不動産の二重譲渡とは?対抗要件や未然に防ぐ方法を解説
不動産の二重譲渡とは?対抗要件や未然に防ぐ方法を解説

不動産取引において、ひとつの物件を複数の買主に譲渡・売却してしまう「二重譲渡」は、重大なトラブルを引き起こします。

二重譲渡の問題を理解するためには、民法177条が定める「対抗要件」の仕組みや、登記の重要性を知っておくことが不可欠です。

また、取引を行う際には、二重譲渡を未然に防ぐための適切な手続きと確認作業が求められます。

本記事では、不動産投資を検討している人に向けて、二重譲渡の基本的な概念から、発生する原因、対抗要件の法的な仕組み、そして実際に二重譲渡を防ぐための具体的な方法まで、わかりやすく解説します。

■不動産の二重譲渡とは

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(画像:PIXTA)

二重譲渡とは、ひとつの不動産を複数の買主に譲渡・売却してしまう状況を指します。例えば、売主Aが所有している不動産を買主Bに売却した後、同じ不動産を買主Cにも売却するような状況です。このような場合、BとCのどちらが取得者になるのかを巡って争いが起きてしまいます。

二重譲渡は、買主双方(買主B・買主C)にとって深刻な法的問題を生じさせます。一方の買主は所有権を取得できず、支払った代金の返還請求や損害賠償請求を行わなければなりません。

不動産の二重譲渡とは?対抗要件や未然に防ぐ方法を解説
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このような紛争を解決するため、民法では特別な条文が置かれているほか、多くの裁判例の蓄積を通じて紛争解決ルールの明確化が図られてきました。

■二重譲渡はなぜ起きる?原因と具体的なケースを解説

不動産の二重譲渡は、手続き上のミスや認識違い、あるいは悪意をもって発生することがあります。ここでは、実際に二重譲渡が発生する可能性のある具体的なケースを3つ紹介します。

●売主による手続きミス(契約解除の手続き不備)

売主による手続きのミスとは、買主Bとの契約後に、より高額で購入する買主Cが現れ、売主が買主Bとの解除手続きを適切に完了せずに買主Cと契約してしまうケースです。

売主は「解除の意思表示をしたから大丈夫」と誤解しがちですが、手付倍返しや違約金の支払い、買主Bの同意など、解除の法的要件を満たさない限り最初の契約は有効なままとなります。

そのため、このような状況では二重譲渡となります。

特に不動産取引に慣れていない個人の売主の場合、契約解除の手続きに関する認識が不十分なことで、悪意がなくても結果的に二重譲渡を引き起こしてしまうリスクがあります。

●売主が知らずに行うケース(相続の混乱)

例えば、相続では情報共有の不足により、二重譲渡が発生するケースもあります。

具体的には、被相続人Aが生前に買主Bと売買契約を締結していたものの、登記移転前にAが死亡した後、相続人C(Aの子)が、被相続人Aと買主Bとの契約を把握しておらず、同じ不動産を買主Dに売却してしまった場合が考えられます。その結果、同一の物件について買主B・Dの双方と売買契約が成立してしまうことになります。

このように、被相続人が不慮の事故などで突然亡くなってしまった場合など、相続人が生前の取引状況を十分に把握できないまま新たな契約を締結してしまうことで、二重譲渡が起こる可能性があります。

●売主の悪意によるケース

意図的に二重譲渡を行うケースとして、複数の不動産会社と一般媒介契約を締結し、それぞれの会社に対して「他社での契約予定はない」と偽って同時に売買契約を進行させる状況が考えられます。特に一般媒介契約ではレインズの登録義務がないため、業者間の情報共有が限定的で、各社が独立して契約手続きを進めてしまう可能性があります。

ただし、契約締結時の重要事項説明や登記確認により短期間で発覚するため、売主にとっても法的リスクと損害賠償責任を負うだけでメリットは少なく、実際にはほとんど発生しない極めて稀なケースです。

■二重譲渡の結論を左右する「対抗要件」とは(民法177条)

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不動産の二重譲渡とは?対抗要件や未然に防ぐ方法を解説

(画像:PIXTA)

二重譲渡が発生した場合、誰が真の所有者となるのかは、原則として「先に登記を備えたか」によって決まります。これは民法177条が定める「対抗要件」という仕組みによるものです。ここでは、対抗要件の意味や民法177条の規定について詳しく解説します。

●対抗要件とは|第三者に自分の権利を主張するための要件のこと

対抗要件とは、第三者に対して、自分自身が真の所有者であると主張するための要件のことをいいます。不動産取引においては、契約を締結しただけでは完全に権利が保護されるわけではなく、対抗要件を備えることで初めて第三者に対して権利を主張できるようになります。

●二重譲渡では先に登記を備えたほうが権利を主張できる(民法177条)

