豊田自動織機がトヨタグループの「買収」受け入れ、歴代2位のM&A規模に

2025年のM&A金額が早くも10兆円(上場企業の適時開示ベース)の大台を突破した。6月初めに発表された豊田自動織機をめぐる4兆7000億円規模の買収・非公開化案件を受け、今年の累計額は12兆円に積み上がった。

年間金額は2018年の13兆8400億円が過去最高だが、今年はまだ半年以上を残しており、記録更新が確実視される。

豊田織機の4.7兆円買収、歴代2位に

M&A金額は大型案件の有無に左右されるため、年によって凹凸がある。さらに中小案件を中心に「金額非公表」が全体の半数近くに上り、実際の取引金額は集計数字よりも大きい。

これまで年間金額が最も大きいのは2018年の13兆8400億円。武田薬品工業がアイルランド製薬大手のシャイアーをおよそ6兆2000億円で買収する発表があったのがこの年。

武田によるシャイアー買収は日本企業が手がけるM&Aとして過去最大。2016年にソフトバンクが3兆3000億円での買収を発表した英国半導体設計大手アームの案件を大きく上回った。

今回の4兆7000億円規模に達する豊田織機の案件は武田のシャイアー買収に次ぐ歴代2位にランクされる。

◎日本企業がかかわるM&Aの歴代トップ ※日本製鉄の案件は現在進行中、HDはホールディングスの略

豊田自動織機がトヨタグループの「買収」受け入れ、歴代2位のM&A規模に

物言う株主の圧力を回避する狙いも

豊田自動織機はトヨタ自動車の源流企業。同社の前身の豊田自動織機製作所から1937(昭和12)年に独立した自動車部門が現在のトヨタ自動車にあたる。

2024年9月末時点でトヨタが筆頭株主としてトヨタ織機株の約24%を保有する一方で、豊田織機もトヨタ株を約9%のほか、デンソー、アイシンなどの株式を保有し、密接な資本関係を持つ。

豊田織機は6月3日、トヨタグループによる買収提案を受け入れ、株式を非公開化すると発表した。買収スキームはトヨタ自動車、同社の豊田章男会長、グループ会社のトヨタ不動産(旧東和不動産)の3者が出資する持ち株会社を新設し、この傘下に豊田織機を置く。

非公開化を通じて、迅速な意思決定とトヨタグループ各社との事業連携の深化によって短期的な業績期待にとらわれない中長期的な成長を目指すことを可能にするとしている。

ただ近年、物言う株主の海外投資ファンドなどが株式の持ち合い解消や資本の有効活用を求めて攻勢を強めており、こうした圧力を回避する狙いもあるとみられる。

今夏にも過去最高を更新する勢い

今年12月をめどにTOB(株式公開買い付け)を行い、豊田織機株の約75%を3兆6899億円で取得したうえで、豊田織機はトヨタが保有する自己株式を9941億円で買い取る。

これらを合わせた総額4兆6840億円が加わり、今年1月からのM&A金額は10兆円を一気に突破し、累計11兆9948億円(6月6日時点)となった。10兆円超えは3年連続だが、今年は半年を待たずに大台に乗せる異例のスピードぶりで、この夏にも過去最高を更新する勢いだ。

豊田自動織機がトヨタグループの「買収」受け入れ、歴代2位のM&A規模に
※適時開示ベース、2025年は6月6日時点

また、豊田織機をめぐる買収総額のうち約3兆7000億円はTOBにかかる費用。歴代のTOBとしても2020年、NTTが発表した携帯電話子会社NTTドコモの完全子会社化案件の約4兆2000億円(TOBに応募しなかった株主からの買い取り分を含む)に続く第2位となる(ただし、親子上場を解消を目的とするグループ内再編のため、上記のM&A歴代トップ10に含めず)。

「1000億円超」案件、最多ペースで推移中

突出する豊田織機の案件を除いても、2025年のM&A金額は例年以上のハイペースとなっている。M&Aの総件数も前年比31件増の566件(6月6日時点)と増勢が続いているが、うち金額1000億円を超える大型案件は15件と過去最多ペースと推移していることも金額を押し上げる一因だ。

その1000億円超の年間件数は2020年12件、21年18件、22年14件、23年17件、24年25件で、今年は増加傾向にさらに拍車がかかっている。

◎2025年M&A:取引金額1000億円超の大型案件

豊田自動織機がトヨタグループの「買収」受け入れ、歴代2位のM&A規模に

文:M&A Online

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