DXソリューションの「ARアドバンストテクノロジ」AI駆動開発を本格化 時価総額数倍を目指す

DX(デジタルトランスフォーメーション)ソリューション(課題解決)企業のARアドバンストテクノロジ<5578>は、エンジニア不足に対応し、AI(人工知能)駆動開発を本格化する。

AI駆動開発は、品質チェックをAIがアシストすることで、1人のリード開発者(技術責任者)が担える範囲を増大させる手法。

同社では同開発体制を拡充することでオーガニック成⾧(内部の経営資源を活用した成長)を促進するとともに、M&Aを併せて進めることで非連続な成長を狙う。

これらを通じ、早期に時価総額100億円から数百億円規模への拡大を目指す。

大手SIerと一線を画す

ARアドバンストテクノロジはクラウド技術と、データ・AIを活用したDXソリューション事業を展開しており、自社を「大手システムインテグレーターや専業のクラウドインテグレータと一線を画し、独自のポジショニングを獲得している」と位置付けている。

これまでに配送コストの見える化システムや、在庫やメンテナンスの状況を把握するシステムなどを開発。さらにファイルサーバ管理システムの運営コスト削減や、コンタクトセンターの品質向上など多様なプロジェクトを手がけてきた。

こうしたシステム開発は従来、エンジニアが中心となって対応してきたが、同社では蓄積してきたAI技術開発ノウハウやAIエージェント(自律的に行動し結果を出すAIシステム)を活用したAI駆動開発を推進することで、エンジニアを増やさず事業拡大に取り組むことにした。

同社では「これまで3人で開発していたアプリケーション開発を、AIエージェントを活用することで、1人で作成し3倍のアウトプットを生み出すことが可能」と見込む。

経済産業省の資料によると、ITエンジニアは2030年には最大で約79万人不足するとの試算がある。

M&Aで既存事業強化と新領域開拓へ

一方、M&Aでは、既存事業の強化と新ビジネス領域の獲得を目的に、テックベンチャーやAIベンチャーなどの100人超規模のIT企業を対象に検討を進める。

良質な案件の探索・選別のため、社内にM&A推進チームを設置し、候補先企業との接点を増やし、企業価値向上につながる案件の発掘を強化している。

また、買収後はPMI(M&A後の経営統合プロセス)に力を入れる計画だ。

2024年に子会社化したシステムの構築や運用などを手がけるピー・アール・オーでは、100日プランを中心としたPMIによって、両社の強みを活かしたシナジー創出の基盤が整いつつあるという。

新たなM&Aでも同様の取り組みが見込まれる。

DXソリューションの「ARアドバンストテクノロジ」AI駆動開発を本格化 時価総額数倍を目指す
ARアドバンストテクノロジの沿革と主なM&A

生成AI・クラウド市場の拡大が追い風に

ARアドバンストテクノロジは2010年に設立。

2014年にファイルサーバ容量可視化・分析システム、2017年にはAIチャットボットサービスの提供を開始するなど業容を拡大してきた。

同社は大手システムインテグレーターと異なり、クラウドやAIで専門性が高い領域を中心に顧客のDXニーズに対応している。

また専業のクラウドインテグレータとも異なり、クラウドのインフラ提供に留まらずコンサルティングなども手がけているのが強みだ。

2025年8月期は、売上高141億5200万円(前年度比27.2%増)、営業利益8億2900万円(同96.7%増)と大幅な増収営業増益となった。AI開発案件などの受注が伸びたことがけん引した。

2026年8月期も13.1%の増収、16.4%の営業増益と、2期連続の増収営業増益を見込む。

DXソリューションの「ARアドバンストテクノロジ」AI駆動開発を本格化 時価総額数倍を目指す
ARアドバンストテクノロジの業績推移

同社では国内クラウドサービス市場は、2022年~2028年の年間平均成長率は16.3%で推移し、2028年の市場規模は2023年比約2倍の16兆6285億円に達すると予想する。

また2022年以降の生成AI市場の成長率は年率42%と飛躍的な増加傾向にあり、中長期的にはソフトウエア・ITサービス市場も拡大していくと見る。

AI駆動開発を推進することで、同社がこれらの成長市場の波を捉える可能性は十分にあるだろう。

文:M&A Online記者 松本亮一

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