「芙蓉総合リース」企業買収を活発化、貨車リースなどで事業領域を拡大

みずほ系リース大手の芙蓉総合リース<8424>が企業・事業買収を活発化させている。同社が2025年(9月16日時点)に適時開示した案件は4件(国内3件、海外1件)で、2010年以降では2023年の3件を上回り最多となった。

事業領域を拡大し収益源の多角化を進める戦略に沿ったもので、同社では「これからさらに持続的な成長を実現するためには、グローバルな展開が不可欠」としており、今後も海外を含めたM&A件数は増えそうだ。

ノンアセットビジネスにも注力

芙蓉総合リースが2025年に取得した企業や事業は、医療・介護業界向けにM&A仲介や開業支援を手がけるCBホールディングス、物流機器大手のワコーパレット、電動フォークリフト用鉛蓄電池再生サービス事業、中古フォークリフトの販売やレンタルを展開するタイのマテハングループ3社の4件。

2010年代は4件のM&Aを適時開示しており、複数の案件を発表した年はなかった。2020年に入り件数は増加。2020年、2022年、2024年は1件だが、2021年は2件、2023年は3件に達した。

2025年最初のM&AとなったCBホールディングスについては、子会社化により「金融だけでなくコンサルティングやM&A仲介といった川上領域まで取り込む体制が整いつつあり、アセットビジネス(資産を対象とするリース、ファイナンス事業)のみならず、ノンアセットビジネス(サービスなどで収益を得る事業)に注力することで収益源の幅を広げていく」としている。

またワコーパレットの子会社化については「従来の倉庫中心のビジネスから物流全体のプロセスに関わることができる体制が整った」とし、電動フォークリフト用鉛蓄電池再生サービス事業の取得については、顧客の課題解決につながる分野での事業領域の拡大に取り組む一環としている。

さらにタイのマテハングループ3社の子会社化は、成長事業の一つに位置付けているモビリティ分野での新たなビジネス領域の拡大が狙いだ。

「芙蓉総合リース」企業買収を活発化、貨車リースなどで事業領域を拡大
芙蓉総合リースが2020年以降に適時開示した企業・事業買収

進む海外M&A

芙蓉総合リースは1969年に丸紅飯田 (現 丸紅)、富士銀行(現 みずほ銀行)を中心とする芙蓉グループ6社を株主として設立され、M&Aや事業領域の多角化、価値創造を中核とした成長戦略によってビジネスを拡大してきた。

みずほグループが保有する基盤や、幅広い事業領域などが強みで、2025年3月期はリース、割賦が減少し、売上高は6783億9500万円と前年度比4.3%のマイナスとなったものの、経常利益は690億3600万円(前年度比1.0%増)と8期連続で過去最高を更新。さらに2026年3月期も経常利益は700億円と同1.4%の増加を見込む。

グローバル展開については、領域を絞って良質なアセットを積み増していく計画で「現在は次期中期経営計画(現中期経営計画の最終年は2027年3月期)に向け検討を進めているほか、海外人材の育成に全力を傾けている」という。

すでに2025年9月11日に、双日<2768>子会社の双日米国の完全子会社である、北米で貨車リース事業を展開するSouthwest Rail Industriesの株式の50%を取得した。

安定的な成長が見込まれる貨車リース市場に参画し、新たなビジネス領域の拡大と事業基盤の強化を実現するのが狙いで、今後は双日と協力して貨車台数の増加や、顧客ニーズに応じたサービスの多様化を進め、北米貨車リース事業の成長を目指す計画だ。

リース業界はコロナ禍の影響もあり、2020年から2022年までは3年連続で減少し、その後の2023年、2024年はプラスに転じている。

帝国データバンクによると、リース業界では海外展開やリース以外の事業多角化などによって収益を確保する動きが活発化しているという。

芙蓉総合リースの海外M&Aは、次期中期経営計画の策定と並行して進むことになりそうだ。

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文:M&A Online記者 松本亮一

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