【ジーエヌアイグループ】M&Aによる「中国創薬」「米国生体材料」「国内安定収益」のタッグで成長軌道を描く

ジーエヌアイグループ(GNI)<2160>は、医薬品・創薬・生体材料の研究・開発・販売を手がけるグローバルヘルスケア企業だ。同社のM&Aは単なる企業買収ではなく、中国で創薬、米国で事業化と資金調達、日本で収益基盤を強化するという、国際的な役割分担を志向した戦略的な「垂直統合」モデルと位置づけられる。

中国ベンチャーのM&Aで始まった創薬ビジネス

同社が手がけるM&Aの原点は中国にある。GNIは2011年7月、当時持分12%を保有していた北京コンチネント薬業の株式を追加取得し、持ち株比率を51%に引き上げて子会社化した。当時の北京コンチネントの売上高や利益規模は小さかったため、取得価額は約1億6800万円と安く、財務上の負担は軽かった。典型的な「先物買い」で、短期的な業績寄与を期待する案件ではなかったと言える。

買収理由は、新薬の製造・開発拠点を中国国内に確保するため。当時、GNIは特発性肺線維症治療薬「F647」について、中国当局への承認申請を進めており、原薬から製剤まで一貫して対応できる体制が必要だった。北京コンチネントは北京空港に近い工業団地に立地し、製造拠点としての要件を満たしていた。

しかし、この買収の狙いは製造設備の確保にとどまらない。2011年当時、中国は治験コストの低さや患者数の多さ、規制当局との実務的な対話の進展といった点で、創薬・臨床開発の拠点として大きな魅力を持っていた。GNIは北京コンチネントを子会社化することで、単なる工場ではなく、創薬と臨床開発を自社グループ内で完結させる拠点を手に入れようとしたのである。

失敗に学び、中国では「製造」から「創薬」へ

この判断の背景には、直前の失敗があった。GNIは2008年、現地ジェネリック医薬品メーカーの上海衡山薬業の子会社化を試みたが、現地での化学合成操業許可が取得できず、2011年に計画を中止している。大量生産を前提とした製造業型M&Aが、中国の規制環境ではリスクが高いことを認識したGNIは、中国で狙うべきは「製造」ではなく「創薬と臨床開発」だと判断した。

北京コンチネント買収は、その戦略転換を象徴する一手だ。

その後、同社はGNIグループの中核子会社として育成され、特発性肺線維症治療薬「アイスーリュイ」の承認と販売や、肝線維症治療薬「F351」の臨床後期開発を担う存在へと成長していく。

2022年以降は北京コンチネントを中核とする創薬事業は、ナスダック上場企業Gyre Therapeutics(旧Catalyst Biosciences)との事業統合を通じて、グローバルな資本市場と直結する。

結果として、2011年の北京コンチネント買収は、金額や当時の業績規模とは裏腹に、GNIの運命を決定づけたM&Aだった。中国を創薬拠点とし、そこで生まれたパイプラインを世界市場につなぐという現在のビジネスモデルは、この買収から始まっている。

米国企業のM&Aで創薬資産をグローバル展開

GNIは2017年4月、米国カリフォルニア州の生体材料メーカーBerkeley Advanced Biomaterials, Inc.を買収した。約5850万ドルで70%の持ち分を確保したもので、当時の為替レートでは約65億円規模に相当する。これはGNIが米国で生体材料(代替骨等)事業を構築する初の大型M&Aだった。

この買収の狙いは、GNIが従来強みとしていた創薬・医薬品開発に加え、医療機器領域(メドテック)の事業化基盤を確保することだった。中でも生体材料は比較的安定した収益源となるため、売上とキャッシュフローを下支えする戦略的な位置づけである。

その後、GNIは2020年12月に米国子会社GNI USAを通じて、Berkeley Advanced Biomaterialsを完全子会社化した。これにより米国におけるメドテック・生体材料事業をGNIの中核事業と位置づける転換点となった。