不動産の対抗要件は、民法177条により「登記」とされており、登記をすることで初めて第三者に権利が主張できることとなっています。重要なのは、「先に購入したほう」でも「実際に不動産を使用しているほう」でもなく、「先に登記を備えたほう」が優先されるという点です。

民法177条は以下のように規定しています。

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

この条文は比較的短いものですが、二重譲渡をはじめとしたトラブルで頻繁に用いられることから、膨大な数の裁判例の蓄積があり、実務ではこうした裁判例も参照しながらトラブルの解決が図られています。

●相続や取得時効も登記が対抗要件となる

裁判例により、民法177条にいう「物権の得喪及び変更」は、売買による所有権移転だけではなく、あらゆる物権変動が含まれると解されています。そのため、例えば相続や取得時効により不動産の所有権を取得した場合も、登記を備えなければ第三者に対して権利を主張することができません。

相続によって不動産を取得した場合でも、登記を行わないまま放置していると、他の相続人が自己の持分を第三者に売却してしまい、その第三者が先に登記を備えてしまう可能性があります。このような事態を防ぐためにも、相続後は速やかに登記手続きを行うことが重要です。

●先に登記を備えても保護されないこともある(背信的悪意者)

裁判例では、「登記の欠缺(登記がなされていないこと)を主張するのに正当な利益を有さない者」は、民法177条にいう「第三者」にあたらないとされています。

このような者を「背信的悪意者」といいます。

まず、法律用語で「悪意」とは「事情を知っている」という意味であり、日常的に使われる「悪意」とは意味が異なります。悪意の第三者とは、先行する権利関係(売買契約等)の存在を知りながら、当該不動産の取引を行った者のことを指します。

不動産が売主Aから買主Bに売却されたものの、その登記が未了であることを知っている買主Cが、売主Aに取引を持ちかけて自分にも売却させ、先に登記を備えた場合を考えます。この場合、買主Cは単なる「悪意の第三者」であり、買主Bに対して自己が所有者であると主張することができます。これは、先に対抗要件を備えなかったBにも落ち度があると考えられているためです。

しかし、「悪意の第三者」に対し、事情を知っているだけでなく、背信的な動機や目的をもって取引を行う第三者のことを「背信的悪意者」といい、この場合は法的保護に値しないものとされています。

例えば、買主Cがあえて買主Bを困らせる目的で不動産を購入していたり、買主Bに不合理な価格で転売することを目的として不動産を購入していたりした場合、買主Cは「背信的悪意者」であるとされます。この場合、買主Cは民法177条にいう「第三者」に該当しないこととなり、先に登記を備えたとしても、買主Cは買主Bに対して所有権の取得を対抗できません。

もっとも、実際にどのような場合が「背信的悪意者」に該当するかの判断は難しく、実務上も「背信性」が認定されることは多くありません。

■二重譲渡を未然に防ぐ方法(購入前チェックリスト)

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(画像:PIXTA)

二重譲渡のリスクを回避するためには、購入前の確認作業と登記手続きの段取りが極めて重要です。ここでは、具体的な防止策を3つ紹介します。

●契約前・決済前に登記簿謄本で名義と権利関係を確認する

契約を行う前には、必ず登記簿謄本を確認し、物件の名義人や権利関係(抵当権の有無など)を事前に確認します。売主が本当に登記上の所有者であるか、他の権利者が存在しないかを確認することが重要です。

また、契約時に確認した情報が決済時まで変わっていないことを確認するため、念のため決済の直前にも改めて登記簿謄本を確認するようにしましょう。このダブルチェックにより、契約後に新たな権利設定がなされていないかを確認できます。

●決済と同日に登記申請する

代金支払いと登記申請を同日に行い、登記手続きが確実に進められることを事前に確認したうえで決済します。決済の際には原則として売主と買主の双方が同席し、資金の移動がしっかりと行われたことまでを確認します。

また、資金移動後にも改めて登記手続きに関して問題なく行えるかどうか、不足書類がないかを司法書士に確認し、直ちに登記手続きを実行してもらうようにしましょう。決済から登記申請までの間に空白の時間を作らないことが、二重譲渡リスクを最小化するポイントです。

●本人確認・代理権確認を徹底する

売主が本人であることを確認するため、身分証の確認だけでなく、委任状・印鑑証明・登記識別情報の整合性を確認します。これらの書類が揃っていて、かつ内容に矛盾がないことを確認することで、なりすましのリスクを防ぐことができます。

また、代理人がいる場合には、売主本人と不自然な代理関係ではないか注意することも必要です。代理取引はなりすましや無権代理のリスクもあるため、通常以上に慎重さが求められます。

可能であれば、売主本人との直接の面談や電話確認を行うことも有効な対策となります。

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