
四国地盤のマンション分譲中堅の穴吹興産<8928>は、新規霊園開発の加速や、法要、終活ビジネスなどの周辺事業の拡大に乗り出す。
2025年6月に、霊園開発などを主事業とする子会社の、あなぶきメモリアル(高松市)が、霊園の開発、運営、販売などを手がけるMGグループを傘下に収めたのを機に、霊園関連事業を事業の柱の一つとして強化することにした。
不動産と金融の融合による新たな価値を創造
穴吹興産はM&Aや事業再生を一つの事業として展開しており、企業支援としての事業継承、不動産の再生、事業拡大などを見据えたM&Aに取り組んでいる。
対象は観光やレジャー、商業施設など幅広く、2001年の高松国際ホテルや、2003年のアルファ津田カントリークラブ、2005年の旅館くらしきなどの実績があり、今回のMGグループの子会社化もこの取り組みの一環。
事業再生に取り組むプロジェクトチームには、法律、金融、財務、建築などの幅広い分野の専門家が参画しており、不動産と金融の融合による新たな価値創造を目指しているという。
MGグループは、霊園企画や運営を手がけるエムジープランニング(神奈川県小田原市)と、石材製造のMG石材(静岡市)からなり、静岡県を中心に霊園の開発や販売のほか、霊園の「メモリアルガーデン」七つを管理、運営する。
穴吹興産は2023年に、霊園開発や霊園コンサルティング、終活サポート事業などを手がける、あなぶきメモリアルを設立。現在は高松市で公園型霊園 「アルファメモリアルパーク高松~せせら樹~」の管理、運営や販売代理などを行っている。
今回のグループ化により、MGグループが有する豊富な霊園事業のノウハウを活用し、不動産開発力と融合することで、西日本から東海エリアでの新規霊園開発の加速や、既存霊園の販売力の強化、法要、終活ビジネスなどの周辺事業を含めた事業拡大に取り組む。
地域に密着した事業の多角化に強み
穴吹興産は1964年に宅地物件取引を目的に穴吹興産を設立したのが始まりで、1970年に立体駐車場事業に、1979年にホテル事業に、1980年にフィットネス事業に、1984年不動産分譲事業に、1992年に戸建て住宅事業に、2010年に介護医療関連事業に参入し、事業領域を広げてきた。
現在は総売上高の70%ほどを占める不動産関連事業(分譲マンション開発、不動産流通など)が主力事業。
このほかに売上高構成比が5%強の施設運営事業(ホテル、旅館、ゴルフ場の運営など)、介護医療関連事業(高齢者、要介護認定者向け住宅の提供など)、エネルギー関連事業(マンション、ビル、工場などへの最適なエネルギープランの提案など)、小売流通関連事業(スーパー=2025年7月にスーパー事業のジョイフルサンアルファを譲渡、無人店舗、ネットスーパー事業など)の4事業。
さらに売上高構成比が5%弱の人材サービス関連事業(人材派遣や人材紹介など)や、同数%の観光事業(社員旅行、研修旅行、修学旅行などの旅行プランニングなど)の2事業の、合わせて7事業を展開している。
不動産事業を中心に地域に密着した、こうしたさまざま事業を展開し、事業を多角化しているのが強みで、2026年6月期は売上高1440億円(前年度比9.9%増)、営業利益70億円(同23.0%増)を見込む。
M&Aに関しては前向きで、同社が公表している沿革によると、主なM&Aは2001年の高松国際ホテルの全営業を譲受したのを手始めに、2003年に高松スポーツ振興カントリーを子会社化し、香川県のゴルフ場「アルファ津田カントリークラブ」の営業を始めた。
さらに2005年に、旅館くらしき、珈琲館を子会社化、2007年に福岡市の東峰住宅の不動産開発事業を譲受、2008年に福岡市のアーサーヒューマネットの不動産開発事業を譲受するなど相次いで企業や事業を取得。

エンディングビジネスに追い風
同社によると好調なインバウンド(訪日観光客)需要や円安を背景に、国内外投資家の投資意欲は高く投資用不動産への需要は順調で、住むために住宅を購入する実需層の不動産に対する需要も堅調に推移しているという。
ただ今後については、不動産価格の高止まりや金利の動向、消費者物価の上昇などを踏まえ「注意を要する環境である」としている。
他方、霊園や終活ビジネスなどについては、帝国データバンクが2024年12月に公表した『「葬儀業」の倒産・休廃業解散動向(2024年1-11月)』の中で、同バンクは「少子高齢化の進行により、2050年には年間死者数が160万人を超えると予測される多死社会の到来で、終活に代表されるようなエンディングビジネスには追い風が吹いている」としている。
一方で「コロナ禍を機に、少人数の家族葬などの需要が拡大し、葬儀料金の低価格化が進んいるのに加え、異業種からの参入などもあり、経営環境は厳しさを増している」という
穴吹興産は、狙い通り霊園関連事業を事業の柱の一つとして育成することはできるだろうか。
文:M&A Online記者 松本亮一
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