
電気工事中堅のJESCOホールディングス<1434>は、技術者を有する企業のM&Aを積極化する。
受注機会の逸失を防ぎ、国内EPC(設計、調達、建設を一括して請け負う事業)を拡大するのが狙いで、今後3年間(2026年8月期~2028年8月期)に30億円を投じ、同業者2~3社を傘下に収める。
M&Aで60億円を上積み
JESCOホールディングスは、設備投資案件や災害対応、再生可能エネルギーの需要拡大などにより、新設工事や更新工事の発注は今後も増加傾向にあると分析する一方で、業界全体での技術者不足の問題は今後も続くと見る。
同社では人材の確保や教育の強化、グループ会社間の人材の流動性の向上、ベトナムを中心にASEAN(東南アジア諸国連合)地域からの高度技術者の採用などを進めている。
これに加えてM&Aを活用することにしたもので、M&Aでは⾼度技術者の確保に加えて、国内ネットワークの拡充や事業領域の拡⼤にも取り組む。
こうした施策で国内EPC事業を柱に据えた成⻑を実現し、2028年8月期にM&Aによる上積み分約60億円含めた売上高250億円(2025年8月期予想比38.8%増)を、営業利益でもM&Aによる上積み分約4億円を含めた25億円(同38.8%増)を目指す。
国内を強化し売上高比率を70%強に
JESCOホールディングスは、国内では太陽光発電設備や電気設備、防災無線通信、携帯電話基地局などの設計や建設を行っており、ASEANでは空港内電気設備、⽇系企業⼯場の電気設備を手がけている。
2022年に不動産事業を立ち上げ事業の多角化を進めており、現在の売上高構成比は国内が70%弱、ASEANが10%弱、不動産が20%強となっている。
今後は国内で、太陽光発電所やデータセンター、物流倉庫の電気設備、防災・減災、防衛関連の通信システムなどで事業を拡大し、この比率を2028年8月期には国内70%強、ASEAN5%、不動産20%ほどにする。
ネットワークや事業領域を拡大
同社は、太陽光発電設備で280件以上の施⼯実績があり、企画、設計、施⼯、メンテナンス、太陽光発電パネルのリサイクルまで、ワンストップで対応できるのが強みで、このほかにも電気設備では公共設備、⺠間設備、送電線、発電、変電の電気設備⼯事に幅広く対応でき、通信システムでも情報通信、無線、保守まで幅広く対応可能な技術⼒を持つ。
これまでの主なM&Aとしては、2017年に北関東を中心に電気、電気通信設備工事を手がける菅谷電気工事(現 JESCO SUGAYA)を子会社化したのをはじめ、2022年には電気工事、電気通信工事の阿久澤電機(現 JESCO AKUZAWA)を、2023年にはITV(工業用監視設備)や指令通話システムなどの製造、施工を手がけるマグナ通信工業(現 JESCO MAGNA)を傘下に収めている。
こうした取り組みなどを通じて構築した国内EPC事業子会社5社(JESCOエコシステム、JESCOネットワークシステム、JESCO MAGNA 、JESCO AKUZAWA、JESCO SUGAYA)で、⼈材や知⾒、技術などを共有し、連携を強化するとともに、ここに今後M&Aでグループ化する企業を加えネットワークや事業領域の拡大を進める。
大手もM&Aに前向き
電気設備工事業界では、堅調な需要と、技術者や技能者の不足が深刻化する中、事業拡大に向けM&Aに前向きな姿勢を示す企業が多い。
東京電力系の電気設備工事大手の関電工<1942>が、グリーンイノベーション(環境への負荷を減らすために社会システムを変化させる取り組み)関連のM&Aを実施する方針を打ち出しているほか、九電工<1959>や、中電工<1941>、きんでん<1944>などの電力会社系の大手もM&Aを活用する考えを示している。
M&A競争が活発化する中、JESCOホールディングスは計画通り同業者2~3をグループに取り込むことはできるだろうか。

文:M&A Online記者 松本亮一
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