ホームセンター最大手の「カインズ」 東急ハンズ以来3年半ぶりのM&A

ホームセンター最大手のカインズ(埼玉県本庄市)は2025年12月下旬に、建築、建設、製造業向けの通販サイト「トラノテ」などを運営する大都(大阪市)を子会社化する。

同社の沿革によると今回のM&Aは、2022年に子会社化した家具、日用品、生活雑貨などを販売する東急ハンズ(現 ハンズ)以来、約3年半ぶりとなる。

プロ市場で独自のビジネスモデルを確立

大都は、建設業などの現場で必要な工具や消耗品などを400万点以上取り扱う業者向け通販サイト「トラノテ」と、工具や塗料などDIY(家具作成や壁紙張りなどの工作や修繕などを自分自身で行うこと)用品の消費者向け通販サイト「DIY FACTORY」を運営。

カインズとは、2017年に資本業務提携を結び、共同でDIY市場の拡大に取り組んできた。

カインズは、建築業などで職人の人手不足が深刻化していることから「必要な道具や材料を早く、確実に手に入れたい」とのプロのニーズが高まっている判断。

大都をグループ化することで、リアルとデジタルを融合させ、プロ市場で独自のビジネスモデルを確立することにした。

今後、カインズの259店舗(2025年10月24日時点)と、トラノテの400万点以上のアイテム、さらに両社のサプライヤーネットワークを活用して、店舗と通販の連携を強化する。

独力で成長してきたベイシアグループ

カインズはベイシアグループに属する企業で、前身の「いせや」から1989年に分社して誕生した。2025年2月末の売上高は5738億円に達する。

M&Aの実績は少なく、同社の沿革によると2022年に家具、日用品、生活雑貨などを販売する東急ハンズ(現 ハンズ)を子会社化したのが初めてで、そのあとも今回の大都まで実績はない。

ベイシアグループはカインズのほかに、グループの母体である「いせや」の事業を引き継ぎ、ショッピングセンターを展開するベイシアをはじめ、作業服や作業用品、アウトドア用品などを販売するワークマン<7564>、カー用品の専門店のオートアールズ、家電専門店と携帯ショップを展開するベイシア電器など31社からなる。

2025年2月期のグループの売上高は1兆1864億円に達する流通大手で、ホームページで「ベイシアグループの最大の特色は、合併や吸収をせずに独力でここまで成長してきたこと」としており、これまでM&Aはあまり実施していない。

直近では2025年5月に、ベイシアとカインズがそれぞれサッカーJリーグクラブチーム「ザスパ群馬」を運営するザスパの株式の25.2%を取得し、ベイシアグループとして50.4%を保有した事例がある。

ホームセンター最大手の「カインズ」 東急ハンズ以来3年半ぶりのM&A
カインズの沿革

M&Aが重要な戦略の一つに

帝国データバンクによると、ホームセンター業界には「M&Aを活用した業界再編や新規事業進出などの動きが目立つ」という。

実際に業界2位のDCMホールディングス<3050>は、2023年にホームセンターのケーヨーを子会社化したのに続き、2025年9月にはホームセンターのエンチョーを子会社化した。

業界3位のコーナン商事<7516>も、M&Aを活用してホームセンター事業に次ぐ未来の成長を担う新たな経営の柱の発掘に取り組んでいる。

同社は今回のカインズによるプロ市場の開拓と同様に、建築、塗料、作業用品などの職人向け資材を専門に扱う店舗「コーナンPRO」の出店にも力を入れている。

このほか、ジョイフル本田<3191>は、業界再編や事業承継などにつながる案件を対象に複数のM&Aを実施する方針を打ち出しており、コメリ<8218>も中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)に「機動的に実行できるM&A投資の準備資金」を設けるなど、M&Aに前向きな姿勢を見せている。

独力で規模を拡大してきたベイシアグループの中にあって、ホームセンター事業ではM&Aが成長を左右する戦略の一つになりそうだ。

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文:M&A Online記者 松本亮一

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