創薬資産を上場企業に移し、資本市場と接続

2022年12月、GNIは米国子会社GNI USAを通じて、ナスダック上場企業Catalyst Biosciences, Inc.の株式85.18%を取得し、連結子会社化すると発表した。GNIは中国子会社である北京コンチネントの株式を現物出資し、Catalyst株式の取得対価とするスキームを採用。Catalystを通じてナスダック市場での資金調達が可能となった。

さらに、GNIは肝線維症治療薬候補「F351」に関して、北京コンチネントが保有していた中国以外の権利をCatalyst側に移転する契約を組み込んだ。その結果、「F351」を含む創薬資産をナスダック上場企業で開発・成長させる体制が整った。

この事業統合は2023年10月末に完了し、CatalystはGyre Therapeutics, Inc.(GYRE)に社名変更し、ナスダック市場での取引を開始した。これによりGNIは、米国における創薬開発のグローバルプラットフォームを手に入れたと言える。

米国メドテックの強化と日本での収益基盤づくり

2023年9月、GNIは米国ナスダック上場企業のElutia Inc.から、オーソバイオロジクス(整形外科で体内に自然に存在する細胞、タンパク質、血液成分などを利用して、骨や軟骨、皮膚などの組織の修復・再生を促進する治療法や製品)関連の受託製造事業を譲り受けると発表した。

これはBerkeley Advanced Biomaterialsの事業を補完・強化するものであり、メドテック・生体材料事業の製造キャパシティと商材ポートフォリオの拡大を意図したものだ。

国内では、2025年12月29日に歯科技工事業を手がけるZOO LABOの株式を取得し、連結子会社化した。取得資金については、同7月に実施した海外公募で調達した資金を充当したと同社は説明している。ZOO LABOは、安定した需要がある歯科技工物の作製と、CAD/CAM(コンピューター利用設計・製造)などのデジタル技術を強みとする企業だ。

この買収は、GNIの国内メドテック領域における収益基盤の強化とデジタル化推進による高付加価値化を目的としている。日本市場で歯科技工事業を拡大することは、収益の安定化と日本発キャッシュフローの強化という意味を持つ。

M&Aで組み上げた成長モデル

GNIのM&A戦略を国別に整理すると、中国では創薬と臨床開発、米国では資本市場と事業化、日本では収益基盤の構築という役割分担が浮かび上がる。

2011年の北京コンチネント買収を起点に形成された創薬資産は、ナスダック上場企業との事業統合によってグローバル資金市場と接続された。

米国ではメドテック事業も拡充し、日本では歯科技工という安定した医療分野に足場を築いた。

【ジーエヌアイグループ】M&Aによる「中国創薬」「米国生体材料」「国内安定収益」のタッグで成長軌道を描く
GNIのグローバルビジネスモデル(同社ホームページより)
GNIのグローバルビジネスモデル(同社ホームページより)

GNIのM&Aは単発の買収ではなく、機能を分散しながらも連携させる「垂直統合モデル」として構成されている。創薬領域では資本市場を活用して財務リスクを分散し、生体材料やデジタル歯科技工といった事業で安定収益を確保する。I創薬ベンチャーが陥りがちな開発コストによる資金ショートを回避できる構造だ。研究開発、資本市場、収益事業をM&Aで結びつけた点に、同社のビジネスモデルの特徴がある。

イン・ルオ社長兼最高経営責任者​(CEO)は自社ホームページで、バイオテックのベンチャー企業から創薬、開発、製造、商業化に至るまで複数の子会社や関連企業が連携するバイオ医薬品企業へと進化する構想を描いてきたと述べている。今後は「F351」の新薬承認申請(NDA)の行方に加え、GNIが次世代創薬の中核として米国で立ち上げ、育成してきた標的タンパク質分解(TPD)創薬ベンチャーのCullgenによるがん治療薬の臨床開発の進展、日本国内における事業基盤の拡大に注力する方針だ。その原動力として、M&Aが引き続き重要な役割を果たすことは間違いない。

同社は2025年7月、新株発行により、上場以来最大規模となる125億9000万円の資金調達を実施。そのうち、60億7000万円をM&Aに割り当てる方針を明らかにしている。買収資金も整った。グループ成長のため、活発なM&Aが続きそうだ。

文・写真:糸永正行編集委員

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