【千葉銀行】激戦の首都圏を勝ち抜く二刀流戦略 業務連携と戦略的M&Aで地銀第2位へ

“金利がある世界”となり、規模のメリットを求めて県境を越えて合従連衡する地方銀行の中で、千葉県内で圧倒的なシェアを有する千葉銀行<8331>が、県内第3位の千葉興業銀行との経営統合を2025年9月29日に発表した。

千葉銀行はこの3月に千葉興業銀行の株式19.9%を取得して、すでに筆頭株主となっており、両行は経営統合を視野に協議を重ねてきた。

統合が実現すれば、連結総資産(単年度ベース、25年3月末時点)で24兆8781億円となり、ふくおかフィナンシャルグループに次ぐ国内第2位の規模の地銀グループに躍り出ることとなる。

現在、地銀大手の預金量規模は20兆円が生き残りの目安とされる。25兆円規模となった千葉銀行はこれで“ひと息ついた“といえそうだ。激戦が続く首都圏でさらなる進化を遂げるため、同行がこれまで培ってきた業務連携(アライアンス)と戦略的M&Aという二つの柱を軸に、その全貌をみていく。

守りと攻めを両立させる地銀との広域アライアンス戦略

千葉銀行は、1943年3月に千葉合同銀行と小見川農商銀行、第九十八銀行が合併して誕生した。前身の一つ、千葉合同銀行が第百銀行(旧三菱銀行が吸収合併)と提携関係にあった経緯から、現在でも三菱UFJ銀行が約5%の同行株を保有する。

翌44年3月に千葉貯蓄銀行を、6月には野田商誘銀行を吸収合併。千葉県下の営業基盤を固め、経営は順調に思われた。ところが、58年に初代の古荘四郎彦頭取が逮捕される不正融資(レインボー事件)が発覚。経営建て直しのため、日本銀行から大久保太三郎氏が第2代頭取に就く(以降、第5代の玉置孝頭取まで日銀出身者が頭取を務める)。“天下り”頭取の舵取りと旧三菱銀行の“手堅い経営”を手本に、バブル経済に踊ることなく、97~2000年代前半の金融危機にも「堅実経営」で、単独での生き残りを模索してきた。

そんな千葉銀行が積極果敢に取り組んできたのが、他の地銀との「連携」、すなわちアライアンス戦略だ。

そのきっかけの一つが、膨大なコストをはらむ銀行の基幹システムの共同化だった。

2008年3月に地銀3行で「TSUBASAプロジェクト」を発足。現在はそれを発展させ、千葉、中国、伊予、第四北越など10行で「TSUBASAアライアンス」を組織している。このアライアンスにより、基幹システムや事務部門の共同化、AML(Anti-Money Laundering)センターの設置、相続関連業務やアセットマネジメント事業、「TSUBASA FinTech共通基盤」によるAPIとフィンテックサービスの提供、「TSUBASAキャッシュレス決済プラットフォーム」やM&A業務のプラットフォーム構築など、コスト削減と業務効率化に大きく貢献してきた。

営業基盤の拡充を目的とした連携も進められている。16年3月には武蔵野銀行(埼玉県さいたま市)と包括提携し、「千葉・武蔵野アライアンス」(翌年4月、共同出資で「千葉・武蔵野アライアンス株式会社」を設立)として業務の共同化やシステム・商品の共同開発などを推進中だ。さらに19年7月には、横浜銀行と「千葉・横浜パートナーシップ」を発足させた。地銀首位と第2位による業務提携で、運用商品の共同開発やM&A・事業承継での協働を進める。

また、海外の銀行とも連携を図ってきた。同行は自己資本比率規制(BIS規制)の国際基準を選択する数少ない地銀の一つであり、米ニューヨークや英ロンドンなど6カ所の海外拠点を擁している。加えて、12年4月にCIMBニアガ(インドネシア)、翌13年3月にインドステイト銀行、同7月にはメトロポリタン銀行(フィリピン)、同11月に中国の東亜銀行、17年4月には米セントラル・パシフィック・バンクと業務提携を結ぶなど、グローバル展開を強化している点も大きな特徴だ。

リテール強化と新たな収益源を確保する戦略的M&A

金融危機を「堅実経営」で乗り越えた千葉銀行は、近年、戦略的なM&Aを通じて、収益力の多角化を加速させている。

リテール部門の強化策として、リスク商品の販売強化のため、1998年3月に山一證券グループから中央証券(現ちばぎん証券)をグループ化(子会社化)した。これにより、預金だけでなく投資信託などのリスク商品を顧客に提供できる体制を確立し、リテール収益力の強化を図る。


