乗換案内の「駅探」赤字転落で戦略転換 業績反転へM&Aも 

乗換案内サービスを展開する駅探<3646>が、地域マーケティングプラットフォーム構想(経路検索や移動データを活用し、広告や販促などにつなげる取り組み)を見直す。

2021年から成長戦略として推進してきたが、構想の定義が曖昧で収益化に時間がかかる事業構造となっていた。

この反省をもとに、強みであるメディア基盤や移動データを起点に「基盤強化戦略」「次世代成長戦略」「ポートフォリオ(事業構成)戦略」の三つの戦略に転換する。

ポートフォリオ戦略では自社事業の延長線上にある分野を中心にM&Aを進める。

同社は2026年3月期に営業赤字に転落する見通しで、2027年3月期も2期連続の営業赤字を予想する。

「基盤強化戦略」「次世代成長戦略」と並び、M&Aも業績反転に向けた重要な施策の一つとなりそうだ。

ポートフォリオを拡大

地域マーケティングプラットフォーム構想は、差別化が難しい個人生活者向けの乗換案内サービスから、経路検索や移動データを活用した地域マーケティングプラットフォーム事業に拡大する取り組み。

2021年5月公表の中期経営計画で掲げた成長戦略で、広告、販促、EC(電子商取引)などをターゲットとした事業を展開する計画だった。

しかし2026年1月に公表した2029年3月期を最終年とする中期経営計画の中で、同構想について「事業範囲・顧客・提供価値が不明確で、具体的な施策が定まらず、戦略の検証・優先順位付け、撤退判断ができない状態が続いていた」と総括した。

さらに市場ニーズや収益化よりもプラットフォーム構築を優先した結果、収益化までに時間がかかり、短期的な業績改善につながりにくかったと振り返った。

こうした反省を踏まえ、収益化につながりやすい事業展開が急務と判断した。

これまで蓄積した技術・移動データ資産や事業資産(メディア、ソリューション)などの強みを活かして「基盤強化戦略」「次世代成長戦略」「ポートフォリオ戦略」の三つの戦略で、早期の収益安定化を目指すことにした。

三つの戦略のうち「基盤強化戦略」では、国内メディア事業の収益を早期に安定・拡大するとともに、交通・旅行業界との信頼関係を活かし、継続的な収益を創出する。

「次世代成長戦略」では、インバウンド(訪日観光客)メディアの収益化や、CGM型プラットフォーム(利用者が投稿する情報で成り立つサービス)を新たな収益源として育成する。

「ポートフォリオ戦略」では、企業買収などを通じて、これまで構築してきた自社事業と関連性の高い領域でM&Aを進める。

同社は2021年以降、広告やマーケティング、システム開発などの分野で企業買収を重ねてきた。

2021年にはマーベリックからスマートフォン向けインフィード広告(SNSやニュースサイトでコンテンツ中に表示される広告)事業を取得。2022年にはインターネット広告代理事業を手がけるプラウドエンジンを買収した。

2023年にはアイティエルホールディングス傘下でシステム受託開発を手がける3社を子会社化し、2024年にはSNSキャンペーンツールを提供する音生を傘下に収めた。

今後もこうした既存事業と関連する企業や事業を取り込み、ポートフォリオを拡大する。

黒字転換は2年後

駅探は2003年に東芝の乗換案内事業を分社化し、駅前探険倶楽部として設立された。

その後、新しいサービスを次々に追加するとともに、M&Aにも積極的に取り組み、業容を拡大してきた。

現在の中核事業はモビリティサポート事業(乗換案内サービス、移動データを活用した広告など)で、売上高の40.5%を占める。

このほかに同30.0%の広告配信プラットフォーム事業(デジタル広告、広告代理店など)と、同29.5%のM&A・インキュベーション事業(投資先企業によるシステム関連業務、労働者派遣など)で構成する。

乗換案内の「駅探」赤字転落で戦略転換 業績反転へM&Aも 
駅探の売上高構成比

業績は厳しい状況が続いている。2018年3月期に連結決算に移行したあとの業績を見ると、営業減益が続いてきた。

2025年3月期の営業利益は前年度比4.95倍と増益に転じたものの、2026年3月期は業績が悪化し、営業損益は5800万円の赤字に転落する。

2027年3月期も厳しい状況は変わらず、2期連続の営業赤字が避けられない見通しだ。

その後は戦略変更の影響なども寄与し、2028年3月期には黒字化。2029年3月期は売上高33億7000万円、営業利益1億1000万円を見込む。

この計画にはM&Aによる効果は含まれていない。このため三つの戦略の一つであるポートフォリオ戦略が順調に進めば、業績が上振れする可能性もありそうだ。

乗換案内の「駅探」赤字転落で戦略転換 業績反転へM&Aも 
駅探の業績推移

文:M&A Online記者 松本亮一

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