
Fintechの先駆者であるマネーフォワード執行役員CSO/提携・事業責任者の菅藤達也氏に、起業した会社を売却して得られたシナジー効果や、M&Aを成功させる秘訣についてお伺いしました。今回のPart.2もすごくおもしろい話なので、最後まで読んでくださいね。
経営課題が一気に解決でき、社員の能力が開花したWin-WinのM&A
池澤 マネーフォワードグループにジョインしたことで、クラビスに起きたシナジー効果について教えてください。

菅藤 クラビスはプロダクトには自信があったのですが、それを届ける営業力が弱かったんです。会計業界はミスが許されない業界ですし、聞いたことのない新参者が受け入れてもらえるにはハードルが高い業界なんです。
でも、マネーフォワードはそのハードルは既に突破していたので、そこはすごくうらやましかったですね。それがあったのでクラビスのプロダクトとマネーフォワードの営業力が融合すれば、絶対うまくいくという確信がありました。
実際、M&A後、マネーフォワードのエースをクラビスの取締役として迎えて、サービスを深く理解してもらってから、マネーフォワードの営業にナレッジを移管したら、クラビスの新規顧客が一気に5.5倍に増えました。
池澤 すごいインパクトですね。
菅藤 何倍にしようとかKPI(重要業績評価指標)を決めていたわけではありませんが、施策が完全にハマりましたね。
池澤 マネーフォワードグループに入って、トップの辻(庸介)さんとかグループのCEOクラスの人たちと日常的に意見交換できますよね。それがクラビスの経営に好影響を与えたみたいな話もありますか?
菅藤 すごくあります。マネーフォワードグループに加わったことで、M&A前に悩んでいた課題が一気に解決しました。彼らは僕らが抱えていた課題を解決済みで、そのノウハウを共有してくれただけではなく、足りなかった戦力を送り込んでくれ、営業力の課題もクリアできました。また、マネーフォワードの社員がクラビスの取締役に大抜擢されるという良い効果も生まれました。
マネーフォワードのサイズだとマネージャークラスでも、小規模なクラビスであれば取締役というポジションもアサインできます。それで秘めた能力が開花したんでしょうね。ポジションが人を成長させた好事例だと思っています。
池澤 両社にWin-Winのシナジーが起きたんですね。
多様な起業家が集まって、それぞれ成長する最強のM&Aストーリー
池澤 ベンチャー同士のM&Aって起業家がどんどん集まって1つのチームになれるから、起業家が一人でがんばるより会社が強くなれそうですね。
菅藤 1人の経営者にできることって限界があるじゃないですか。でも、それが集合体になれば一気に可能性は広がります。先日、辻さんとミーティングしていたとき「自分たちの想像力には限界があるけど、仲間が増えれば想像力や可能性がどんどん引き出されて、常に成長し続けられるんじゃないか」みたいな話をしました。1個人には限界があるけれど、多様性を持ったタレントが集まれば、限界を超えられると思っています。
池澤 マネーフォワードグループは、M&Aで多様性が増えて強くなった実感はありますか?
菅藤 辻さんは、「今は起業家仲間がグループにいて、同じ気持ちをシェアできることがすごくいい」といつも言っています。また、クラビスの役員が、今、マネーフォワードグループの売り上げの7割近くを担っているBtoBクラウド事業の取締役になっているのですが、小舟で乗り込んだ海賊が大暴れしているみたいで、そういうのもすごく良いですよね(笑)。マネーフォワードは、そういう人の活性化みたいなことをM&Aの目的のひとつとしている部分があります。

被買収企業とチームを100%リスペクトすることがM&A成功の秘訣
池澤 逆に、シナジー効果が生まれないM&Aも、世の中にはありますよね?
菅藤 前職のネット調査会社時代には、M&Aで必ずしも理想的な成果を出せなかった経験があります。
そういうM&Aを経験してきたので、今はとことん被買収企業を尊重しています。アイデアが出てきたらみんなで意見を言い合い、その企業とチームを100%リスペクトしています。
池澤 この企画で前回対談したSHIFTの丹下大社長も、子会社の社名も変えないし、社長の年収も知らないし、人事もいじらないって言っていました。
菅藤 マネーフォワードも完全に同じですよ。僕も辻さんから「菅藤さんはどこにいて何をしてるか全然わかりませんね」ってよく言われています(笑)。
池澤 それがM&Aを成功させるポイントなんですね。
菅藤 だと思います。逆に言うと、そういう信頼ができそうな人かどうかを見極められるかどうかがM&Aでシナジーを出せるかどうかの分かれ目かもしれません。※前編記事、後編記事

Part.2 を最後までご覧いただきありがとうございます。次回Part.3では、菅藤さんがM&A恋愛論的な話を始めて暴走しちゃいます。
企画:ストライクIT業界チーム(最新情報はこちら)