また、他の地銀との連携をテコに、非金融領域への進出にも注力している。特に、競争が激化する首都圏で収益を多角化するため、テクノロジーと第一次産業分野で異例のM&Aに乗り出した。

DX・AI分野へのM&Aでは、24年12月にAIアルゴリズム事業を展開するエッジテクノロジー(東京都千代田区)の株式と新株予約権を公開買い付け(TOB)で取得し、完全子会社化。買収額は約90億円。地銀がAI事業を展開する企業をTOBで傘下に収めた事例は極めて珍しいといえる。エッジテクノロジーが有するAIアルゴリズムやソリューション開発力を活かし、同行グループの顧客基盤を活用したデジタルマーケティングや業務の効率化を推進する狙いだ。これによって、23年4月から進めている「ちばぎんDX『3.0』」をより加速させる。

第一次産業へのM&Aでは、農業分野で25年1月24日に「株式会社フレッシュファームちば」(千葉県市原市)の全株式を取得して子会社化すると発表した。コメや西洋野菜を生産・販売し、スマート農業の企画・開発、実装へ向けて積極的に取り組む同社を「千葉銀行グループにおける第一次産業の中核企業」に育て上げ、地域の第一次産業の課題解決に貢献していく方針だ。

連携によるDX推進と地域商社の立ち上げ

戦略的M&Aの実行と並行し、千葉銀行はDXや地域活性化を目的とした業務連携も強化している。

まず、DX推進のための連携として、21年8月にチェンジ(東京都港区、現チェンジホールディングス)と戦略的協働パートナーとして業務提携を結び、行員の育成支援やスキルアップを手がける。また、22年10月にはソニー銀行とDX分野で業務提携を行い、オンライン相談システムなどのデジタル技術の導入を進めた。将来的には、TSUBASAアライアンスへの展開も検討するという。

次に、リテール強化として、16年6月にはほけんの窓口グループと業務提携。「保険商品@ちばぎん」として相談窓口を設置し、年金保険などの貯蓄型商品のほか、医療保険などを販売することで顧客ニーズに対応した。

地域活性化を目指す取り組みも重要だ。21年5月には100%子会社の地域商社「ちばぎん商店」を設立。千葉発の地方創生の起爆剤となる商品・サービスの発掘や創出、新しい地域ブランドを生み出す「C-VALUE」プロジェクトを運営する。

こうして千葉銀行は金融・非金融サービスを問わず、新たな価値を提供することで地域の活性化・発展に貢献していく。

「金利のある世界」の生き残り策と今後の焦点

2025年9月29日に経営統合を発表した千葉銀行と千葉興業銀行は、27年4月をめどに銀行持ち株会社を設置する。持ち株会社の株式は東京証券取引所プライム市場に上場を申請。傘下に入る両行の株式は上場廃止となる。両行は、それぞれの強みを生かした事業展開が「信頼と尊重の2ブランドによる地域金融力の強化」につながるとして、「合併の予定はない」と説明する。経営統合後の店舗統廃合による合理化や業務の効率化は、両行がそれぞれの判断で進めていくことになる。

企業の資金需要が旺盛な首都圏は貸出先が豊富であり、取引先が増えればM&Aや事業承継など付随業務で収益機会の増加が見込める。

これこそが「千葉-千葉興業」の一番の強みとなる。加えて、両行が有するさまざまな事業領域での地銀他行(社)との先進的な連携で得た経験やノウハウが相乗効果をもたらすはずだ。

今後は、残された課題である「非金融領域」の収益化をどこまで進められるかに焦点が当たる。例えば、銀行の本体業務との親和性が高い不動産仲介業では、これまでさまざまな業務分野で参入障壁が立ちはだかってきた。それが地方創生の掛け声のもと、規制は緩やかに緩和されつつある。そんな状況を睨み、地域経済の活性化と永続的な発展を掲げる千葉銀行の戦略的なM&Aが引き続き注目される。

【千葉銀行】激戦の首都圏を勝ち抜く二刀流戦略 業務連携と戦略的M&Aで地銀第2位へ
千葉銀行の主な業務連携とM&A (4)

文・髙橋べん(ライター)

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