2025年のM&A件数が1000件(適時開示ベース)を突破した。1000件の大台乗せは3年連続だが、ペースは前年より1カ月以上速い。
空前のM&Aラッシュを反映し、取引金額もすでに15兆円を超え、過去最高を更新中だ。
年間1300件ペースで推移
上場企業に義務付けられている適時開示情報をもとに経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Onlineが集計した。
今年のM&A件数が1000件を超えたのは10月3日。この日、MTG、日本創発グループなどが5件のM&Aを公表し、1月からの累計が1003件となった。内訳は日本企業同士の国内M&Aが828件、外国を相手とする海外M&Aが175件。
合計で1000件の大台に乗せるのは3年連続となるが、到達は2023年が12月15日、2024年が11月8日で、今年はさらにペースが1カ月以上速まった形だ。
1~9月の第3四半期終了時点での累計は前年同期比10.7%増の985件。月間平均110件で推移しており、このペースでいけば、単純計算で年間1300件超となる。例年、年末にかけて件数が伸びる傾向があることから、上振れが見込まれる。
2024年の年間M&A件数は1221件とリーマンショック前年の2007年1169件を超え、実に17年ぶりに最多を更新したが、今年も記録の塗り替えが確実視される。

経営課題への対処、M&Aが増加の一途
国内市場の成熟化や人手不足問題、DX(デジタルトランスフォーメーション)化といった経営上の課題に対処するため、その手立てとしてM&Aの出動が増加の一途をたどっている。
アフターコロナの到来から3年となり、世界的なサプライチェーン(供給網)再構築の動きが活発化。海外M&Aも最多ペースで推移している。
2024年3月、日銀がマイナス金利政策を解除し、政策金利を17年ぶりに引き上げ、企業にとっては資金調達コストが増すことになったが、M&A意欲が後退することなかった。
今年は米トランプ政権の高関税措置発動で国内産業への影響が広がる新たな事態に直面しながら、M&Aは今のところ衰え知らずの展開だ。
円安が影響か、案件の大型化が顕著
取引金額は15兆4555億円(9月末時点)。すでに2018年の年間13兆8437億円を超え、これまでの最高となっている。
全体の3分の1近くを占めたのがトヨタグループによる豊田自動織機への4兆7000億円規模の買収・非公開化(6月発表)。武田薬品工業が2018年に発表したアイルランド製薬大手のシャイアー買収(約6兆2000億円)に次ぎ、日本企業のM&Aとして歴代2位となる。
1兆円近い巨額案件も2つ。ソフトバンクグループが半導体設計の米国アンペア・コンピューティングを約9700億円で買収する一方、セブン&アイ・ホールディングスは傘下のスーパー事業などを米投資ファンドのベインキャピタルに約8100億円で売却した。
これらトップ3の案件を別格としても、今年は規模の大型化が目立つ。金額1000億円超は27件(前年は年間25件)、2000億円超で括ると15件(同12件)を数える。円安を背景として海外案件の取引金額が膨らんでいることも作用しているとみられる。
◎2025年M&A:金額上位(2000億円超) HDはホールディングスの略
社名内容金額発表 1 豊田自動織機 トヨタグループによるTOBなどを受け入れ、株式を非公開化 4兆6840億円 6月 2 ソフトバンクグループ 半導体設計の米アンペア・コンピューティングを子会社化 9730億円 3月 3 セブン&アイ・HD スーパー事業などを米投資ファンドのベインキャピタルに譲渡 8147億円 3月 4 SOMPOホールディングス 米損保会社のアスペンを子会社化 5217億円 8月 5 三菱ケミカルグループ 子会社の田辺三菱製薬を米投資ファンドのベインキャピタルに譲渡 5100億円 2月 6 テクノプロ・HD 米投資ファンドのブラックストーンによるTOBで株式を非公開化 5074億円 8月 7 NTT NTTドコモを通じて住信SBIネット銀行をTOBなどで子会社化 4199億円 5月 8 フジテック スウェーデン投資ファンドのEQTによるTOBで株式を非公開化 4078億円 7月 9 トライアルHD 米投資ファンドKKR傘下の総合スーパーの西友を子会社化 3826億円 3月 10 トプコン 米投資ファンドのKKRと組んでMBOで株式を非公開化 3481億円 3月 11 牧野フライス製作所 アジア系投資ファンドのMBKパートナーズによるTOBで株式を非公開化 2748億円 6月 12 商船三井 化学品タンクターミナル大手のオランダLBCを子会社化 2605億円 3月 13 野村HD オーストラリアの大手資産運用会社マッコリーの米国子会社を買収 2584億円 4月 14 富士通ゼネラル パロマ持ち株会社による買収を受け入れ 2566億円 1月 15 テルモ 臓器保存機器メーカーの英国オーガンオックスを子会社化 2204億円 8月文:M&A Online
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