オリックスがカタール投資庁とファンド設立…その狙いは? 三宅誠一常務事業投資本部長に聞く

オリックス<8591>が中東の政府系ファンド、カタール投資庁(QIA)と共同投資ファンドを設立した。プリンシパル投資(自己資金による事業投資)で約1兆円規模の資産残高を持つ同社は、自己資金中心の投資モデルに外部資金を組み合わせることで大型案件への対応力を高め、ROE(自己資本利益率)など資本効率の更なる向上を目指す。

ファンドと自己資金の併用モデルを採用し、IT情報サービス、ヘルスケア、物流、建設関連をはじめとする、社会課題解決分野への投資を加速する。新ファンドの狙いと今後の投資戦略を三宅誠一常務執行役 事業投資本部長に聞いた。

外部資金活用に踏み出した理由

―カタール投資庁と組んだ経緯を教えてください。

オリックスは2000年頃からプリンシパル投資を本格化させ、現在は約1兆円の資産残高があります。前期のセグメント利益は全体のおよそ15%を占めました。このように自己資金投資は高いリターンを得られる一方、バランスシートへの負担が大きく、格付けや資本効率への影響も無視できません。

そこで、より大型案件に対応しながら資本効率を高める手段として第三者資金の活用を検討しました。複数の海外投資家から提案がありましたが、カタール投資庁は当社の投資スタイルを深く理解し、投資判断の自由度を尊重する姿勢を示してくれたため、最終的にパートナーシップ締結に至りました。

―オリックスのLP出資比率は60%になっています。

特定の数字にこだわったわけではありませんが、オリックスはこれまでプリンシパル投資を主軸にしてきたので、一定のポジションは持っておきたいという考えはありました。出資比率が低すぎるとフィー(運用報酬)中心の収益構造になり、投資収益が十分に確保できなくなります。

また、我々自身がしっかり資金をコミットすることで、パートナーにも安心して任せていただけると考えています。

300億円を境に投資手法を使い分け

―共同ファンドになることで意思決定が遅くなる懸念はありませんか。

本ファンドの意思決定は独立した第三者が運営するGPが行います。

ファンドはブラインドプール型で、LPA(リミテッド・パートナーシップ契約)に基づき投資対象の範囲があらかじめ定められています。その範囲内において、オリックスがサービスプロバイダーという立場で、GPへ投資先候補を紹介します。

GPの意思決定やファンド運営を当社がサポートすることで、従来と同様の機動性や規律で投資判断を継続できると考えます。投資基準を超える案件については、QIAと協議の上、個別に精査します。

オリックスがカタール投資庁とファンド設立…その狙いは? 三宅誠一常務事業投資本部長に聞く
バランスシートへの負担を減らしつつ持ち味を生かしながら大型投資を行っていくと話す三宅常務
バランスシートへの負担を減らしつつ持ち味を生かしながら大型投資を行っていくと話す三宅常務

―今後のプリンシパル投資の方針は。

企業価値(EV)300億円未満の案件は引き続き自己資金で投資し、それ以上の大型案件はファンドで投資する併用モデルを採用します。

この仕組みによって、従来より大型の案件にも挑戦できるようになります。外部資金を活用することでリスク分散も可能になり、資本効率の改善にもつながります。

社会課題解決型ビジネスを重視

―投資対象分野について教えてください。

IT情報サービス、ヘルスケア、物流、BPO(業務プロセスの外部委託)、建設関連をはじめとする、社会課題解決に貢献できる分野を重視しています。日本では人口減少や人手不足、インフラ老朽化などの課題が顕在化しており、これらの領域は中長期的に需要が見込めると考えています。ほかにも、事業の成長余地があり、オリックスグループのリソースを活用して企業価値向上が見込める案件は積極的に検討していきたいと考えています。

―投資後の支援体制の特徴は何でしょうか。

当社の投資スタイルの最大の特徴はハンズオン支援です。投資先企業に複数名を常駐させ、デューデリジェンス(買収監査)で把握した経営課題に対して具体的なアクションプランを策定し、達成に向けて伴走します。

オリックスは全国で約1500人の営業人員がおり、グループで不動産、産業/ICT機器レンタル、銀行、生命保険など幅広い事業を展開しています。オリックスグループのネットワークとナレッジを活用して売上拡大やコスト改善、新規事業開発などのシナジー創出を図ります。

事業会社によるPMI(買収後の経営統合プロセス)とは異なり、投資先企業の独立性を維持しながら成長支援するのが特徴です。

日本市場の魅力

―日本市場の魅力をどのように見ていますか。

日本は相対的に金利が低く、法制度が整備されているため投資しやすい環境です。バリュエーション面でもまだ割安な企業が多いと見ています。

東京証券取引所の市場改革により、資本効率を意識した経営が求められるようになり、MBO(経営者による買収)や非公開化案件が増加しています。さらに、事業承継ニーズの拡大もあり、投資機会は今後も広がると考えています。

円安も海外投資家にとっては投資コストを押し下げる要因となっており、日本市場への関心は引き続き高いと感じています。

第二、第三ファンドも視野

―今後の展開について教えてください。

当社は2028年3月期にROE11%以上という目標を掲げています。

外部資金を活用した投資は、自己資本効率を高めるうえで重要な施策の一つです。今回のファンドはその達成に向けた重要な柱になると考えています。

本ファンドが軌道に乗れば、第二、第三ファンドの組成も視野に入れています。拡大する日本企業の事業再編や承継ニーズ、海外投資家からの関心を背景に、オリックスとしても投資プラットフォームを強化していきたいと考えています。

オリックスがカタール投資庁とファンド設立…その狙いは? 三宅誠一常務事業投資本部長に聞く

文:糸永正行編集委員 写真:大澤昌弘副編集長

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