消費者金融大手の「アイフル」IT企業への変革に本腰 ロールアップ型M&Aを駆使

消費者金融大手のアイフル<8515>が、わずか2年ほどの間にSES(システム・エンジニアリング・サービス=システム開発の現場にITエンジニアを派遣するサービス)を手がける企業5社を傘下に収めた。

金融とITの融合によりデジタル技術を活用した金融グループとしての成長を目指すとの方針に沿ったもので、今後も一段とSES企業のM&Aに力を入れる計画だ。

2年間で5社を傘下に

金融業界は、キャッシュレス決済の普及や、オンラインローンサービスの増加などのデジタル化が進んでおり、この波に対応できなければ競争力を失いかねない状況にある。

こうした中、アイフルは金融業の枠組みにとらわれずに、SES企業をM&Aでグループ化し、IT企業として自社製品の内製化を進めるとともに、SES 事業を拡大することでIT企業への変革を進めている。

最初のSES関連のM&Aは2023年3月で、金融分野を中心とした開発を多く手がけているセブンシーズを子会社化した。

同年11月にはシステム設計から開発、運用まで幅広く行うLiblockを、2024年6月には、アプリケーションとサーバーエンドの両方の開発を行っているセイロップを傘下に収めた。

さらに2025年も、5月に金融などの分野で使われるプログラミング言語のCOBOLや、保険業務に強みを持つテンプレイトを、6月にクレジットカードシステムで豊富な経験と知識を持つスマートリンクを買収した。

これによってSES関連のM&Aは、わずか2年ほどの間に5社に達しており、2024年6月には、これら5社の中間持株会社として、AGソリューションテクノロジーを設立し、各社の特徴や強みを活かす運営や、経営管理やバックオフィスなどの効率化を進めている。

同社は、SES業界には小規模な事業会社が多いことから、事業の拡大に加えて経営の効率化を進めるため、ロールアップ型のM&A(複数の中小企業を買収し、統合することで一つの大きな企業として成長を目指すM&A)に力を入れており、今後もSES事業を手がける企業のM&Aは続く見通しだ。

ローン、保証、ペイメント、不動産でも探索

アイフルは消費者金融などの主力事業で得た利益を活用して、顧客基盤の拡大や新たな顧客層獲得に向けたM&Aなどを推進するとの方針を掲げており、SES以外のM&Aにも前向き。

M&Aのターゲットとして、親和性があり企業価値向上が見込める企業や、金融事業を主軸にグループのノウハウが活用できる企業などを挙げており、ローン事業や保証事業、一括立て替えなどのペイメント事業、不動産関連事業などを探索対象としている。

2025年3月期から2027年3月期までの3カ年の中期経営計画では、M&Aに最大600億円を投じ、新たな顧客層獲得に向けた新規事業領域や新プロダクトを創出する計画で、すでに初年度の2025年3月期に100億円分を実施。残りの2年間で500億円のM&A投資を見込む。

消費者金融大手の「アイフル」IT企業への変革に本腰 ロールアップ型M&Aを駆使
アイフルのSES事業でのM&A

消費者金融市場は今後も拡大

アイフルは、消費者金融業や事業者ローン、クレジットカード事業などの金融事業を多角的に展開しており、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国にも進出している。

消費者金融事業は、新興企業の参入が若年層の取り込みや抵抗感低下につながっており、今後も市場は拡大すると予測。

事業者ローン市場でも、中小企業向けの貸付残高は緩やかな増加基調にあり、今後も市場は拡大が見込めるという。

さらに、クレジットカード市場は、政府が推進しているキャッシュレス化の流れもあり、クレジットカード取扱額は堅調に増加すると見る。

こうした状況を踏まえ、中期経営計画では主力の消費者金融事業が堅調に推移すると予想する中、クレジットカード事業では新規発行枚数増加などに、少額短期保険事業では新規獲得などに、海外事業では進出エリアの拡大などに取り組む。

中期経営計画初年度の2025年3月期は、営業収益1890億5400万円(前年度比15.9%増)、経常利益268億1700万円(同21.5%増)と2ケタの増収経常増益を達成。

最終年の2027年3月期は、営業収益2180億円(2024年3月期比33.6%増)、経常利益420億円(同1.9倍)と大幅な増収経常増益を見込んでいる。

文:M&A Online記者 松本亮一

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