
エンジン計測機などの分析機器大手の堀場製作所<6856>は、半導体ウエハー(半導体集積回路の材料となる円形の薄い板)の検査装置を開発、製造する韓国のEtaMax(エタマックス)を買収した。
堀場製作所が強みとする分光技術(多数の波長の光を波長ごとに分ける技術)と、エタマックスが保有する化合物半導体ウエハー欠陥検査の知見やソフトウエア技術を融合することで、ウエハー検査装置の品ぞろえの拡充とソリューション提案力を強化する。
今回のM&Aは中長期経営計画「MLMAP2028」で掲げた「先端材料・半導体」に注力するとの方針に沿ったもので、同計画では半導体のほかに「エネルギー・環境」「バイオ・ヘルスケア」も注力分野としている。
ウエハー検査装置技術を獲得
半導体業界ではEV(電気自動車)やAI(人工知能)の普及によるデータセンター需要の増大に伴って、次世代パワー半導体である化合物半導体を採用する動きが活発化している。
化合物半導体は、性能が高く耐久性に優れている一方で、製造過程でウエハーの欠陥による歩留まり低下が課題となっており、正確で効率的な検査が求められているという。
堀場製作所では、半導体製造プロセスを改善するソリューションを提供するためには「化合物半導体ウエハー検査装置の研究開発を強化する必要がある」として、今回のM&Aに踏み切った。
エタマックスは、主にフォトルミネッセンス(対象物が特定の波長の光を吸収し、その後に放出する光を測定することで、欠陥や不純物の情報などを得られる分析技術)という技術を用いたウエハー検査装置を手がけており、化合物半導体ウエハーの均一性評価や微細な欠陥の種類を判別することができる。
一方、堀場製作所はラマン分光(対象物に光を照射し、その散乱光を検出することで、分子構造や性質などを評価する分析技術)や、エリプソメトリ―(対象物に対する入射光と反射光の光の振動の変化を測定することで、厚さや性質などを求める分析技術)といった技術を持つ。
これら技術を活用しシナジーを生むことで、化合物半導体ウエハーの歩留まりの改善や品質管理の高度化が可能としており、今後、堀場製作所のグローバルネットワークを生かして事業拡大に取り組む。
M&Aに数多くの実績
MLMAP2028は5年間(2024年12月期~2028年12月期)の経営計画で、半導体のほか、水素や二酸化炭素関連などの「エネルギー・環境」、バイオ医薬品開発関連などの「バイオ・ヘルスケア」の3分野の事業拡大に取り組む。
2028年12月期に売上高4500億円(2023年12月期は2905億円)、営業利益800億円(同472億円)を目指しており、M&Aなどの戦略投資に5年間で約600億円を投じる計画だ。
初年度となる2024年12月期の売上高は3173億6900万円(前年度比9.2%増)で、このうち半導体部門は1204億6600万(同6.7%増)、自動車部門は934億9800万円(同16.3%増)だった。
同社の沿革によると、1996年にフランスのABX社(現 ホリバABX社)を買収したのが初めてのM&Aで、翌年の1997年にはフランスのインスツルメンツ(現 ホリバ・フランス社)を、さらに翌年の1998年愛宕物産(現 堀場ジョバンイボン)を連続して買収。
その後もフランスや米国、ドイツ、韓国、英国の企業を次々に傘下に収め、業容を拡大してきており、直近では2023年に米国の分析装置メーカーのプロセス・インスツルメンツを傘下に収めている。

文:M&A Online記者 松本亮一
【M&A Online 無料会員登録のご案内】
6000本超のM&A関連コラム読み放題!! M&Aデータベースが使い放題!!
登録無料、会員登録はここをクリック