【SRSホールディングス】食のM&A、ターゲットは「激戦地」の寿司チェーン

「和食さと」などを全国展開する外食チェーン大手のSRSホールディングス(旧サトレストランシステムズ)<8163>は、2000年代後半から積極的なM&A戦略を展開してきた。事業譲渡による整理から始まり、業態補完による基盤強化を経て、近年は寿司チェーンを軸とした全国展開に舵を切っている。

その軌跡を振り返ると、同社の成長戦略の進化が浮かび上がる。

M&Aで事業ポートフォーリオを拡大

リーマン・ショック後のSRSによるM&Aは「売り」で始まった。2008年にグループ配送事業を明治乳業傘下の京阪神流通に譲渡。外部委託による物流効率化を追求した。

2010年には中国市場の成長を見込んで設立した現地和食ファミリーレストラン子会社の上海莎都餐飲管理有限公司(上海市)株を香港投資会社の統一超商香港控股有限公司に譲渡し、出資比率を100%から19%に縮小する。成長市場とはいえ海外での単独展開の難しさが浮き彫りになった。

その3年後の2013年に、回転寿司チェーンの「廻転寿司にぎり長次郎」と宅配寿司事業を展開するフーズネット(京都市)を買収。回転寿司と宅配寿司の両事業を獲得し、購買力の強化やコスト削減による収益改善を狙った。

2016年は攻勢の年となった。まず台湾の合弁会社で和食レストラン「和食さと」を運営する統一上都股份有限公司(台北市)を完全子会社化し、アジア市場で「和食さと」を直接展開できる体制を整えた。

同年夏にはレストラン経営のUG・宇都宮(大阪市)から、定食レストランチェーンの「めしや宮本むなし」事業(売上高33億円規模、71店舗)を取得。駅前・繁華街型の店舗網を手に入れ、自社が主力としてきた郊外型和食レストランとの補完関係を築いた。

さらに同チェーンの旗艦店「めしや宮本むなしJR名古屋駅前店」ビルを所有するTWO SIX(名古屋市)も取得し、店舗営業の安定確保も図った。

「食の大衆路線」を鮮明に

「選択と集中」を忘れないのも、SRSの特徴だ。2017年には和食レストラン「すし半」13店舗を、同業の梅の花<7604>に譲渡。高価格帯の和食チェーンを切り離した。

その一方で、大衆的な低価格業態に集中する方針を鮮明にした。2019年にエイチ・ツー・オーリテイリング<8242>傘下のうどん・そば店を展開する家族亭(大阪市)と「ドトールコーヒー」や「大釜屋」などのフランチャイジー事業と直営店事業を手がけるサンローリー(同)を子会社化する。

外食企業としての裾野を広げつつ、関西地区でのドミナント(地域内での支配力)を強める動きだった。

2023年には唐揚げテイクアウト専門店「鶏笑」を運営するNISを買収。国内外に約250店舗を持つブランドを手に入れ、中期経営計画の重点課題であった中食需要への対応を具体化したのだ。少子高齢化や外食控えの傾向をにらみ、外食と中食の垣根を越えたポートフォリオ形成に踏み出した。

本格化する「寿司シフト」

直近の動きを見ると、同社は「寿司シフト」を進めている。2024年には「うまい鮨勘」などの寿司チェーンを東北中心に国内31店舗、マレーシア、香港で海外2店舗を展開するアミノ(仙台市)を65億円超で買収。SRSグループは主に関西、関東、中部で店舗を展開していたが、アミノの買収で仙台を拠点とした31店舗を傘下に加え、東北地区へ本格進出を果たした。

2025年9月16日には鳥取・島根の両県で回転寿司6店舗を運営する「すし弁慶」を11億円超で買収すると発表。境港の鮮魚調達力と「デカネタ」に強みを持つ山陰地方の地域密着型ブランドを傘下に加えた。

これにより「にぎり長次郎」「うまい鮨勘」と合わせ、寿司チェーン群による地域横断型の展開が可能になった。

SRSが注力する「寿司シフト」には明確な強みがある。第一に、地域ブランドの組み合わせだ。「にぎり長次郎」(関西)、「うまい鮨勘」(東北・首都圏)、「すし弁慶」(山陰)と、それぞれ地域に根ざした強力なブランドをグループに取り込み、地場の鮮魚調達力や顧客基盤を活かしている。地域密着型の寿司チェーンは固定客が多く、ブランド力が価格競争を緩和する点が魅力だ。

第二に、調達と物流の統合効果である。寿司業態では「ネタが命」で、魚介類の調達力が収益性を左右する。SRSは各ブランドの強みを横断的に活用し、共同仕入れやセントラルキッチン化によるコスト削減を見込める。鮮魚調達の多様化はリスク分散にも役立つ。

競争が激しい寿司チェーン業界でどう生き残るか?

一方でリスクも存在する。寿司チェーンの競争環境は厳しさを増している。チェーン店舗データベースを手がける日本ソフト販売によると、2025年7月時点の全国15チェーンの寿司店舗数合計は前年の3665店舗と比較して、0.5%(20店舗)減の3645店舗となった。

3年連続の減少で、国内寿司チェーンが飽和状態に達していることが分かる。

トップのスシローが前年比1.4%増の653店舗、2位のはま寿司が同5.7%増の644店舗、3位のくら寿司が同±0%の551店舗と、増加または横ばいだったことから、500店舗を超える大手3社の強さが際立つ。

2025年3月末時点でSRSが展開する寿司チェーン(宅配寿司を除く)は、「にぎり長次郎」が72店舗、「うまい鮨勘」「回転すし まるくに」「銀座鮨正」などのアミノ系列が32店舗の、計104店舗。買収を発表した「すし弁慶」を合わせても110店舗と、上位大手との差は大きい。

SRSホールディングスの外食・中食出店一覧表(同社決算資料より)

【SRSホールディングス】食のM&A、ターゲットは「激戦地」の寿司チェーン

それでなくても、過当競争の結果、寿司チェーンの売上は伸び悩んでいる。一般社団法人日本フードサービス協会の「外食産業市場動向調査」によると、2024年通年で「持ち帰り米飯/回転寿司」の対前年売上高成長率は2.6%と、パブ・居酒屋や喫茶店などを含む全体平均の8.4%を大きく下回り、全13業種中最低だった。

イクラやサーモンといった人気ネタをはじめとする鮮魚価格の高騰や人手不足など、寿司業態のコスト上昇リスクも無視できない。

SRSにとって、さらなるM&Aによる調達網一体化でもたらされる「規模の経済(スケールメリット)」によるコストダウンと、各チェーンの特徴を生かした価格政策を含むマーケティングでブランド戦略を通じた客単価の引き上げを追求できるかが、成長のカギとなるだろう。

文:糸永正行編集委員

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