【大黒屋ホールディングス】赤字経営から反転攻勢へ 出張買取事業に参入

ブランド品の買取・販売と質事業を展開する大黒屋ホールディングス<6993>は、出張買取事業への参入に向け、同事業を手がける企業をM&Aで取得する。

コロナ禍や商品在庫の縮小などで業績が悪化し、3期連続の赤字を見込む同社は、経営再建のため2025年12月にファンドの傘下に入った。

これを機に、既存事業の立て直しと並行して、中長期の成長領域の創出に取り組む方針を固めた。出張買取事業への参入はその一環。すでに「複数の候補先と交渉を進めている」としており、反転攻勢に打って出る局面は近そうだ。

事業成長資金を確保

大黒屋ホールディングスは、コロナ禍による需要減少の影響を受け、2021年3月期に営業赤字へ転落した。

その後いったん黒字に回復したものの、リスク回避を目的とした仕入抑制などが響き、2024年3月期に再び営業赤字となった。2025年3月期は赤字が拡大し、2026年3月期も営業損失を見込む。

在庫買取資金の不足に直面する中、財務基盤の立て直しを目的に2025年12月に、SBIホールディングス系の国内投資ファンドであるキーストーン・パートナース(東京都千代田区)を引受先とする約43億6500万円の第三者割当増資を実施し、同ファンドの傘下(保有割合は68.54%)に入った。

これによって経営の最重点課題の一つと位置付ける事業成長資金の確保は、同ファンドからの増資と借入枠の設定により解消した。

今後は既存取引銀行に加え、新規取引銀行からの調達を進めるとともに、質債権(担保価値のある債権)の流動化などを通じて成長投資を支える資金基盤を強化する。

こうした状況を踏まえ、今後は既存事業の立て直しとともに、中長期の成長領域の創出に取り組む。

同社が成長領域として位置付ける事業の一つが出張買取だ。

出張買取は、査定員が顧客の自宅や指定場所を訪問し、その場で査定・買取を行うサービス。自宅に眠る資産に直接アクセスできる点が強みで、同社は今後成長が期待される領域とみる。

事業の立ち上げにあたっては自社単独での参入も検討するが、短期間で事業基盤を構築するため、M&Aの活用を優先する。

現在、出張買取を手がける企業と交渉を進めており、M&A成立後は出張買取機能を軸に、SBIホールディングスをはじめ引っ越し業者などの異業種と連携し訪問件数を拡大する。すでに提携候補先との協議も始めた。

【大黒屋ホールディングス】赤字経営から反転攻勢へ 出張買取事業に参入
大黒屋ホールディングスの業績推移

法人向け金融も新たな収益源に

もう一つの新たな収益源として位置付けるのが、法人向け金融分野だ。

同社は、中小企業の資金調達ニーズの拡大を背景に、質事業に加え、在庫や売掛金を担保とする融資(ABL)や売掛金の買い取り(ファクタリング)などを成長分野とみる。

以前から個人向け質事業を通じて、資金繰りの安定しない個人事業主や中小企業経営者に資金供与を行ってきた実績がある。

今後は、従来の質屋ファイナンスを法人向けに広げることで、法人向けファイナンス領域に参入する。

法人向け金融の拡大に必要な資金や法人ネットワークは、SBIグループやキーストーン・パートナースとの提携により補完する。さらに与信審査機能は、キーストーン・パートナースが持つノウハウを活用して、人材確保を進める。

一方、既存事業では、店舗活性化や在庫拡充による売り上げ回復と、販管費の削減を通じて黒字化を目指す。同時に、予算実績管理を強化するとともに、ガバナンス体制を整備し、安定的に利益を確保できる体制を構築する。

同社はリユース既存事業の強化に加え、出張買取分野でのM&Aによる事業領域の拡張、さらに法人向け金融などの新しい領域へのチャレンジによって「飛躍的な業績伸長を実現する」としている。

営業利益20億円を上積みへ

大黒屋ホールディングスは1915年に、森新治郎商店を創立し、照明器具の製造、販売を開始したのが始まり。

M&Aについては、2009年に投資事業や有価証券投資を主力とするエスビーオーを子会社化したのに続き、2013年に中古品ブランド・チケット買取の大黒屋の親会社であるディーワンダーランド(現 大黒屋グローバルホールディング)を子会社化した。

その後、2015年に中古品買取販売事業などを手がける英国のSPEEDLOAN FINANCE LIMITED(スピードローン・ファイナンス・リミテッド)を傘下に収めた。

ブランド品の買取・販売と質事業を主力として展開しており、現在は同事業が売上高の96.8%を占め、創業時の電機事業は3.2%に留まる。

ブランド品販売を行う大手上場リユース企業のうち質事業を標準機能として店舗展開を行っているのは同社だけで、この事業構成が強みと分析する。

【大黒屋ホールディングス】赤字経営から反転攻勢へ 出張買取事業に参入
大黒屋ホールディングスの売上高構成比

同社は、リユース市場が急速に拡大しており、今後も成長余地が大きいとみる。

高齢者の資産整理(終活、相続)や、若年層の価値観の変化による利用人口の増加に加え、インバウンド(訪日観光客)の増加に伴う免税販売の拡大などが背景にある。

市場規模は2021年から2025年にかけて2兆5000億円~3兆円で推移し、2040年には5兆円規模に達すると予測する。

質業界では、高齢化や業態転換による廃業に加え、買取業者やリサイクルショップによるM&Aの進展もあり、事業者数は減少傾向にある。

一方で、金価格の高騰や物価高による生活資金の一時的な資金需要は拡大しており、質のニーズは底堅い。

こうした環境を踏まえ、同社は質事業を「残存事業者にとって事業拡大の好機」と位置付ける。

2031年3月期に既存事業で売上高300億円(2025年3月期は102億3200万円)、営業利益30億円(同9億400万円の赤字)を見込む。

さらに、出張買取分野でのM&Aで営業利益10億円、法人向け金融などの新規事業で同10億円を上積みする計画(売上目標はいずれも非公表)だ。

資本増強をテコに攻めへ転じた大黒屋ホールディングスが、収益構造の転換を実現できるかが、今後数年の業績回復を左右することになりそうだ。

【大黒屋ホールディングス】赤字経営から反転攻勢へ 出張買取事業に参入
大黒屋ホールディングスの沿革と主なM&A

文:M&A Online記者 松本亮一

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