2025年、政策金利は0.75%へと引き上げられ、30年ぶりの高水準となった。銀行にとって本来の金利収入が回復する好機だが、将来を見通せばうかうかはできない。
メガバンクはリテールで事業拡充
メガバンクで大きな動きがあったのは国内リテールだ。各行がDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した「総合金融サービス」への転換を進めている。象徴的だったのが、2025年にロボアドバイザーの「ウェルスナビ」が三菱UFJフィナンシャル・グループに子会社化された案件だ。
三菱UFJフィナンシャル・グループは2024年に、ウェルスナビと生命保険、年金、住宅ローンなど、利用者のお金の悩みを解決する総合アドバイザリー・プラットフォーム(MAP)の構築に向けて資本業務提携を締結。2025年にMAP開発の加速と高度化を目的に子会社化を完了させた。これにより、デジタルネイティブ世代に支持されるウェルスナビを取り込み、三菱UFJ eスマート証券を含めた証券サービスを拡充し、新たな顧客との接点も確保した。
他行でも大きな動きが出た。三井住友フィナンシャルグループは、傘下の三井住友カードが主体となって共通ポイントプログラムを運営するCCCMKホールディングスの子会社化を発表、ポイントと決済を軸に顧客を囲い込む「自社主導のエコシステム」を強化する。一方、みずほフィナンシャルグループは近年、楽天グループとの結びつきを強めており、2022年に楽天証券、2024年には楽天カードと戦略的な資本業務提携を行っており、双方のサービス利用を増やすために「みずほ楽天カード」の提供を開始した。
携帯キャリアと真っ向から競合に
こうした動きの前に立ちはだかったのが、大手携帯電話キャリアである。2025年、NTTドコモは4200億円で住信SBIネット銀行の子会社化を決めた。KDDI、ソフトバンク、楽天の先行する楽天グループが銀行・証券・保険のフルラインナップで「楽天経済圏」を強固にする中、KDDIはauじぶん銀行を擁し、ソフトバンクもPayPayブランドの下で金融機能を完全に取り込んでいる。
これにドコモが続いたことで、大手4キャリアが「通信」と「金融」を強力な顧客接点とセットで提供する体制が完成させた。2025年はメガバンクと通信キャリアのライバル関係が鮮明になった年であり、「どの銀行に預けるか」から「どの経済圏(アプリ)で生活するか」という新たなテーマを突き付けたことにもなる。スマートフォンを入口に顧客接点(UI/UX)の差別化が争点になりそうだ。
地銀再編に投資ファンドの存在
地銀も激動の一年だった。融資のみならず、コンサルティングなどのサービス提供をして「地域の総合ビジネス」への転換を急ぐとともに、生き残りをかけた合従連衡の動きが一段と進んだ。千葉銀行と千葉興業銀行の経営統合のように同一商圏内でのM&Aのほか、第四北越フィナンシャルグループと群馬銀行の経営統合では県境を越えた案件も発表された。
これら再編の裏で無視できないのが、投資ファンドの存在だ。千葉銀行の統合劇では、千葉興業銀行の筆頭株主となった投資ファンド「ありあけキャピタル」が促したとされる。地銀に集中的に投資する同ファンドは、企業価値向上を重視しながら、再編も手段とする。2025年は、滋賀銀行、池田泉州ホールディングス、あいちフィナンシャルグループの株式を取得し、大量保有報告書を提出。再編のトリガーになる可能性もあり、動向が注目される。
文:前田 輝
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