不動産大手の「ヒューリック」不動産会社から投資会社へ 7000億円投資で事業領域拡大

不動産大手のヒューリック<3003>が、事業モデルの転換を進める。

2026年2月に公表した中長期経営計画(2026年12月期~2036年12月期)で、不動産事業を基盤としながら、M&Aや企業投資を活用して新規事業を拡大する方針を示した。

2036年12月期までにM&Aや投資に約7000億円を投じ、事業ポートフォリオ(事業構成)の多角化に取り組み、不動産を起点に複数事業へ投資する企業への転換を進める。

こうした戦略により不動産の商社化を実現し、コングロマリットプレミアム(複数の事業を持つことで企業価値が高く評価される効果)の創出を目指す。

経済環境の変化が戦略転換促す

ヒューリックは、日本経済がデフレとゼロ金利の時代から、インフレと金利のある経済へと転換したと判断。

加えて賃金上昇や資源高によるコスト増や、人口減少や少子高齢化による労働力不足など事業環境の不確実性が高まっているとみる。

こうした環境の変化により「単一的な事業、従来の延長線上だけでは、成長と安定はない」と分析する。

このため不動産事業は引き続き高い水準で利益を維持・増加させながら、M&Aを積極的に活用し多様な成長事業を取り込むことを決めた。

対象分野として、子ども教育、環境・インフラ、観光、高齢者・健康、次世代産業アセット、スポーツ・エンタメなどを挙げている。

これらの分野で企業取得や出資を進め、グループの収益基盤を広げる戦略だ。

子ども教育・再エネでM&A活用

M&Aに関連する事業の一つである、子ども教育分野では、教育複合施設「こどもでぱーと」を中心に教育サービスを集め、教育関連企業のM&Aや提携を通じて子ども教育の経済圏を拡大する。

学習や保育、学童のほか、運動、送迎、子ども服など複数のサービスを集積した施設を展開し、教育関連企業の取得を通じてサービスの拡充につなげる。

共働き世帯の増加などを背景に教育支出の拡大が見込まれる中、創業者の引退などに伴う子ども教育関連企業のM&A案件が増えるとみている。

もう一つの事業である環境・インフラ分野では、再生可能エネルギーや蓄電池事業で企業取得や出資を進める。

同社は保有ビルの使用電力を再生可能エネルギーに切り替える取り組みを進めるとともに、蓄電池への投資を拡大する。

再エネ電力の需要拡大や電力供給の安定化に向けた蓄電池の需要増加を背景に、関連企業のM&Aや事業提携を通じて事業基盤の整備を進める。

新規事業で利益の30~40%を確保

ヒューリックは2026年12月期~2029年12月期までの4年間に9800億円の投資を計画しており、このうち不動産事業に2800億円、新規事業などには2倍超の7000億円を投じる。

新規事業などへの投資は、2025年12月期は700億円にとどまっていたため、年間平均でも2倍超に拡大する。

こうした取り組みで2036年に目指す経常利益3000億円のうち不動産事業で60~70%、残りの30~40%は新規事業で稼ぎ出す計画だ。

ヒューリックは旧富士銀行の店舗ビル管理からスタートした企業で、都内に好物件を保有している。

祖業の不動産賃貸などの不動産事業が売上高の86.0%を占めており、ホテルや旅館の運営のホテル・旅館事業の同7.3%をあわせると、売上高構成比は93%を超える。

このほか火災保険や自動車保険などの保険代理店業の保険事業が同0.5%、営繕工事や子ども教育事業などのその他事業が同6.2%といった構成で事業を展開する。

不動産大手の「ヒューリック」不動産会社から投資会社へ 7000億円投資で事業領域拡大
ヒューリックの売上高構成比

業績は好調で、2025年12月期は売上高7274億4700万円(前年度比22.9%増)、経常利益1729億2700万円(同12.0%増)と増収経常増益だった。

2026年12月期についても経常利益は12.4%の増加(売上高は非公表)を見込む。

同社は、経常利益1000億円以上、時価総額1兆円以上、ROE(自己資本利益率)10%以上などの同社独自の定義を達成したため、自社を「日本を代表する企業へ成長した」と位置付ける。

不動産を基盤に新規事業を積み上げる同社の戦略が、その企業価値をどこまで高められるかが今後の焦点となりそうだ。

文:M&A Online記者 松本亮一

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