病院経営サポートの「ユカリア」二つのロールアップ作戦で成長を加速

医療機関の経営支援事業や高齢者向け介護施設の運営などを手がけるユカリア<286A>は、2025年1月9日に採用、配置、マネジメントに活用できる「適性検査」などを手がけるミツカリ(東京都渋谷区)に、同年1月10日には排尿のタイミングを予測するシステムを手がけるDFree(東京都港区)に相次いで出資(保有割合はいずれも10%未満)した。

M&Aによるロールアップ戦略(複数の中小企業を買収し、統合することで一つの大きな企業として成長を目指す手法)と、マイノリティ出資(保有割合が50%未満)と併せた資本業務提携によってグループとしてまとめ上げる(ロールアップ)、二つのロールアップ作戦で成長を加速する取り組みの一環だ。

同社は祖業である病院経営サポート事業を軸に、M&Aによる新分野の開拓で業容を拡大しており、これまでに実施した主なM&Aは6件に達する。

病院経営サポートの「ユカリア」二つのロールアップ作戦で成長を加速
ユカリアの主なM&A

採用のミスマッチや離職率を低減

ユカリアはミツカリの発行済み株式総数の9.20%を取得した。今後、ミツカリの「適性検査」を導入し、看護師や介護士らの求人に対する応募者の性格や価値観を可視化し、組織との相性を分析することで、採用のミスマッチや離職率の低減を目指す。

また現役の看護師や介護士については「適性検査」によって得られたそれぞれの特性に沿って、最適な部署やチームに配置することで、職場内のコミュニケーションの円滑化や業務効率の向上を支援する。

一方、DFreeについては発行済み株式総数の3.41%を取得した。超音波センサーを用いて膀胱の変化を捉えることで排尿のタイミングを予測することのできるウエアラブルデバイス「DFree」を医療現場や介護現場に販売するほか、膀胱内の尿のたまり具合を可視化し、収集したデータを分析することで、利用者の QOL(生活の質)向上と職員の業務負担軽減を支援する。

M&Aで新事業領域を開拓

ユカリアは2005年に医療、介護施設に対する経営コンサルティング事業への参入を目的に、メディカルマネジメント研究所を東京都港区に設立したのが始まり。

創業3年後の2008年に、医療機器・コンタクトレンズ関連事業を譲り受けたのを手始めに、2011年からこれまでの間に5社を傘下(うち1社は譲渡)に収めている。

これによってコンタクトレンズ関連事業をはじめ、高齢者向け介護施設運営サービス事業、入居相談・施設紹介サービス事業、リユース業界向けPOS(販売時点情報管理)システム事業などの新たな事業領域を開拓してきた。

こうした取り組みの効果もあり、ユカリア単体の売上高はこの4年間でほぼ倍増しており、2024年12月期は連結で売上高198億6300万円(前期比10.0%増)、営業利益20億1800万円(前期比6.3%増)と増収営業増益を見込む。

病院経営サポートの「ユカリア」二つのロールアップ作戦で成長を加速
ユカリアの業績推移
2024/12は予想

厳しい経営環境にある医療、介護業界を支援

同社が関わる医療業界では経営環境が厳しく、多くの病院が赤字に陥っているほか、医療従事者の不足や医療施設の建て替え、業務負荷の軽減など多くの課題も抱えている。

また介護業界でも介護サービスに対する需要拡大が見込まれるものの、異業種からの新規参入などが増加しているのをはじめ介護職員らの確保が大きな課題となっており、経営環境は厳しさを増している。

ユカリアは「病院・介護施設の経営の安定化」「医療・介護従事者の働きがいや所得の向上」「患者・要介護者のウェルビーイング(より良い状態)」の実現を目指しており、これら課題を解決し、経営支援につながる技術やサービスを保有する企業を対象にしたM&Aやマイノリティ出資は、今後も下火になることはなさそうだ。

文:M&A Online記者 松本亮一

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