【松屋フーズHD】つけ麺の有力チェーンを買収、牛丼・とんかつに次ぐ「第3の柱」になるか?

牛丼御三家の一角を占める松屋フーズホールディングス(HD)。売上高は1500億円を超える外食大手だが、意外にもM&Aの経験はほぼ皆無で、自力での成長を貫いてきた。

そんな同社がついに買収に乗り出した。ターゲットはラーメン業態。折しも今年は創業60年の節目でもある。新たな成長をどうたぐり寄せようとしているのか。

「六厘舎」「舎鈴」の松富士を91億円で買収

松屋フーズHDは12月15日、つけ麺「六厘舎」、「舎鈴」を中心にラーメンチェーンを展開する松富士(東京都千代田区)を買収すると発表した。買収額は91億円。年明け1月5日には予定通りに、全株式を取得し、完全子会社化した。併せて同日付で松屋フーズの瓦葺一利社長が松富士の社長に就いた。

松富士の2025年6月期業績は売上高18%増の100億円、営業利益25%増の4億100万円。創業は2005年で、関東エリアを主体に全9ブランド・120店舗(2025年11月末)を運営し、関西にも2店舗を持つ。埼玉県所沢市にセントラルキッチン(工場)を保有する。

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松富士の旗艦ブランドの一つ、「舎鈴」(写真は川崎市内)

ラーメンを「第3の柱」として強化

旗艦ブランドの「六厘舎」、「舎鈴」はつけ麺の有力店として知られる。「六厘舎」は羽田空港や東京駅など都内に5店舗、「舎鈴」はオフィス・商業施設、路面、ロードサイト(幹線道路沿い)に69店舗を出店する。つけ麺のほか、まぜそば、タンメンなどの店舗も手がける。

松屋フーズHDとして買収の目的は何か。ラーメン業態への本格進出に尽きる。これにより、牛丼「松屋」、とんかつ「松のや」に次ぐ“第3の柱”として強化する姿勢を鮮明にした形だ。

松富士については海外を含めて未進出エリアでの出店余地が大きいとし、商品開発・店舗運用技術の相互活用など、総合的な相乗効果の創出を見込む。

松屋フーズHDは2025年7月末、初のラーメン専門店「松太郎」をオープンしたが、これ以前からある中華料理「松軒中華食堂」と合わせてもラーメン業態は10店舗余りにとどまっていた。

昨年12月時点の国内店舗総数は1412。内訳は牛丼(牛めし)1169店、とんかつ194店、その他49店だったが、今回の買収でラーメンが一気に抜け出す。

松屋フーズHDの2025年3月期業績は売上高21%増の1542億円、営業利益17%減の44億円。牛丼が売上高の78%を占め、とんかつが14%で続く。

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現状打開へM&Aの封印を解く

牛丼御三家といえば、「すき家」を展開するゼンショーホールディングス、「吉野家」の吉野家ホールディングス、そして松屋フーズHDだが、牛丼への依存度は異なる。

全売上高が1兆円を超えるゼンショーHDにおいては26%(2025年3月期)に過ぎない。吉野家HDは67%(同)だが、松屋フーズHDよりも依存度が10ポイントほど低い。

ゼンショーHDは「すき家」、回転ずし「はま寿司」(売上構成22%)を両輪に、幅広い業態の外食事業を海外を含めて展開する。

2023年にはすしの持ち帰り店を展開する英国企業を約870億円で買収したほか、ハンバーガーの「ロッテリア」(店名は現在、ゼッテリア)を傘下に収めた。

吉野家HDは「吉野家」、うどん専門店「はなまるうどん」に続く第3の柱にラーメンを据え、近年、M&Aを活発化している。

一方、松屋フーズHDがかねて課題としてきたのが新業態の育成だ。ラーメンを含め、すし、カレー、ステーキ、カフェ、パスタ、弁当・総菜など多様な業態を手がけてきたとはいえ、事業の柱としては力不足だったのが実情。こうした中、現状打開の起爆剤として繰り出したのがM&Aに他ならない。

実は、松屋フーズHDとしてM&Aを手がけるのは20年ぶり。2006年、民事再生手続き中だったコバヤシフーズインターナショナル(当時、東京都台東区)から回転ずし、持ち帰りずしなどの事業を取得して以来となる。この一件を除き、今日までM&Aを封印したままだったのだ。

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松屋フーズHDが昨年7月にオープンしたラーメン専門店「松太郎」(東京・西新宿)

ラーメン、外食の“ホットコーナー”に

外食分野で目下、M&Aのホットコーナーの様相を呈するのがラーメン。外食の他の業態と比べて寡占化が進んでおらず、シェア拡大の余地が大きいうえ、インバウンド(訪日客)需要とあいまって海外展開が期待できるためだ。

昨年11月にはラーメンチェーンの魁力屋がつけ麺専門店「三田製麵所」を運営するエムピーキッチンホールディングス(東京都渋谷区)を50億円で買収すると発表した。これを上回ったのが松屋フーズHDによる松富士の買収で、91億円に上った。

昨年来の外食関連のM&Aで後者が2位、前者が3位を占める。

金額トップは串カツ田中ホールディングスによるイタリアンレストランの買収(95億円)に譲ったものの、ラーメンをめぐる陣取り合戦の激しさが浮き彫りになった。

創業60周年、M&Aのスイッチが入る

松屋フーズHDは1966年に中華飯店「松屋」を都内に開店したことに始まり、その後、牛丼に主軸を移した。2013年に牛丼「松屋」1000店舗、16年にとんかつ「松のや」100店舗を達成した。今年は創業60年の節目にあたる。

足元の2026年3月期は売上高16%増の1796億円、営業利益13増の50億円を見込む。続く27年3月期は今回買収した松富士の業績がフルに寄与することから、売上高2000億円が一気に視野に入る。

M&Aについては「経営計画上、重要事項ととらえ、シナジー(相乗効果)のある案件について取り組む」としてきたが、今回、そのスイッチが入った。中国、台湾、ベトナムなどの海外展開もこれからが本番。国内外で第2、第3のM&A案件が出番をうかがうことになりそうだ。

【松屋フーズHD】つけ麺の有力チェーンを買収、牛丼・とんかつに次ぐ「第3の柱」になるか?

文:M&A Online

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