雨上がりの状態も確認し、水はけの良し悪しや水たまりの有無をチェックすることで、排水設備の機能を間接的に確認することができます。
●不安がある場合は建築士・地盤調査会社に相談する
造成地の安全性に少しでも不安を感じた場合には、建築士や地盤調査会社といった専門家に相談することをおすすめします。
専門家への調査依頼は費用がかかりますが、購入後に大規模な修繕が必要となったり、災害による損害が発生したりするリスクを考えれば、何らかの懸念がある場合には事前に調べておく方が良いでしょう。特に、盛土の範囲が広い土地や、擁壁の高さが高い土地、傾斜地に近い土地などについては、専門家による調査を受けることで将来のリスクを適切に見積もっておくことが重要です。
また、地盤調査を実施することで、地盤改良の必要性や建築時の基礎工法についても具体的なアドバイスを得ることができます。
●将来の修繕費・出口戦略も踏まえて判断する
造成工事の質が十分でない土地を購入してしまうと、将来的に擁壁の補強や排水設備の改修、地盤改良など、大きな修繕費用が発生する可能性があります。また、ハザードマップ上でリスクが高いエリアや、無許可造成が疑われる土地は、将来の売却が難しく出口戦略が取りにくくなることも考えられます。
不動産投資では、購入時点の価格や利回りだけでなく、長期的な修繕コストや災害リスク、売却時の需要も含めて総合的に判断することが重要です。造成工事の内容や法的な適切性をしっかり確認し、「安全性」と「収益性」の両面から納得できる土地を選ぶことが大切です。
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