「家賃債務保証サービス」業界でM&Aが増加傾向、背景に何が?

入居者が家賃を滞納した場合に、保証会社が家主に家賃を支払う「家賃債務保証サービス」業界で、M&Aに増加傾向が見られる。

M&A Onlineが構築したM&Aデータベースで2020年以降の「家賃債務保証サービス」関連のM&Aを調べたところ、2020年以降、年に1件あるかないかだった件数が、2024年6月以降、4件発生しており、にわかに増えている。


競争の激化による再編も

家賃債務保証サービスは、借主(入居者)が家賃を滞納した場合に、保証会社が連帯保証人に近い立場として、家賃を立て替えて貸主(大家や不動産会社)に支払うサービス。

従来、入居の際に必要となる連帯保証人は、入居者の親や親族が一般的だったが、近年は保証会社を利用するケースが増えているという。

この背景には、家族関係の希薄化や入居者の高齢化に加え、2020年に改正された民法で、将来発生するかもしれない家賃や借金などの複数の債務をまとめて保証する契約(根保証契約)で、保証人が責任を負う金額の上限(極度額)の定めが必要となり、連帯保証人の確保が困難になっている状況がある。

賃貸不動産の市場規模は、単身世帯数や外国人労働者世帯数の増加、平均賃料の上昇などにより緩やかに拡大していくとの見方が一般的だ。

これに伴って家賃債務保証サービス市場も拡大が見込まれる一方で、競争の激化による再編や付加価値提供による差別化競争などが予想されている。

こうした状況が、他業界からの参入や同業者による事業拡大などを目的とするM&Aを促す要因となっているようだ。

家賃債務保証事業の拡大が目的

直近のM&Aを見ると、2025年3月に住居、事業用家賃保証事業を全国展開しているジェイリース<7187>が、業容拡大を狙いに同業のK-net(神戸市)の子会社化を発表した。

K-netは、神戸本店をはじめ東京、大阪、名古屋、福岡、札幌に支店を持ち、協定不動産会社は8000社を超える。

ジェイリースは全国37都道府県に40拠点を展開し、協定不動産会社は2万8000社に達する。K-netをグループに迎え入れ、事業領域の拡大とサービス開発力の強化による業績拡大を見込んでいる。

この1カ月前の2月には、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>が、傘下の三菱UFJニコスを通じて家賃保証事業の全保連<5845>をTOB(株式公開買い付け)で子会社化すると発表した。三菱UFJフィナンシャル・グループは、「国内リテール顧客基盤の強化」をグループの主要戦略の一つとして掲げており、全保連を傘下に収めることで顧客基盤の拡大を目指す。

一方、全保連は三菱UFJフィナンシャル・グループ入りすることで、信頼性が向上するのをはじめ、法人顧客向け家賃債務保証事業の拡大や、家賃のクレジットカード払いの導入による新規顧客の獲得などが見込めるとしている。


このほかの2020年から2024年までの4件のM&Aで、家賃債務保証事業の拡大を目的としているのは、2020年4月のグッドコムアセット<3475>によるルームバンクインシュア(東京都新宿区)の子会社化と、2024年6月のイントラスト<7191>によるラクーンレント(現 プレミアライフ)の子会社化の2件。

2022年5月のエルテス<3967>によるバンズ保証(現 メタウン)の子会社化は不動産経営に関するサービスを提供するプロパティ・マネジメント事業の拡充が目的で、2024年10月のフォーサイド<2330>の日本賃貸住宅保証機構(大阪市)の譲渡は、MBO(経営陣による買収)の一環だった。

「家賃債務保証サービス」業界でM&Aが増加傾向、背景に何が?
2020年以降に適時開示された家賃債務保証サービス関連のM&A

文:M&A Online記者 松本亮一

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