【ヤマダホールディングス】テック企業M&Aで小売りの域を超える成長へ

家電量販店最大手のヤマダホールディングス<9831>が、テック分野(デジタル技術を活用した事業)での事業成長を新たな柱とする戦略を打ち出している。

これまでの家電を核に住宅や環境、金融へ事業領域を広げる「くらしまるごと」戦略を基盤としつつ、さらなる成長に向け小売業の域を超えた取り組みを進める。

AI(人工知能)やデータ活用などデジタル分野の取り組みを強化し、テック企業との資本提携やM&Aを含めたオープンイノベーション(社内外の技術やサービスを組み合わせて革新的な価値を創り出す取り組み)を進める方針だ。

2030年3月期を最終年とする中期経営計画では、「くらしまるごと」戦略の総仕上げを目標に掲げており、2026年1月には住宅設備機器メーカーのトクラスを子会社化した。

今後の事業成長の柱となるテック企業のM&Aに、いつ踏み切るのかが注目される。

データ活用で新収益モデルを構築

「くらしまるごと」戦略は、家電販売を起点に住宅、家具、リフォーム、住宅ローン、家電リユースなど生活関連分野へ事業領域を広げる取り組みだ。

周辺企業のM&Aや新規事業の立ち上げを通じ、生活に関わるサービスを提供する事業モデルの構築を進めてきた。

ただ、家電市場は2020年前後の巣ごもり需要の反動などで伸び悩んでおり、少子高齢化や人口減少などの情勢を踏まえると大きな成長が見込みにくい状況にある。

このため同社は、さらなる成長には小売業の域を超えた事業展開が必要と判断し、AIやデータ活用を軸とするテック分野を新たな成長領域に位置づけた。

成長分野への投資やM&A後の成長戦略の明確化を通じ、テック企業としての成長モデルの確立を目指す。

同社は家電、住宅、家具、リフォームなどの販売網に加え、EC(電子商取引)やテレビ通販を含めた国内外1万1000店超の販売チャネルと、約6000万件の会員データ(2024年3月時点)を保有する。

購買履歴や店舗実績、商品データなどグループのビッグデータを活用し、広告や販促を担うリテールメディア事業の拡大を進める。

広告収入を新たな収益源として育て、将来的に年商160億円規模の事業への成長を見込む。

さらにテック企業としての成長を支える取り組みとして、AIロボティクス技術の活用も進める。

AIロボットによる遠隔接客サービスの導入や、接客スキルのデータ化を進め、顧客接点の拡大と品質向上を目指す。

こうした取り組みの過程で、テック企業との提携や買収に踏み切る可能性がある。

M&Aで住宅・環境・金融へ事業領域を拡張

ヤマダホールディングスは1973年、群馬県前橋市で家電販売店「ヤマダ電化サービス」として創業した。

その後、九州や東北、中京、中国・四国、近畿へと店舗網を広げてきた。

近年は家電販売を核とする事業基盤の拡張に向け、M&Aを積極的に活用してきた。

2010年以降に適時開示したM&A案件を見ると、2011年には注文住宅のエス・バイ・エルをTOB(株式公開買い付け)と第三者割当増資で子会社化し、住宅事業に本格参入した。

2012年には住宅設備機器メーカーのハウステックホールディングスを傘下に収めたほか、家電量販店のベスト電器を子会社化し、販売網の拡充を進めた。

その後も2017年に住宅リフォームのナカヤマ、2020年には注文住宅のレオハウスやヒノキヤグループを取り込むなど住建分野の強化を加速した。

一方、2018年に家財保険のパーソナル少額短期保険、2021年に建築系廃棄物中間処理の三久、2023年に産業廃棄物処理のあいづダストセンターを子会社化するなど、金融や環境分野にも領域を広げている。

直近では2026年1月、システムキッチンやシステムバス、洗面化粧台を主力製品とする住宅設備機器メーカーのトクラスを子会社化し、住建事業を強化した。

【ヤマダホールディングス】テック企業M&Aで小売りの域を超える成長へ
ヤマダホールディングスの沿革と2010年以降に適時開示されたM&A

こうしたM&Aなどによって事業の多角化に取り組んだ結果、現在は主力の家電販売の「デンキ事業」が売上高の約78.5%を占め、戸建て住宅や住宅設備などを扱う「住建事業」が約17.6%、家電リユースやリサイクルなどの「環境事業」が約2.1%となっている。

このほか、住宅ローンや少額短期保険などを手がける「金融事業」(売上高構成比約0.3%)と、小規模な家電小売店の支援や旅行業などを手がける「その他事業」(同約1.5%)で事業を展開する。

【ヤマダホールディングス】テック企業M&Aで小売りの域を超える成長へ
ヤマダホールディングスの売上高構成比

業績回復と資産効率改善で中計達成狙う

ヤマダホールディングスの業績は回復傾向にある。同社は2022年3月期から2024年3月期まで3期連続で、減収減益が続いていた。

2021年3月期は、コロナ禍に伴う巣ごもり需要などを背景に、売上高、利益ともに高水準となったものの、その後は反動で需要が落ち着いたことに加え、物価上昇や実質賃金の低下に伴う消費者の節約志向の高まり、エネルギー価格や原材料価格の上昇などが重なり、業績が振るわなかった。

2025年3月期は、個人消費の持ち直しによる耐久消費財の需要増加や、エアコンなどの季節家電販売の伸長などにより、売上高は1兆6290億6900万円(前年度比2.3%増)、経常利益は480億4500万円(同2.1%増)と増収経常増益に転じた。

この流れを踏まえ、2026年3月期は売上高が4.2%増、経常利益が7.2%増と、2期連続の増収経常増益を見込む。

中期経営計画の最終年の2030年3月期は売上高2兆2000億円、経常利益1000億円を目指す。

【ヤマダホールディングス】テック企業M&Aで小売りの域を超える成長へ
ヤマダホールディングスの業績推移

同社はこの中期経営計画の達成に向け、2026年2月に在庫処分と資産売却による資産効率の改善策を打ち出した。

家電市場はエコポイント特需の反動や、人口減少など構造変化が続いており、同社は店舗の統廃合など構造改革を進めてきた。

こうした過程で生じた在庫を処分することで、2026年3月期の売上総利益、営業利益、経常利益はそれぞれ約240億円押し下げられる見込み。

一方、土地や建物など遊休資産の売却も進めており、2026年3月期に約170億円、2027年3月期に約100億円、合計約270億円の売却を計画している。

売却で得た資金は有利子負債の返済に充て、金利上昇局面での利息負担の抑制や資金効率の改善につなげる。

こうしたバランスシートの見直しを通じて財務体質を整え、売上高2兆2000億円、経常利益1000億円を掲げる中期経営計画の達成につなげる考えだ。

今後、テック企業との資本提携やM&Aがどの段階で具体化するのか。その動向が同社の成長戦略に影響を与えそうだ。

文:M&A Online記者 松本亮一

【M&A速報、コラムを日々配信!】
X(旧Twitter)で情報を受け取るにはここをクリック

【M&A Online 無料会員登録のご案内】
6000本超のM&A関連コラム読み放題!! M&Aデータベースが使い放題!!
登録無料、会員登録はここをクリック

編集部おすすめ