ソフト99・太平洋工業・マンダム…非公開化に向けたMBO、物言う株主の介入で“暗雲”漂う

株式の非公開化を目的にMBO(経営陣による買収)を始めたものの、アクティビスト(物言う株主)の介入などで“暗雲”が漂うケースが相次いでいる。最大の要因は買付価格の妥当性。

割安過ぎるとの批判を招いているのだ。

その一方で、MBO発表後、当該企業の株価は買付価格を上回る高値圏で推移し、TOB(株式公開買い付け)の成立が見通せない悪循環に陥っている。

ソフト99のMBO、Keeper技研が方向転換

カーワックスや補修剤などカーケア用品大手、ソフト99コーポレーションのMBOに向けたTOBをめぐり、第2位株主(保有割合約12%)のKeeper技研は10月24日、シンガポール投資ファンドのエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが実施中の対抗TOBに応募すると発表した。

ソフト99の田中秀明社長が設立した買収目的会社によるTOBへの応募を予定していたが、これをとりやめる。

Keeper技研は洗車・カーコーティングを主力とする。事業連携の強化を目的に3月、ソフト99の株式12%余りを市場外取引で取得していた。

ソフト99株の買付価格は田中社長側が1株2680円に対し、エフィッシモ側が4100円。Keeper技研は変更理由について、「1420円低い買付価格を提示するソフト99のTOBに応募することの合理性を基礎づけるに足りる事由を見いだせない」などとしている。

ソフト99のMBOに向けたTOBは1株2465円で8月7日に始まった。当初から「著しく割安」と批判していたエフィッシモは9月半ば、田中社長側を7割上回る4100円で対抗TOBに乗り出した。田中社長側は10月17日、買付価格を初めて引き上げて2680円とし、買付期間も同31日まで延長(3度目)した。

ソフト99は9月25日、前日の24日時点でMBOへの応募株式数がKeeper技研の保有株式を含めて成立条件の下限(35.04%)を上回ると発表していた。

Keeper技研の“離反”はソフト99のMBOにとって大きな痛手で、現状のままでは成立が極めて困難視される。

株式売却益の差額は38億円強に

一方、Keeper技研の判断は自社の企業価値の向上、株主の共同利益の観点から至極順当といえる。田中社長側とエフィッシモ側のTOBに応募した場合の株式売却益の差額は38億円強と、2026年6月期の最終利益(48億8800万円)に照らして無視できない金額でもあるからだ。

エフィッシモによる買付期間は10月29日まで。勝敗は月内に決するのか、それともさらなる延長戦が待っているのか。

MBOを目指す田中社長側がTOB成立を期すためには、少なくともエフィッシモ側を上回る買付価格を提示することが不可欠となる。

エフィッシモ、太平洋工業にも噛みつく

そのエフィッシモは自動車部品メーカーの太平洋工業のMBOにも噛みつく形になっている。1株2050円の買付価格が低過ぎると問題視している。

太平洋工業へのMBOは7月末、同社社長で創業家出身の小川哲史氏が設立した買収目的会社が1株2050円で始めた。これ以降、エフィッシモは同社株を急ピッチに買い増しを進め、保有割合を12%超まで高めている。

事態が動いたのは10月23日。小川社長側が買付価格を一気に869円引き上げて2919円とし、同日までとしてた買付期間を11月7日まで延長した。延長は4度目だが、買付価格に初めて手を付けた。

これにより、買付価格を大きく上回る高値圏で推移していた太平洋工業の株価は新たな買付価格にさや寄せされる形となり、TOB成立の可能性が高まりつつある。

28日の太平洋工業株価の終値は2919円で、買付価格とちょうど同じ。

ただ、それでもPBR(株価純資産倍率)は0.96倍と1倍を割り、会社の解散価値を下回る。買付価格の割安批判が収まるかどうか、なお微妙だ。

旧村上系、マンダム株17%超を取得

旧村上ファンド系の投資会社は同じくMBO進行中のマンダムの株式をまたまく間に17%超まで買い進めた。

男性用化粧品大手のマンダムが同社創業家のMBOで株式を非公開化すると発表したのは9月10日。この直後から旧村上系が株式の取得を開始。実際にMBOの一環としてTOBが始まったのは9月26日(~11月10日まで)だが、この時点ですでに保有比率は2ケタに達していた。

マンダム株価は2300円前後で推移。これに対してMBOでの買付価格は1960円で、現状のままではMBO成立のためには買付価格の引き上げが避けらず、行方は混とんとしている。

文:M&A Online

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