不動産中堅の「AVANTIA」M＆A戦略を転換　拡大から集約に

愛知県を地盤とする不動産中堅のAVANTIA＜8904＞は、エリア拡大やM＆Aによるグループ拡大などによって、分散傾向にあった人材や資金、設備、ノウハウなどの経営資源を、重要拠点や重点事業に集約する。

国内４商圏（中部圏、関西圏、首都圏、九州圏）で総合不動産サービスを提供していくために、現存する経営資源を適正に配置し、グループ経営を効率化するのが狙いだ。

成長に向けたグループ体制を整備

2025年10月15日に公表した2028年8月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画の中で、戦略転換の方針を打ち出した。

前中期経営計画では2025年8月期に売上高780億円、経常利益30億円を目標に掲げていたが、物件価格の高止まりによる需要の減少などが響き、実績は売上高692億7000万円、経常利益11億4600万円にとどまった。

この反省から新しい中期経営計画では「在庫の適正化と入替えによる採算性の確保」「請負型商品の強化、拡充による提案力、収益力の強化」と並んで、「成長に向けたグループ体制の整備」に取り組むことにした。

今後は、これまで取り組んできたエリア拡大やM＆Aによるグループ拡大施策を見直し、分散していた経営資源を成長拠点や重点事業に再集約していく。

すでに、関西圏の戸建て住宅事業を、京都市から大阪市に至るエリアを中心に展開する方針を固め、この方針に沿って2003年に子会社化した兵庫県内を中心に戸建て住宅の施工を担う巨勢工務店を譲渡した。

巨勢工務店の案件は同社にとって初めとなる譲渡で、事業と経営資源の選択と集中などの中長期的な成長戦略の観点から実施を決断した。譲渡後は関西圏の戸建住宅事業を子会社のドリームホームグループに集約する。

今後こうした取り組みと並行して、請負型商品の強化や採算性の改善などを推進し、中期経営計画最終年の2028年8月期に、売上高850億円、経常利益32億円を目指す。

M＆Aで拠点や事業を拡大

AVANTIAの主力は総売上高の65％ほどを占める戸建て住宅事業で、新築の戸建て住宅や分譲用地の販売、注文住宅の請負などを行っている。

このほかに20％ほどの不動産流通事業（中古戸建て住宅、中古区分マンションの販売、オフィスビル、事業用地の売買など）、10％ほどの一般請負工事事業（建築工事、土木工事など）を展開。

さらに3％ほどのマンション事業（新築の分譲マンションの企画、販売など）、2％ほどのその他事業（リフォーム工事、不動産仲介など）を手がけている。

同社はこれまでM＆Aを積極的に活用しており、沿革によると2003年にサンヨーベストホーム、サンヨーライフネット、巨勢工務店、巨勢雄を子会社化したのを手始めに、2007年に安藤技建、安藤建機から事業を譲受し、2013年に宇戸平工務店を子会社化するなど、M＆Aを通じて拠点と事業の拡大を進めてきた。

前中期経営計画期間中にも、2023年に福岡県で戸建て住宅建設事業を手がけるネクスト-ライフ-デザインと、首都圏で戸建て住宅建設事業を手がける日幸ホールディングスの2社を傘下に収め、2025年8月期の首都圏と九州圏の収益規模が、2022年8期と比べ3倍超にまで拡大するなど成果を上げた。

AVANTIAの主なM＆A

再び拡大路線に舵も

AVANTIAによると、戸建て住宅やマンションは、物件高や建築コストの上昇に伴い物件価格が上昇しており、需要が伸び悩んでいる。

一方、中古物件に対する関心は高まっており、首都圏を中心に中古マンションの需要は堅調で、富裕層、投資家向けの高額物件に対する需要も根強いという。

拡大から集約への方針を打ち出した中期経営計画では、同時に「新たな事業領域、地域への進出やM＆A戦略実行への準備をする」としているほか、新たな人財の獲得、中核人財育成の進展に加え「M＆Aなどによる事業基盤、経営基盤強化も模索する」としている。

経営資源の集約と効率化を達成した後には、再びM＆Aを軸とした拡大路線に舵を切ることもありそうだ。

文：M＆A Online記者 松本亮一

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