【MIRARTHホールディングス】宿泊特化型ホテルの開発に拍車  M&Aも活用

不動産中堅のMIRARTHホールディングス<8897>は、宿泊特化型ホテルの開発に拍車をかける。

今後3年間(2026年3月期~2028年3月期)にホテル事業に50億円を投じ、進出エリアの選定や、オペレーション力の強化、人員確保などに取り組むのに加え、M&Aも活用することで客室数の拡大を目指す。


ホテル事業で地域活性化や地方創生に貢献

ホテル事業は、子会社のタカラレーベン(東京都千代田区)が2022年3月に大阪市に第一号ホテルとして「HOTEL THE LEBEN OSAKA」を開業したのが始まり。

過去4年間(2022年3月期~2025年3月期)の経営計画の中でも、ホテル運営事業の確立を目標に掲げており、2024年4月には栃木県那須町にホテル「那須 無垢の音」を開業するなどの成果があった。

同ホテルは、3万5000平方メートルを超える自然の中で宿泊できる施設で、1棟ごとに分かれた80平方メートル以上の客室をはじめ、敷地内には樹木や浅い池などからなる水庭や、地元の食材を中心としたフレンチレストランなどを備えている。

こうした施設の稼働などにより、2025年3月期のホテル事業を含むその他事業(ホテル事業、建設事業、介護事業)の売上高は69億2700万円、粗利益は3億7300万円となっており、計画初年度の2022年3月期と比べ売上高は2.39倍、粗利益は4.05倍と大きく伸びた。

今後のホテル事業拡大の一つの手段となるM&Aについては、同社では対象企業や事業の詳細を明らかにしていないが、ホテルそのものをはじめ、ホテルの運営を手がける企業やホテル関連事業などの取得が考えられる。

この他に、既存ホテルの稼働率の上昇や、SNSの有効活用などをホテル事業拡大の課題として上げており、こうした分野でのM&Aの活用も見込めそうだ。

同社ではホテル事業を通じて、各地域の地域活性化や地方創生などに貢献するとともに、企業ビジョンである「幸せを考える。幸せをつくる」の実現を目指すとしている。

これまでのM&A件数は10件超

MIRARTHホールディングスは、1972年に東京都内で設立された宝工務店が前身。1982年に賃貸事業を始めたのに続き、1994年に自社分譲マンション「レーベンハイム」シリーズの販売を、2010年に自社施工による戸建て住宅の販売を、2013年にはエネルギー事業を開始し業容を拡大していった。

現在は、総売上高の90%ほどを占める不動産事業(新築マンション分譲、リニューアル再販、新築戸建て分譲、賃貸・管理、不動産仲介など)のほかに、同5%ほどのエネルギー事業(太陽光、風力、バイオマス発電所の開発、運営、売電、保守など)、同0.5%ほどのアセットマネジメント事業(再生可能エネルギーの発電施設やオフィスビルの管理運用など)、同3.5%ほどのホテル事業などのその他事業で事業を構成している。

同社が公表している沿革によると、初めてのM&Aは2004年の不動産仲介事業を手がけるリライブルレーベンの子会社化で、その後、2009年の介護事業のアズパートナーズの譲渡、2011年の不動産販売、仲介業のタカラライブネットの譲渡を経て、2012年に賃貸管理事業の宝ハウジングを子会社化した。

さらに2014年の不動産販売、仲介のオアシス、同年の建設、不動産事業の日興建設、2015年の不動産事業のライブネットホーム、同年のマンション経営や不動産売買事業の住宅情報館と次々と子会社化を実施。

直近では2023年に太陽光発電などの再生可能エネルギー発電設備への投資を行うタカラレーベン・インフラ投資法人をTOB(株式公開買い付け)で非公開化しており、これまでのM&A件数は10件を超える。


【MIRARTHホールディングス】宿泊特化型ホテルの開発に拍車  M&Aも活用
MIRARTHホールディングスの主なM&A

商品企画力に強み

MIRARTHホールディングスによると、新築分譲マンション市場は、原材料高や人手不足による建築コストの高騰などにより販売価格は上昇しているものの、依然として住むために住宅を購入する実需層の購買意欲は高く、分譲マンション販売は堅調に推移しており、今後も「新築分譲マンション市場は良好な需給バランスの状態が続くと考えている」という。

また、同社は50年以上の実績に基づき構築された地域ネットワークと、地域の実情やニーズを踏まえた商品企画力が自社の強みと分析する。

この強みを活かして、新築分譲マンション事業をコア事業として、新築戸建て分譲やリニューアル再販、不動産賃貸、不動産管理などの事業を総合的に展開。今後3年間にこうした事業に250億円を投じ、同事業で安定的な営業利益の創出を目指す。

エネルギー事業は、不動産事業に次ぐ、事業の柱として安定収益を得るための投資を実施する計画で、今後3年間に200億円を投じ、太陽光以外の安定電源を確保することにより安定的な電力供給体制を構築する。

アセットマネジメント事業は、AUM(運用資産残高)の拡大に取り組み、2025年3月期に3113億円だったAUMを2028年3月期には4800億円に引き上げる。

こうした取り組みで、足元の2026年3月期は、首都圏や地方都市で、新築分譲マンション事業をはじめ、太陽光、風力、バイオマスなどのエネルギー事業が順調に拡大する見通しで、売上高は2164億円(前年度比10.1%増)と3期連続の増加を、営業利益は155億円(同7.9%増)と2期ぶりの増加を予想する。

さらに3年後の2028年3月期には、売上高2452億円(2025年3月期比24.7%増)、営業利益166億5000万円(同15.9%増)と着実な成長を見込む。

ホテル事業でのM&Aの内容によっては、これら計画を上回ることも考えられる。MIRARTHホールディングスはどのようなM&Aに踏み切るだろうか。

【MIRARTHホールディングス】宿泊特化型ホテルの開発に拍車  M&Aも活用
MIRARTHホールディングスの業績推移
2026/3は予想、2027/3、2028/3は計画

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文:M&A Online記者 松本亮一

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