「アイリックコーポレーション」M&Aで保険ショップ網を拡充 業界3位から上位をうかがう

来店型の保険ショップを運営するアイリックコーポレーション<7325>がM&Aを加速させている。

同社は2018年の上場以降、2019年から2024年までの6年間に3件のM&Aを実施(適時開示ベース)したが、2025年はすでに2件に達し、ペースが上昇している。

これら2件はいずれも保険ショップの拡充を狙いにしたもので、今後も店舗網拡充にM&Aを活用する方針を掲げており、件数はさらに増加する可能性が高い。

フィンテック企業として成長

アイリックコーポレーションは2025年6月末時点で来店型の保険ショップを283店舗展開しており、同社によると、業界3位(1位は656店舗、2位は381店舗)の位置にある。

今後、保険ショップ網の拡充のため、直営店舗の出店に力を入れる計画で、2028年6月期までに直営店を80店舗増やし363店舗とする。さらに2031年6月期には500店舗体制を構築し、上位ポジションに挑む。

この計画を実現する手段としてM&Aなどを活用することにした。

直近では2025年7月に、ブロードマインド<7343>から来店型保険ショップ「マネプロショップ」事業を取得。12月には生損保代理店事業のアセットガーディアン(東京都中央区)が首都圏で展開する保険ショップ事業を取得する。

資金については、今後3年間(2026年6月期~2028年6月期)の成長投資枠として20億~25億円を計画しているのに加え、M&Aなどの必要に応じて借り入れも実施する。

他方、同社はAI(人工知能)を利用したOCR(光学式文字読み取り装置)「スマートOCR」を自社開発しており、この技術を活用し、AIソリューション(課題解決)を提供するフィンテック(金融と技術を組み合わせたサービス)企業として成長するとの方針を掲げている。

このため、M&Aに関しては店舗拡充と並んでフィンテックやAIなどの分野でも可能性がある。今後、店舗拡充とフィンテックの両面で対象企業や事業の探索が進みそうだ。

「アイリックコーポレーション」M&Aで保険ショップ網を拡充 業界3位から上位をうかがう
アイリックコーポレーションが適時開示したM&A

大きい成長余力

生命保険市場は、ここ数年は横ばいで推移しており、2024年度は個人保険・個人年金保険を合わせて、年間の新契約数は約1900万件、保険料総額は年間約28兆円となった。

アイリックコーポレーションでは、生命保険の加入経路をみると、保険ショップのシェアは7%と低いため「成長余力は大きい」と分析する。

同社は1995年に東京都内で、保険分析システムの開発や来店型保険ショップの運営を目的に設立。

その後1999年に来店型の保険ショップのチェーン展開を始め、2008年に生命保険の検索・比較システムの提供などを行うソリューション事業に着手。

さらに2018年にはスマートOCRを開発し、販売支援システムの開発などを手がけるシステム事業を拡げた。

過去最高業績を更新

アイリックコーポレーションは、保険販売事業(売上高構成比約58%)を主力に、ソリューション事業(同約25%)、システム事業(同約17%)の三つで事業を構成している。

「アイリックコーポレーション」M&Aで保険ショップ網を拡充 業界3位から上位をうかがう
アイリックコーポレーションの売上高構成比

独自に開発した複数保険会社の保障内容をビジュアル化して分析・比較することのできるシステムを利用して、顧客の意向に沿った保険選びができるのが強み。

2025年6月期は売上高94億2400万円(前年度比19.0%増)、営業利益7億4100万円(同49.7%増)と、売り上げ、営業利益ともに過去最高を更新した。

2026年6月期は19.8%の増収、13.9%の営業増益を予想しており、2024年6月期以来3期連続の増収営業増益を見込む。

今後、M&Aによる店舗網の拡充やフィンテック企業としての成長が進めば、業界順位の上昇が現実味を帯びてくることになりそうだ。

文:M&A Online記者 松本亮一

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