【2026年建設】「1兆円超」の新勢力誕生、人手不足・資材高騰で再編継続も

2025年12月22日(月)06:30

インフロニア・ホールディングスによる三井住友建設の買収完了により、2026年は「1兆円超」の新勢力が本格始動するほか、大和ハウス工業による住友電設の巨額買収を筆頭とした「設備の垂直統合」が加速する見通しだ。深刻な人手不足や資材高騰という逆風の中、データセンター（DC）開発やインフラ老朽化対策といった成長領域を取り込むべく、ゼネコンの枠を超えた「選別と集約」が一段と進む。

新たなフェーズを迎える建設業界は、安定した工事需要を収益に直結させるための構造改革が、さらなる再編劇の焦点となる。

2025年は上場ゼネコン再編の“当たり年”

建設業界はゼネコン（総合建設会社）を頂点に、道路舗装、電気・通信工事、各種専門工事など多岐にわたる。2025年は上場企業同士による大型M＆Aの“当たり年”となった。

先頭バッターを務めたのが前田建設工業を中核とするインフロニア・ホールディングス。5月、三井住友建設を約940億円で買収すると発表した。売上高は合計約1.3兆円（2025年3月期、うち三井住友建設4630億円）と、大手5社（鹿島、大林組、清水建設、大成建設、竹中工務店）に次ぐ準大手ゼネコンの断トツに立つ。

インフロニアは両社の経営資源を結集し、人手不足問題や資材高騰などの厳しい業界環境に対処するとともに、拡大が見込まれるインフラの老朽化対策や維持管理需要への取り組みを加速する狙いだ。

一方、三井住友建設はここ数年、都内の超高層タワーマンション工事での施工トラブルによる累計700億円超の巨額損失が業績を圧迫。さらには3割近い株式を保有する筆頭株主の旧村上ファンド系投資会社による経営への圧力も無視できない状況にあった。

上場ゼネコンのM＆Aは2013年、準大手のハザマと安藤建設が合併して「安藤ハザマ」を発足して以来12年ぶり。インフロニアといえば、2022年に海洋土木大手の東洋建設の買収に失敗した苦い経験を持つだけに、捲土重来を果たした格好だ。

その東洋建設を傘下に収めたのが大成建設。東洋建設が得意とする洋上風力発電関連工事などでの幅広い連携を見込む。

TOB（株式公開買い付け）などでの買収総額は約1600億円に上り、大成建設のM＆Aとして最大だ。

この買収で影の立役者となったのが任天堂創業家の資産運用会社、ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス（YFO）で、保有する3割近い株式をTOBに応募した。実は、YFOは2022年春、東洋建設の買収意向を突如公表し、同社に実施中だったインフロニアHDのTOBを阻止した相手。YFOは東洋建設の賛同が得られず、翌年末に最終的に買収を断念したが、この間に筆頭株主に躍り出ていた。

大成建設は2023年に高級住宅や伝統建築に強みを持つ佐藤秀（東京都新宿区）、高速道路のリニューアル工事やコンクリート橋梁を主力とするピーエス三菱（現ピーエス・コンストラクション）を相次いで買収するなどM＆Aへの積極姿勢を鮮明にしていた。

国内建設投資は1992年度に84兆円のピークに達したが、2010年代初頭に半減。東日本大震災からの復興需要や都心部の大規模再開発工事、インフラ老朽化対策関連の需要増を背景に回復をたどり、2025年度は75.6兆円（前年度比3.2％増）が見込まれる。

しかし、豊富な仕事量とは裏腹に、建設現場では労働力不足の常態化と資材高騰のダブルパンチを受けている。事業環境が険しさを増す中、再編機運の高まりを反映するかのように足元で大型買収が連続したのだ。