「エンシュウ」不振の工作機械で構造改革を加速 人員削減やロボット企業の買収なども

中堅工作機械メーカーのエンシュウ<6218>は、不振の工作機械事業で構造改革を加速する。

売り上げが伸びている部品加工事業やSIer(システムインテグレーター=ITシステムの企画から運用、保守までを一括して請け負う事業)を手がけている子会社のエンシュウコネクティッド(浜松市)への人員の再配置や、ロボットや搬送装置などを手がける企業や事業の買収による新規事業の拡充などを進める。

成長見込めない汎用機などの販売事業

エンシュウは工作機械事業で、採算の良い案件を選別して受注していることから、自動車業界向けを中心に受注が大幅に落ち込んでいるのに加え、自動車業界向けを中心とする汎用機などの販売を中心とする現在の事業構造では今後の成長が見込めないと判断、工作機械の抜本的な事業構造の見直しに乗り出した。

すでに現状の仕事量に合わせた生産体制構築に向け2024年12月に希望退職を実施したほか、人員の再配置なども進めており、今後は既存事業の売り上げを維持しつつ、歯科加工機などの顧客と共同で開発する開発型機械製造事業や、アルミ溶接などの新しいレーザー加工システム事業、SIerと IoT(モノのインターネット)関連事業、部品などの保全や修理などを提供する保全サービス事業などの新事業への転換を進める。

この中でSIerと IoTに関しては、製造業で顕在化している労働力不足に対応して、自動化やDX(デジタル・トランスフォーメーション=デジタル技術で生活やビジネスを変革する取り組み)化需要の取り込みや、非自動車分野への営業の強化などを実施するのに加え、自動化に不可欠なロボットや搬送装置の分野でM&Aに踏み切る。

すでに新業種向けのロボットを使った自動化や工程間搬送、自動車メーカー向けの工程間搬送などについて引き合いがあり、内製化で対応できない部分についてはM&Aを活用する。

同社は、これまで企業や事業の買収で適時開示した実績はなく、実現すれば初めてのことになる。

新しいモノ作りに貢献するSIerと工作機械メーカー目指す

エンシュウは1904年に、足踏み織機の製作で創業し、1937年に工作機械の製造を始め、1976年にヤマハ発動機の受託生産を開始。2022年にSIer事業を手がける子会社のエンシュウコネクティッドを設立した。

現在はヤマハ発動機向けを中心とする部品加工事業と、マシニングセンターや溶接などに用いるレーザー加工機、生産ラインの自動化向け機器などの工作機械事業が全社売上高のそれぞれ半分ほどを占める2本柱となっている。

工作機械では顧客のニーズに合わせたカスタマイズや、治具、工具、ロボットなどの周辺機器を含めた自動化生産システムをトータルで提供できるのが強みだが、近年は工作機械の販売が振るわず、苦しい状況にある。

2025年3月期は売上高約219億円(前年度比9.2%減)と2期連続で減少し、営業損益は約7億円の赤字(前年度は5億4000万円の黒字)に転落した。

部門別に見ると部品加工事業が売上高約119億円(前年度比2.9%減)、営業利益約3億7000万円 (同37.0%減)だったのに対し、工作機械事業は売上高約99億円(同15.7%減)、営業損益約11億3000万円の赤字(前年度は9800万円の赤字)となっており、工作機械事業の不振が業績悪化の原因となっていることが分かる。

2026年3月期は工作機械事業の赤字は残るものの、赤字幅が縮小し全社では黒字転換し2029年3月期には売上高250億円、営業利益10億円を目指す計画だ。

同社は「少子化、EV(電気自動車)化などを背景とした新しいモノ作りに貢献するSIerと工作機械メーカーを目指す」としており、ロボットや搬送装置の分野でのM&Aが目標達成に向け少なからず影響を与えることになりそうだ。

「エンシュウ」不振の工作機械で構造改革を加速 人員削減やロボット企業の買収なども
エンシュウの業績推移

文:M&A Online記者 松本亮一

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